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フィンランドの教育を視察
クオパ ヌンミ小中学校
国語理解は全ての基礎

 

技術科の授業
3年生の技術科の授業

 住宅街にあるビヒティ市の大規模校、クオパ ヌンミ小中学校を訪問した。2004年に3校を統合してできた新しい学校で、玄関入り口のエントランスホールに中型の情報掲示モニターが置かれ、その日の伝達事項が映されている。

  児童・生徒数550人、障害児学級、託児所もある。教員数は40人、障害児や学習が遅れ気味の子のケアをする助手40人、この他給食関係職員10名、清掃員10名、守衛2人、常駐のカウンセラー、保健、及び非常勤の心理療法士などがいる。市の給食の中央センター校で、1日2800食を作り、各学校へ配食している。

▼ 授業
  体育館が大小3つある。球技のできる体育館、レスリング場、ダンス場と呼ばれ3つとも民間に貸し出し、予約が年中埋まっている。学校長も2時間、授業を持っている。

  6年生国語(ハリーポッターを自分で読む)、数学、障害児学級、体育、コンピュータの選択授業、職員室などを副校長の案内で見学した。

印象に残ったのは、技術の教室が木材加工、金属加工、塗装と3区画あり、3年生から男女とも木工・金属・裁縫を習い、5年生になると1つを選択するが、女子も金属の溶接を習うことだ。

日本では、金槌で釘が打てない、ノコギリが使えない子どもが増え、小中学校における図工・技術教育の時間も学習指導要領から削減されているのと対照的だ。3年生の男女約10名が先生から金属切断機や金属材料、道具の説明を聞きながら、盛んに「これは何」など使い方について質問をしていた。

  IT環境
  コンピュータは各フロアーのオープンスペース、コンピュータ教室などに合計160台ある。中学校でプログラミングやWeb・コンテンツ作成を学ぶコンピュータの選択科目が設定されているが、小学校では特別な時間は設けられていない。国語や家庭科などの授業で、必要に応じて使われている。有害情報の閲覧等を避けるため、休み時間の使用は自由ではなく許可制で教員が監督下で使用する。

  視察中、複数の教員が強調したのが「手で書くことを大切にする」ということで、IT先進国だが限定使用させている。
  電子メールアカウントは学校が生徒に与えることはないが、全員がメールアカウントを持っているという。

  職員室

職員室
ゆったりした職員室
レバニエミ教諭
レバニエミ教諭

  教室や廊下の窓ガラスはいずれも大型である。このガラスは、フィンランドの基準でどの建物のガラスも3重にすることが規定され断熱に優れている。

  職員室への通路に、放送室、カウンセラー、進路指導員、心理療法士、保健の部屋があり、カウンセラーと保健の職員は常駐している。
  職員室には教員がくつろぐためのソファー、PCワークスペースなどがあるが、教員の決まった机はない。生徒は許可なく職員室に入って来れない。

▼ 国語
  校舎の見学後、中学3年生と懇談(左記参照)、その後、同クラス担任で国語科教員のピロ・レバニエミさんに話を聞いた。

  以前は小学校で担任、副校長をし、この学校に転任した。趣味は自治体の政治学で自由時間はその研究にほとんど費やす、ヘルシンキ大学院に通い国語のメソッド開発に生きがいを感じているという積極的な女性である。

  レバニエミさんは、「社会が急速に変わっていく中で教員の教え方もそれについていく必要がある。例えば、インターネットが国語の学力にどう影響するかまだ分からないが、インターネットに張り付いている子どもたちに、『とにかく本を読もう』ということも大きなチャレンジである。

  国語はすべての母。言葉を正確に理解できなければどんなメディアを使っても正確なアクションは取れない」と語る。

  科目を教える中学校教員は1週間最低18時間授業を持たなければならないという規則があり、レバニエミさんは20時間教えている。この他にクラス担任、図書室を管理する仕事、外国人でフィンランド語が分からない生徒2人に2時間ずつ教えている。受け持っている時間は決して少なくない。

  宿題
  毎回の授業後、他の教科の先生が出す量とのバランスを考えて宿題を出す。内容は2〜3ページを読んで来るといった簡単なものから、小論文など言葉で説明して「自分の手で書く」といった宿題など。

  ただ、中学生になるとやってこない生徒も多い、とか。
  保護者は、教員からコードをもらうことで、自分の子どもの学習状況をインターネット上で把握できる。

いじめ
  いじめはフィンランドでも日常的に起こっていて、今インターネット上で一人の生徒を攻撃することが今問題になっている。「いかにすぐ対処するか」が大切で、生徒の中から調停員を出して解決に成功した。

  また、さぼりぐせのある生徒はいるが、引きこもりや登校拒否といった子どもはいない。引きこもりをテーマにした日本のテレビ番組が放映され、生徒や他の教員と話し合ったが全く理解できなかったという。

【2007年2月3日号】


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