坂村健教授が講演
IPAテクノロジエキスポ



e−Japanの実現に向けた開発成果を集めた展示会「ITX2001第1回IPA Technology Expo」が11月14日、東京ドームホテルで開催され、フォーラムや展示会が行われた。主催は、情報処理振興事業協会。
 開会式で、村岡茂生理事長は、「当協会はe−Japan実現のカギとなるソフトウェアを主に担っている。開発成果を公開し皆様の批判を頂きたく、IPAの全事業の成果を一堂に展示した」と今回の展示会の趣旨を示した。
 展示会のテーマは「e−Japanのあけぼの」。e−インフラストラクチャー、e−クリエーター、e−ラーニング、e−メディカルなど8ゾーンで先進的なソフトウェアが公開された。
 続いて、経済産業省の太田信一郎商務情報政策局長が「様々な方々の努力でIT環境は急速に整備されつつあり、欧米に劣らないところまできた」と現在の状況を分析。その上で、「IT革命の本番はこれから。ネットワーク環境が整備されても、その上で躍動するソフトウェア・システムがないと役に立たない。ソフトウェア・コンテンツが決め手となる社会が到来している」とIPAの役割を強調した。
 その後、TRONの開発者の坂村健・東京大学大学院情報学環教授が「情報文明の日本型モデル」をテーマに基調講演。TRONはデジタルカメラやFAXなど情報家電の8割に使われているOS。特に携帯電話では100%使用され、世界でも急速に広がりつつある。
 坂村教授は、日本の問題点を「技術からマーケットまで米国依存が強すぎる」「いかにして日本型モデルを作れるかが課題」と指摘。米国の経済が通信業界の落ち込み、パソコンの販売不振などでどん底にある、と分析しながら、現在の米国の状況を見ていると、「ブロードバンドビジネスは成り立たないことが分かる」と興味深い話をした。なぜなら、ユーザがコンテンツにお金を払わないことが分かったこと、大手の業者が倒産し始めていること、米国の新聞記事も同じ論調で書かれている、ことなどを例示した。そして、「e−Japanも、米国のあとを追ってはいけない。ブロードバンドも米国は駄目になっている。米国と同じようにならないように、研究しなければいけない」と今後の研究の方向性を示唆した。



(2001年12月1日号より)