国際教育シンポジウム開催
  
ロス市教委らが講演



 さる8月、早稲田大学国際会議場にて国際教育シンポジウムが行われた。また21日には東京で、24日に大阪にて、それぞれワークショップが開催された。主催は早稲田大学・早稲田大学IT教育研究所。文部科学省、教育家庭新聞社等、8団体が後援。
 「ネットワーク時代の教育システムを考えるーアメリカの先進事例に学ぶー」をテーマに掲げたシンポジウムでは、ロスアンゼルス市教育委員会や文部科学省の情報教育担当者らが、教育システムの展開と課題を検討した。
 早稲田大学・白井克彦副総長、文部科学省・岸田文雄副大臣、駐日アメリカ大使館・ウィリアム・クロウウェル参事官による挨拶の後、基礎教育評議会議長・前米国教育省次官補・クリストファー・クロス氏による基調講演「米国における文教政策とその方針」では、教育改革運動や法律などの幅広い観点から、米国の教育政策について解説がなされた。
 講演によると、米国では基準が重視されるという。これは生徒に対する不公平を解決したり、教育レベルの底上げを図る上での法的責任に起因する。
 また基準の開発にあたり、米国では全米50州の知事が集結した全国教育サミットや、TIMSSという数学・理科に関する全国調査など、これまで展開された教育改革運動について概要を示した。さらにクロス氏は、教師の資格や卒業テストが生徒に及ぼす影響などについても考察を加えた。
 引き続き、文部科学省生涯学習政策局学習情報政策課・尾崎春樹課長が、日本における教育政策の現状を施策例をあげながら分かりやすく説明した。
 「教育の情報化施策の具体的内容として、ハード面・ソフト面の整備が急がれる」それぞれの進抄状況を示しつつ、現場でのサーバ管理や回線の不備など、計画を遂行するために解決すべき課題をあげた。
 組織改革におけるテクノロジーの役割を示したのは、ジェームズ・コナンツ氏。
 データ通信に必要な帯域幅の提供、ネットワークの構築とともに、テクノロジーの利用促進を目的とする教員への技術支援や教師と生徒の習熟度基準の設定などの必要性を強調した。また機材のアップグレードや交換を進めるサポート体制にも着目し、テクノロジーを利用できる環境整備についてのヒントをあげた。
 午後からのパネルディスカッションでは、坂元昂・文部科学省メディア教育開発センター所長の進行のもと、変化する社会における情報教育システムのあり方について討論が行われた。まず「コンテンツの充実が教育の改善に効果を及ぼすか」というテーマについて、日米の指導者が自身の観点から考察を加えた。
 コナンツ氏は「授業への活用とともに、フォーマットの開発や守秘義務の指導・遵守を考えていかなければならない」と新たな問題を提示。尾崎氏は「距離や時間の制約を越えた交流や情報収集の場が拡大する。教師が生徒の学習活動の助長していかなければ」と期待を示した。
 後半は、受講者からパネリストに対しての質問が相次ぎ投げかけられた。
 「教員へのコンピュータ研修の是非」についてクリストファー氏は「子どもの学習意欲を鼓舞するためにも一層重視して行うべき。また一貫性を持ったカリキュラム開発も求められる」と言及。中村一夫・国立教育政策研究所教育課程調査官は「デジタルデバイドをなくすためにも、学校全体で取り組んでいってほしい。ブラウザを多少操作できるようなら、進んで他の教員に操作方法を伝えていくような連携体制を」と見通しを掲げた。
 また、翌日のワークショップでは、ロスアンゼルス市における情報機器やネットワークの活用、カリキュラム等についての事例が紹介された。



(2001年10月6日号より)