教育家庭新聞・教育マルチメディア新聞
全国の市区教育委員会に聞く
公立高校の情報教育は今!?
ウィルス対策ソフト毎年更新は5割
情報化の校内組織「ない」学校2割
ほぼすべての教員がPCを利用6割

 普通教室へのPC設置数は14%、校務で職員室内LANを活用している高校は73%に及ぶが、ウィルス対策ソフトを毎年更新している学校はほぼ半数の52%、情報化の校内組織が「ない」学校も22%−−活用が進みつつある中、予算面、組織面、人材面の課題がまだ残されていることが、本紙の公立の普通科高校を対象にした調査で浮き彫りになった。



 本紙では高校における情報教育への取り組みや校内の推進体制、ハード・ソフトの所有状況などを把握するため、今年3月から5月にかけて高校の情報環境に関する調査を行った。調査は、全国の市に所在する公立の普通科高校(総合学科高校を若干含む)を各県6校程度計300校をランダム抽出しアンケート用紙を3月に郵送。43都道府県87校から有効回答を得た。

■PC教室は 「1教室」が67%
〈コンピュータ教室数〉
 コンピュータ教室数は「1教室」が最も多く58校(66.6%)。以下「2教室」14校(16.1%)、「3教室」9校(3.4%)と続く。コンピュータ教室がまだない学校も1校ある。
 コンピュータの所有台数は、1校平均67台。最も少なかった学校の台数は11台、最高は156台。また20台以下の学校が4校、100台以上の学校が14校と学校間格差が大きい。

■普通教室へのPC設置校は14%
 一方、普通教室にコンピュータが設置されている学校は、12校(13.8%)。未設置校が71校(81.7%)。設置されている12校のうち、11校ですべての普通教室にコンピュータが設置されている。

■PC教室の利用状況  「週10時間以上」46%
〈コンピュータ教室の利用状況〉
 コンピュータ教室はどの程度利用されているのだろうか。今年3月末の状況で「ほとんど利用されていない」10校(11.5%)で約1割。「週に10時間以上」利用しているが40校(46.0%)と約5割。一方、「週に3〜5時間程度」22校(25.3%)と1日1時間程度利用しか利用していない学校も2割超あった。
 この割合は、普通教科「情報」の未実施校も含むため低いが、情報科がすべての高校で実施されるようになれば群と高くなる。
〈普通教科「情報」の開始年度〉
 「15年度」から開始する高校が63校(72.4%)。すべての高校で15年度から実施にはいたっていない状況で、「16年度」開始が13校(14.9%)、「17年度」開始も7校(8.0%)と1割弱ある。

■ソフト・ハードの購入
「学校予算の中」が59%
〈ソフト・ハードの購入方法〉
 コンピュータの新規導入・更新時以外の通常年度の予算措置について聞いた。「学校予算の中で購入」が51校(58.6%)と6割弱。学校予算に加え、ソフト・ハードの購入費が「都道府県から予算措置されている」は32校(36.8%)で4割弱。予算額は数十万円程度という学校が多かった。

■導入されている主なソフト
 現在導入されている主なソフト(複数回答)は、「ワープロ・表計算ソフト」72件、「プレゼンテーションソフト」66件、「画面転送ソフト」50件、「画像処理ソフト」48件、「データベースソフト」45何、「システム復旧ソフト」34件と続いた。

■ウイルス対策、毎年更新は5割超
〈ウイルス対策ソフトの更新〉
 インターネットの導入にともない必須となるウイルス対策ソフトの更新は毎年行われているのだろうか。「毎年更新」は45校(52%)と5割超。「更新予算が措置されていない」は29校(33.3%)と3割超に及んだ。

■校務での活用、7割でLANを活用
〈校務での活用状況〉
 職員室でのコンピュータ活用の状況について尋ねた。
 まず、「職員室にサーバがあり、プリンタやファイルの共有をしている」−−LANの活用の初期段階にある学校は41校(41.7%)と4割超。「職員室のサーバに、校務分掌別や教科別の共有フォルダを設け、情報の共有・蓄積を進めている」−−LANを活発に活用しているあるいはしつつある学校は27校(31.0%)。「職員室のLANはまだ構築されていない」は9校(10.3%)と約1割あった。

■情報化の校内組織  「ない」が2割
 一方、教員の活用頻度はどうなっているのだろうか。
 「ほぼすべての教員がコンピュータを活用している」は53校(61.0%)で6割超。「半数程度の教員がコンピュータを活用している」は29校(33.3%)という結果だった。
 また、情報教育推進委員会といった情報化推進のための校内組織の有無を聞いたところ、「ある」68校(78%)、「ない」19校(22%)で2割超の高校にはまだ情報化推進のための校内組織が作られていない。
〈E−learningの導入〉
 「導入を検討している」は9校(10.3%)と約1割あった。内容は生徒の学習用が中心。

■人材、管理面での悩みが大きい
〈PCの運用などで困っていること〉
 「保守に困っている」、「先生のスキル差があまりにも大きい」、「ネットワーク、セキュリティに関する専門知識をもつ教員がいない」が最も多くほぼ50件程度で人材、管理面での悩みが深いことが分かる。以下、ハードの台数が少ないといった設備面が続く。



 私立高校にも、同様のアンケート調査を4月末に行った。都内の私立高校を中心に約100校にアンケート用紙を郵送。26校から有効回答を得た。
 母数が少なくまた東京中心であるため、公立高校と単純比較はできないが、私立ではPC教室数「2教室」が10校(38.5%)と公立高校に比べて多い。
 また、コンピュータ教室が「週に10時間以上利用されている」は17校(65.4%)で公立(46%)よりよく利用されているようだ。
 一方、普通教室にもコンピュータを設置しているのは2校(7.7%)で公立高校(14%)に比べ少なくなっている。
 大きな差が出たのは、ウイルス対策ソフトの更新予算措置で、私立では「毎年更新されるようになっている」21校(80.8%)で、公立の52%を大きく上回った。
 また、E−learningの導入については、「導入を検討」が4校(17%)、「導入の予定なし」10校(38.5%)、「まだ、全く視野にない」8校(30.8%)だった。公立では、「導入を検討」9校(10.3%)、「導入の予定なし」34校(39.1%)、「まだ、全く視野にない」38校(43.7%)という結果だった。
 職員室内LANを活用した校務でのコンピュータの活用状況、教員の活用頻度は公立高校とほぼ同程度。
 一方、情報化のための校内組織が「ある」は17校(65.4%)で、公立よりも低かった。








【2003年6月7日号】