全日本教育工学 富山大会
2日間で2000人が参加



 初日に行われた全体会(富山県教育文化会館会場)には、立ち見が出るほどの参加者が集結。開会行事では、大会会長である日本教育工学協会会長・国立教育政策研究所教育研究情報センター長・清水康敬氏より、教育の情報化によって「分かる授業」が実現されると、参加者らにエールが送られた。清水氏は「8月にイギリスのICTSchoolPolicySymposiumを訪れた際に、ICTを活用している学校の児童生徒の方が、使っていない児童生徒より成績が高いとの結果を得た」と裏付けとなる実例を挙げるとともに、イギリスでの情報化カリキュラムの整備、ICTコーディネータの配置などの支援体制に着目、日本の教育情報化に課題を投げかけた。また一方で、8月31日に開設された「教育情報ナショナルセンター」のWebサイト(http://www.nicer.go.jp)を紹介。同サイトで提供されている教育学習コンテンツが有効に活用され、「分かる授業」が実践されることに願いを表した。
 続いて文部科学省生涯学習政策局学習情報政策課・尾崎春樹課長、富山県教育次長・金井進氏から祝辞とし、教育の情報化が生涯学習をより豊かなものにすると期待を表した。

表彰式
 開会行事に続く、情報教育に関する顕彰では、2つの表彰式が行われた。
 社団法人日本教育工学振興会主催の第4回コンピュータ教育実践アイディア賞表彰式では、宮島龍興会長から「教育工学という大きな学問の中、コンピュータを教育にどう生かしていくかが、今後の課題となってくる」と同賞のねらいが言及され、続いて関口一郎常務理事・事務局長から審査経過が報告された。そのなかで「市販ソフトを利用しており、初心者にも分かりやすい明確な授業案を審査基準とした」と受賞のポイントが示された。
 一方、財団法人上月情報教育財団主催、文部科学省後援の第9回上月情報教育賞表彰式では、6団体が受賞。「工夫された実践活動が多く報告された」と今回集まった研究について上月景正理事長から感想が伝えられるとともに、この11月からはじまる来年度の公募が呼びかけられた。また清水康敬審査委員長・理事より「ツールの活用はもとより、教育情報化への態度や理解を重視した」と講評が伝えられた。

記念講演
 記念講演では、「実はあまりコンピュータを活用していないんです。電子メールを使うよりも毛筆で手紙を書くことのほうが多いですね」とIT業界で活躍しているインテック・中尾哲雄取締役社長の意外な言葉に、会場は笑いの渦。全体会で行われた特別講演での第1声には、IT革命の進展と共に失われている事象、もたらされる多くの問題が同時に課題として投げかけられていた。
 中尾氏は「情報教育への期待」をテーマに掲げ、企業側からの考察を示した。「学校の先生は社会のことを知らなくてもいいとする風潮がある。しかし、学校は社会の中にある。産業界の変化に一眼を置く必要がある。そこで産業界と教育界をつなぐ役割を果たし得るのがITである」とITの存在を位置付けた。
 また「ネット販売が多くの企業で開始され、車は4日で100台、時計は50%も売上が伸びたという。IT化は無償の継続、階層構造、時間大衆から個人への対象の変化を及ぼした。が、発想や個性が乏しくなっている現状は否めない」と影の部分も指摘した。
 全体会の最後に、次期開催地である栃木大会実行委員長・増渕茂泰宇都宮市立中央小学校校長が「教育工学への取組みを1年後の大会で公開してほしい」と歓喜の思いを表した。また富山大会実行委員長・山西潤一富山大学教育学部教授が「今大会ではネットワークを広げ、研究を自らの実践の参考としてほしい」と呼びかけた。



(2001年11月3日号より)