教育家庭新聞・教育マルチメディア新聞
英国、北欧のICT教育
約100校に有料で配信
教師が開発したオンラインコース
 教育工学セミナー(日本教育工学協会、日本教育工学振興会共催)が2月3日、アルカディア市ケ谷で行なわれた。テーマは、「英国と北欧における教育の情報化の現状」。昨年10月15〜26日、日本教育工学振興会が英国、フィンランド、スウェーデンを訪問し、各国ICTに関する教育政策や、推進施策の現状などの調査をまとめたもの。海外調査団長を務めた清水康敬・国立教育政策研究所教育研究情報センター長が基調報告を行った。

 まず調査結果概要として、以下の項目が挙げられた。1学校へのコンピューター整備2英国政府が実施しているオンライン・カリキュラムの仕組み3教育用コンテンツ購入のための予算であるeラーニングクレジット4公立学校が制作した教育用コンテンツの流通5英国教育コミュニケーション技術局BECTaのICT効果測定6教育用コンテンツメタデータ付与7フィンランドのeラーニングからM(モバイル)ラーニングへの展開。
 続いて学校、大学、政府機関、企業訪問先での具体的な取り組みの紹介があった。中でも注目が集まったのは英国トーマス・テルフォード・スクールの教師が開発したオンライン・カリキュラムコース。このプログラムは、ICTや全国テストに関わる学習を盛り込んだ内容で、生徒の自己学習やインターネットを用いた自宅学習に使われている。また、有料(1校あたり平均して3000ポンド)で他校へ配信するシステムも取っており、現在英国内の約1000校に提供。プールされた資金は同校のほか地域教育のための活動などに使用される。

 政府関連の進んだプロジェクトとして話題に上ったのは、英国教育技能省が計画したImpact2。教育達成度に対するICTの影響力について、3年に渡り調査したもので、ICTをよく利用した児童の方が成績が高いなど、総括的なデータが得られたという。また、1人の教員だけではなく学校全体でICTを使わなければ、学校の生徒の成績は上がらないとの結論も出された。その他様々な事例を紹介しながら清水氏は最後に、国を挙げて情報化教育に取り組む必要性を強調した。


【2003年3月1日号】