中・高の免許で小学校担任に
免許制度を弾力化



 小学校の教科教育の深化などに対応するため、中学校・高校の理科や数学、外国語、情報などの免許を持つ教員が小学校の教科や総合的な学習の時間で担任・教授できる措置を−−「今後の教員免許制度の在り方について」文部科学大臣から諮問を受けていた中央教育審議会(会長=鳥居泰彦・慶應義塾学事顧問)は、教員免許状の弾力化などについて答申。現職教員の隣接校種免許状の取得を促進する制度の創設や、社会人の活用を一層促進するため特別免許状の有効期限を撤廃する、などを提言した。論議を重ねた教員免許制度更新制については、他の公務員制度などとの比較などから導入は難しいと判断。指導力不足教員などに対する人事管理システムの構築、免許状取り上げ事由の強化、教員研修の充実などを示した。



 免許制度の見直しは、子どもの心身の発達の早まりと自立の遅れ、社会状況の様々な変化に対応するため、幼稚園から高校までの各学校段階間の連携を一層強化するため。また、14年度から小学校で全面実施される総合的な学習の時間で国際理解や情報、環境、福祉・健康及びその他の課題の学習活動が想定され、専門性の高い教員の活用も求められている。
 一方、現職教員の他校種の免許状の保有状況を見ると、中学教員の76%が高等学校、高校教員の56%が中学校、小学校教員の63%が中学校の免許を保有している。しかし、中学教員で小学校免許状を保有している者は28%しかない。
 こうしたなか、中教審は教員免許状の弾力化の方策として、1中学校免許状などによる小学校専科担任の拡大2現職教員の隣接校種免許状を取得促進する制度の創設3特殊教育総合免許状の創設4専修免許状に記載する専攻分野の区分を明確化する、の4点を提言。
 中学校・高校の理科や数学の免許状を持つ教員は小学校の理科や算数の担任に、同じく外国語、情報の免許を持つ教員は小学校の総合的な学習の時間で教授できる方向性の検討を明示した。
 また、複数校種の免許状を併有する教員を増加させるため、教職経験による要修得単位数の軽減を図る措置などの制度を創設。さらに、現在盲・聾・養護学校別になっている特殊教育諸学校免許状の総合化の検討も早急に着手すべきと言及。教員の専門性(得意分野)を明確にするため、専修免許状に記載する大学院等での専攻分野の区分を具体的に盛り込むとした。
 一方、教員としての適格性の確保や専門性の向上の観点から審議された「教員免許更新の可能性」については、慎重を期すべき事項として導入は見送りと判断。次の課題解決方法を提案した。まず、教員の適格性を確保する方策として、1すべての都道府県・指定都市教育委員会で、指導力不足教員などに対する人事管理システムを早急に構築する2現行の免許法における規定を見直し、教員免許状の取り上げ事由を強化する3人物重視の教員採用を一層促進する。
 また、教員の専門性向上のため、1教職経験10年の教員に対する、勤務評定結果等に基づく新たな研修の構築2校内研修の充実3自主研修の充実4研修修了書や証明書などを作り、社会的評価を得られる資料とする5研修の成果などに対する評価を適切に実施する、などを提言した。
 さらに、信頼される学校づくり促進のため、学校評議員制度の設置の促進とともに、先進的な取り組みなどを参考に各都道府県などで学校評価システムを確立する、教員の研修努力などに報いるためその能力や実績などを適正に評価する新しい評価システムの導入を挙げた。
 一方、専門的知識を持つ社会人の登用のための制度として「特別免許状」がある。しかし、特別非常勤講師は12年度で1万1600件と活発だが、特別免許状は昭和63年の制度発足以来44件しかない。そこで、5年以上10年以内と規定されている特別免許状の有効期限を撤廃することなどが必要である、とした。



(2002年3月2日号より)