教科教育に動画配信 東京学芸大学附属高校



 3月14日(木)、東京学芸大学教育学部付属高等学校にて、「情報」公開研究会が開催された。テーマは、『情報化が創り出す未来の教室−教科「情報」の広がりと可能性−』。
 3年目を迎える1年生への必修授業「情報」の研究成果に、教師ならびに情報教育関係者から多くの注目が集まった。
 

ネットワーク環境

 学芸大付属高がインターネットを導入したのは平成7・8年。NTTのマルチメディア教育活用プロジェクトとの連携によるものであった。当時のネットワーク環境は、1・5Mbps専用回線、サーバ1台と、地学、美術、物理、地歴、英語の各研究室に設置された5台の端末によって構成された。その利用として、主にテレビ会議システムCu−Seemeによる実験、国際交流活動が行われた。ネットワーク管理と教育利用研究には、教育工学委員会という分掌が担当している。
 平成9年度以降、回線はデータ転送速度を改善するためOCNに変更。また、授業での利用目的の必要性から生徒全員に電子メール・アカウントを配布した。
 平成11年度から12年度の2年間、情報化の高等学校教育課程指定校となり、視聴覚室にサーバーと生徒用端末を増設した。また、11年度から教科「情報」が1年生1単位の必須科目として開始された。カリキュラムは教育工学委員会が独自に考案したものであり、コンピュータリテラシーを中心とする内容。授業では、同委員3人1組でTTを組み、そこにTAが数名加わって指導する。また、大学附属校の利点を活かして大学生・大学院生ボランティアのサポートを受けている。
 コンピュータやネットワークを活用した授業で注意しなければならない点として、同委員会は、「コンピュータやネットワークに振り回されるのではなく、各教科の目標を達成するために必要なデジタルコンテンツの整備という教科の情報化」を挙げる。
 平成13年度のネットワーク環境は、サーバー3台、生徒用端末90台、教員用端末30台。基幹1G支線100Mの校内LANは教員用と生徒用の2系統に分けて敷設。インターネット接続には、1・5MbpsのOCN専用回線を利用している。


今後の教科教育のために

 同校の教育工学委員会では現在、動画配信のためのネットワーク整備を進めている。英語の会話スキット、物理の運動、生物の生態、数学の微積分、体育の実技指導において活用可能な動画クリップ・データベースを構築し、すでにその配信準備に取り組んでいる。
 「最終的には本校から全国の学校に配信できるシステムにしたい」と委員会の意欲は高い。
 同校が利用しているシステムは、ユーザーが自由にパソコン上でビデオ教材を利用できるビデオ・オン・デマンド・システムezVOD(SoftNet社)。コンピュータやネットワーク上にビデオクリップを蓄積し、パソコン上で再生する。ライブ放送やビデオ放送のスケジュール設定が可能であり、チャンネル選択が自由自在。またビデオを見ながら、インターネットブラウザやワープロ・表計算ソフトを併用できるので、生徒は指導ビデオを見ながらパソコン上に記録を残しながら計算作業を行う。
現代文での電子メール・掲示板の利用
 現代文では、「伝え合う力を高める」ことを目的に、話す・聞く・書く・読むというリテラシーの育成にウェブページを活用している。『やさしさのアンソロジー』というテーマの下、生徒たちは、課題図書の文学作品から「やさしさ」について考え、教員に電子メールで感想文を送信する。教員はWeb上で公開し、生徒間の議論を展開する。
 また、オンラインディベートとして、ウェブ上に設置した掲示板での討論も行っている。掲示板の利点としては、「ディベートの経過が記録に残る」「人前での話の苦手な生徒でも意見が言い易い」「掲示板により議論が分類されていく」「生徒間の相互評価に効果があった」などを挙げた。
古典でのスライド作成
 いままで生徒たちが調査してきたテーマは、「和歌集の表記」「テーマ別漢詩の感慨」など。
 レポート作成の資料元として国文学研究資料館や電子資料館などを利用している。



(2002年4月6日号より)