教員研修全国セミナー


情報教育のビジョン作り 黒田氏
管理に神経質にならすに 藤井氏
パソコン塾で人間関係作り 前田氏

 3月28日(水)、東京・フロラシオン青山で『情報教育対応教員研修セミナー』(主催・日本教育工学振興会、協賛・ディアイエス)が開催された。会場は、小中学校の情報教育とその設備管理を担当する教員で満員となった。
 基調講演では、黒田卓氏(富山大学助教授)が、『学校の情報化をどう進めるか』をテーマにいくつかのポイントを話した。学校にシステムを導入するための予算を獲得するために、学校の事情に通じていない地方自治体の財務担当官を説得するには、情緒的に訴えるのではなく、データを使いながら運営システム導入の費用対効果を明示しなければならない。そのためには、維持管理のしやすいシステムを選定し、消耗品や管理労働時間などに対するコスト意識を持つことが求められる。「予算を獲得するには、日常から次の一手を考えて、校内でコンセンサスを整えておくことが重要」と黒田氏は話す。
 基調講演に続いて、小中学校での情報教育に詳しい2名の教員による実践報告が発表された。元システムエンジニアである藤井由雄氏(千代田区立麹町中学校技術・家庭科教諭。平成13年度より世田谷区に移動予定)は、教員研修を行う上での留意点として、コンピュータルームの稼動率に着目している。現在のところ、学校に設置されているコンピュータルームは十分に活用されていない。その理由として、先生が児童・生徒に対して、コンピュータを大切に扱うように過剰に指導したり、規則が厳しすぎるため、児童・生徒がコンピュータルームに近寄らなくなってしまうケースがある。藤井氏は、自らのエンジニアとしての業務経験から、コンピュータの扱いに過度に気を配ることはないと話す。コンピュータシステムの最終テストでは、キーボードを乱打して、システムが停止することなく正常にエラーメッセージが出力されるかどうか確認するという。「通常ネットワークシステムは、乱暴な扱いに耐えられるように設計されているのだから、あまり神経質にならずに生徒達にコンピュータルームを利用させたい」と藤井氏は提言する。
 台東区立忍岡中学校教諭の前田光男氏は、台東区教育委員会が主催する『パソコン塾』の運営委員を務め、『塾』の計画立案から、システム管理、技能指導までに携わっている。平成12年度の講義は、土曜日午後(1講義2時間)と、夏休み2日を合せて計16回開かれた。
 選抜された塾生は、小学5年生から中学2年生の計40名。選定基準は、ある程度のコンピュータリテラシーを有し、しっかりとした学ぶ動機を持っているかを見たという。そのねらいは、『塾』で学んだことを自分の学校にフィードバックできる各校のリーダーを育てることにある。活動内容は、パソコンの基本操作、情報モラルの育成、ウェブページの作成、画像処理、国際交流などを基本としている。
 前田氏は、講義で重視したこととして、塾生間のコミュニケーションを挙げている。小学生と中学生を一緒にしてグループ分けをして、各グループの学習成果を発表させた。そのおかげで、塾生は学年や学校の枠を越えた人間関係をつくることを学んだ。特に、学校では友人関係や自己表現に消極的であった生徒が、積極的に人前で学習成果を発表することができるようになったという。来年度は、会場を2校に増やし、塾生も80名に増員されることが決まっている。


(2001年4月7日号より)