「3級検定試験」初めて実施へ
  教育情報化コーディネータ 情報化計画を設計・運用


 社団法人日本教育工学振興会内に教育情報化コーディネータ認定委員会が設けられ、「教育情報化コーディネータ3級検定試験」が6月24日、全国11会場ではじめて実施される。「教育情報化コーディネータ」は、教育の情報化を推進するために、ハードやソフトの整備、組織つくりなどについて学校や教育委員会に対してアドバイスをする役割、つまり教育の情報化の諸課題を学校、地域、国のレベルで解決・提案する役割を担う。このうち「3級」は、専門用語や専門知識が理解できるコーディネータの入門レベル。今秋に予定されている「2級」がコーディネータの標準で、「学校レベルや市町村単位での1〜3年程度の情報化計画を、実際にコーディネートして設計、助言、運用支援できるT専門家レベルUの能力を想定」(永野和男・聖心女子大学教授)している。欧米では既にメディアコーディネータなどの名称で学校現場で活躍しているが、日本でもようやく具体化への1歩を踏み出すことになる。3級の試験はコンピュータテスティングによるため、受験可能定員が設けられている。定員は985名で、5月24日現在340人の申込者があり人気が高い。募集は定員になり次第締切られるが、ここで昨年秋に行われた研修から、教育情報化コーディネータへの注目度を考察したい。


受講者の6割近くは先生

 「3級」の試験内容は、1学習環境の設計に関する知識・技能2校務の支援に関する知識・技能3コンピュータ・ネットワークに関する知識・技能、でコンピュータで20〜30の選択問題が提示される。今秋の「2級」は3級資格保有者を対象に、面接やプレゼンテーションなども加えられた実践的な試験方法で行われる予定。さらに、2級の上に、国や都道府県レベルの長期的な計画を設計・助言でき、運用上の諸問題も解決できる能力である「1級」の試験も時期は決まっていないが想定されている。

 昨年11月末から2月はじめにかけて、「教育情報化コーディネータ」の研修がWBT(WebBasedTraining)コースと自学自習コースの2コースで行われ、約800人が受講した。学習内容はいずれも10ユニットで構成され、1週間で1ユニットを学習していく。WBTコースは、受講者が各ユニットの学習開始日に研修用Webサイト(園田学園女子大学の自己学習支援システム)にアクセス。Webページ上に示された小テスト、ミニ課題、事例研究などの演習課題を各ユニット1週間のサイクルでこなしていく。WBTコースの受講者は約200人。それを20人を単位とした10クラスに分け、課題について討論できるようにサポート者も置いた。
 一方、自学自習コースは約600人。同じ課題を電子メールで一斉に送信した。
 日本教育工学振興会では、受講者から、WBTコース、自学自習コースそれぞれ180人をサンプリングし、調査を行っている。なぜ、コーディネータ研修に参加したかを聞くと、最も多かったのは「情報化の推進が新しい教育の可能性を開くと感じるから」で85%。次いで、「コンピュータやネットワークが好きだから」59%、「教員としての実力を向上させることができるから」54%と情報手段を活用した教育への高い期待が示された。
 参加者の属性については、WBTコース、自学自習コースともほとんど差がない。男女比は、WBTコースが男性140人(78%)、女性40人(22%)で、自学自習コースが男性139人(77%)、女性41(23%)。職業は、WBTコースが初等中等教育関係99人、一般企業57人、その他の教育関係25人。自学自習コースは初等中等教育関係104人、一般企業51人、その他の教育関係23人と、いずれも小中高校の先生が受講者の6割近くを占めている。また、学校の情報化に関わる仕事の経験年数は約4年〜5年となっている。
 研修については、「たいへん」「どちらかというと」を合わせて71%が「満足」と答えた。研修内容についても82%が「まあまあだった」としている。受講者800人のうち、500人が研修修了者に認定された。この研修修了者は3級検定試験を免除され、今秋の2級検定試験を受けることができる。
 試験は自己啓発としても有効に活用できそうだ。



(2001年6月2日号より)