教育家庭新聞・教育マルチメディア新聞
第19回情報教育政策セミナー
予算措置やビジョン
現場の先生と省庁担当者
会場で熱く意見交換

 第19回情報教育政策セミナーが「e−Learning時代における教育改革」をテーマに3月20日、日本教育工学振興会の主催で行われた。
 各省の担当者による教育情報化推進政策の説明後、今年は例年に増して、参加した教育センターの指導主事や各学校の先生から質問や要望が相次いだ。質問に立った参加者約10人のうち8人が教育現場の人で、現場の大変さや熱意が伝わってきた。

 セミナーではまず、坂元昂・メディア教育開発センター所長のコーディネートでl原靖・文部科学省生涯学習政策局学習情報政策課長、黒羽亮輔・総務省情報通信政策局情報通信利用促進課長、嶋田隆・経済産業省商務情報政策局情報処理振興課長、前田一浩・総務省自治財政局交付税課理事官が教育情報化の目的、予算措置、現在・今後の事業などについて説明した。
 その後、会場からの質疑応答に多くの時間を取った。千葉市の小学校の事務職員は、「市から情報担当を置けといわれ、事務職員が情報の担当をしているが、学校運営全般に関わる情報化予算は措置されているのか」と質問。
 鳥取県教育センターの担当者は、教員用パソコンが公的予算で措置されていない状況下、個人所有のパソコンを使用して家に帰る途中車上荒らしに合い、生徒の個人情報が盗まれるといった事態が起きていると指摘した上で、普通教室に2台ずつ配備のパソコンのうち1台を教員用に使用することについてその効果について「もっときちっとした(明確な)説明ができるようにできないか」と文部科学省に要望。
 また、岡山市教育委員会の担当者は、「市の予算担当者に実際に学校現場を見てもらうなど戦略的な手を使って予算獲得にいろいろ工夫している。しかし、地方交付税で措置されているというと、(それは分かっていると)後ろ向きになってしまうことがある」と説明。学習効果を高めるコンピュータ教室や普通教室へのコンピュータの配備方法など具体的な効果がなかなか見えない中、模索しているが、そうした現場の「工夫を後押ししてくれるような想いを行政から伝えて欲しい」と要望した。
 さらに、北海道室蘭市の担当者は3点を要望した。1つは、Linuxなどオープンソースで、国の制作した教育コンテンツが見られないことがあることに対する改善の要望。2つは、Webアクセスビリティについて。視覚障害者がアクセスしてもHPの作り方によって読み上げソフトがうまく読んでくれないことの改善。3つは15年度で終了する学校インターネットの良い部分の継続性について。現在全国的なWANの中で簡単に他地域の子どもとTV会議ができるが、終了するとそれが難しくなるのが地域イントラネット構築の担当者としての悩みであると言及。そうした双方向性を実現できる教育ネットの設計指針を地域イントラネット構築の中に盛りこんでもらいたい、と文部科学省、総務省に要望した。

 さらに、e−Learningのビジョンや予算措置について、教育用コンテンツの開発・活用・普及の施策について、教育情報ナショナルセンター上の素材を利用した発信とそれに対する著作権について、などの質問が寄せられた。
 これに対し、桑原課長「校務に対するコンピュータの配備は次の課題である」、黒羽課長「Webアクセスビリティについて今検討している。HPの点検システムを全市町村に配布する予定である」「地域イントラネット構築の指針についても早速検討する」、嶋田課長「WBTは今後、語学や知識習得に関するものについて世界的に爆発する」などと応答。現場とそれを管轄する省庁の担当者間でリアルタイムの意見交換がなされた。


【2003年4月5日号】