教育情報ナショナルセンターが開設
  
盛りだくさんの機能 データの共有を基本に



教育情報のポータルサイトを目指す国の「教育情報ナショナルセンター」(http://www.nicer.go.jp)が8月31日に開設された。約1万件の教育用Webページへのリンク、社会、地理、歴史などの学習用コンテンツのデータベース、文教行政、高校転入学などの各種情報のデータベース検索、漢字かな変換機能などが盛り込まれている。ナショナルセンターは、今後11月と3月に大規模な更新を予定している。また、全国の学校を対象に基本データを収集するための調査も予定されている。国立教育政策研究所教育研究情報センター長の清水康敬氏にポータルサイト構築にあたっての留意点や今後の展開などについてお話を伺った。

 −−開設にあたって最も留意した点は。
 対象は子どもたち、先生・指導者、生涯学習・大人で、この3種類のユーザの方に使っていただきたい。
 先生には、情報教育に限らず自分の授業で分かる授業を実践してほしい。そのために、サイトを逐次見て分類をし、サイトのトップページではなく目的のページに直接飛べるようにした。そうして分類したページが約1万件あり、教科で検索されてもある程度の情報は得られると思う。
 リンクだけではなく、ナショナルセンターに入ったときに先生方が非常に役に立つものがある、と思ってもらわなければならない。そうした意味で使える情報をモデルとして作ってきた。1つは、日本史歴史データベース。現行の教科書をすべてデータベース化した。
 これは、漢字かな変換にも関係があり、歴史独特のフリガナがあるため、すべての教科書のフリガナをデータベース化して辞書を作成している。2002年から使用される新しい教科書についても市販されてからデータベース化する予定だ。
 また、地域の歴史についても、各地域で子どもたちが調べたことを入力してもらうシステムも作っている。入力された情報の正誤などチェックの方法について検討している段階で、まもなく公開する。
 地図学習ソフトウェアもある。白地図も地名入りの地図も表示でき、その上にお絵描きソフトを使って描ける仕組みも開発した。校務文書も収集し掲載している。
 コンテンツを利用して調べたことや校務文書などを送って欲しい。ナショナルセンターは、モデル的なものを作って、それを基本にしてみんなで共有する、ということを大きなポイントにしている。
 また、有料の教材をネットワークを通じて先生方が使える仕組みの開発について、企業等に協力してもらいコンソーシアムを作りたいと考えている。この仕組みは簡単ではないが、実現していきたい。

 −−今は歴史と地理のデータベースがありますが、もっと広げていくのでしょうか。
 分数や化学の学習コンテンツも予定している。これについては、大学入試問題のデータベースとも関連させる。
 入試との関連が分かると、良し悪しは別にして、生徒の学習の動機付けになるだろう。回答の説明まではしないが、何年のA大学の問題に出ている、ということまでが分かる。
 この他、学習者に便利なようにキーワードを登録しておくと、そのキーワードの関連するセミナー・講座のサイトをメールで通知するシステムも考えている。
 また、サーバーの管理者ではなく一般の先生が設定画面をクリックするだけで簡単に設定できるWebページのアクセス制御システムや、子どもや先生が情報発信をするときにプライバシーや個人情報が入っていると、「注意」と画面に出るようなシステム、地図上の全国の学校をクリックすると、その学校の基本情報が分かるシステムの開発も予定している。

 −−学習指導案の収集が必要だと思いますが。
 米国のERICではお金をかけて収集している。自分のLesson Planを出して、あるいは標準的なものをお互いに共有しあって、それを参考にしながら自分の授業に応用している。
 この方法はすばらしく、ナショナルセンターとしても取り組みたい。しかし、準備不足でLesson Planを出すと失敗する恐れもある。Lesson Planについてもナショナルセンターにくれば自分の使えるものがある、というだけのものを用意してから出さないと、スタートできない。その仕組みの開発が難しく、まだ、もとになるシステムをどうすればいいか思案中である。
 様々なニーズや課題を検討し、ポータルサイト機能の高度化を図っていきたい。



(2001年10月6日号より)