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フィンランドの教育を視察レポート
IT活用はOHP、教材提示装置が中心
特殊ニーズ持つ子供 個々に指導案作りケア
googleで歴史上の人物を示す
Googleで検索し、歴史上の人物を示す(中学校)
授業の様子
 

  8月20日から26日までの1週間、公私立の教員及び学校長等管理職17名が参加して、教育家庭新聞社企画、ベストワールド社主催により、第2回北欧フィンランド・デンマーク視察を行った。訪問した学校は、ヘルシンキ市からバスで約1時間30分、ラハティ市にある小中高等学校。ラハティ市にはスキーのジャンプ台があり、日本の選手も毎年遠征しそのジャンプ台で記録に挑戦している。

  最初の訪問校、ランシハルユ小学校は1932年に開校した伝統校。児童数470名、20クラス、1クラスの児童数約25人。ラウノクルキ校長が我々一行を出迎え、音楽室で6年生が歓迎の曲を笛で演奏してくれる。

  20年以上ランシハルユ小学校で校長を務めているラウノクルキ氏は63歳。退職年齢は68歳で、日本のように何歳で一斉退職といったことがないようで、退職したくなったら自分で退職願いを出すとのこと。

  同氏が最も誇りにしているのが、校舎2階にあるマルチメディア教室だ。WindowsXPが15台あり、子どもたちがマイクつきのヘッドセットを耳に当て、英語のリスニングとスピーキングの練習をしている。教室である程度学習した後、英語や第2外国語であるフランス語をマルチメディア教室に来て、繰り返し練習する。

  普通教室には、教卓にOHP、黒板中央にスクリーンがあり、教室後方に児童用のパソコンが置かれている。1階にファイルサーバがあり、教室のパソコン、マルチメディア教室、別棟にあるメディアセンターを含め79台のパソコンが接続されていて、この情報環境は「全国的に見て、いい環境にある」という。

  1、2年生の教室は、「スモールスクール」と呼ばれる別棟にあり、1年生のクラスで教師が、教科書の鳥の絵をコピーしOHPで映し出して説明していた。

  前述の教室後方にある児童用パソコンは、国語、科学、英語などの教科の授業で、子どもたちが調べ作ったレポートや作品を、学年・クラスごとのフォルダに保存してデジタルポートフォリオとするのに活用されている。

ラハティ市教育委員会

  ラハティ市は人口10万人弱、市内に企業は多いが、失業率はフィンランドの平均より少し高く9%程度になる。

  ラハティ市教育委員会の最大の課題は、「教育予算が限られる中、要請が高まっている特殊ニーズ教育について、特殊ニーズを持つ子供たちをアシストする教員の採用」という。これは、国家教育委員会の課題と共通しており、フィンランドでは障害など特殊ニーズのある子どもたちに対して、一人ひとりにあったカリキュラムを作りケアしている。

ドイツ語の少人数授業
ドイツ語の少人数授業(中学校)

  教員研修は、国、自治体により行われ、特殊ニーズへの対応、指導要領や教育の変革への対応が現在中心テーマになっている。
  ラハティ市内には高等学校が6校あり、中学校の成績が7以上(評価は4〜10まで。最高が10)であれば、高校への入学資格が与えられる。

サルパウセラン高等学校

  フィンランドの高校471校のうち、12校が国から体育の特別校の指定を受け、スポーツ育成資金を得ている。設立50周年を迎えるサルパウセラン高校はそのうちの1校で、普通科コースとスポーツコースがある。スポーツコースは人気が高く、中学校の成績で8程度の生徒が入学する。スキージャンプやゴルフ、サッカー、テニスなどの種目で活躍している卒業生も多い。

  生徒数395名のうち、95名がスポーツコースに在籍、ロシア、フランス、スウェーデンの姉妹校との国際交流も行われている。国際プロジェクトに参加するため外国に行くこともある。

  生徒は自分で、必修科目以外の学習科目を選択し、学習プランを作る。そのため、学校には必ず進路指導担当の教員がおり、生徒の学修をサポートする。大学への体験入学も行われ、年1回ヘルシンキで多くの大学が参加する進路指導メッセも開かれている。

  日本のように体育祭や文化祭、修学旅行はないが、卒業記念の日(アビの日)やその日の夕方にあるダンスパーティは盛大に行われる。
  スポーツコースは卒業に必要な75単位のうち、体育に関わる12単位を修得。英語は小学校3年から一貫して教えられ、高校では8単位英語を修得しなければならない。「小さなフィンランドがやっていくためには、外国語の修得は必須、という認識がある」という。

サルパウセラン中学校

  サルパウセラン中学校は、高校と同一校舎内にある。生徒数約350名、このうち半数が特別スポーツクラス、半数は普通クラスである。特別スポーツクラスに入るには、入学試験がある。中学校で入学試験があるのは、非常に珍しい。教員は34名、このうち10名は高校教員を兼ねている。

  職員室はくつろいだ形の作りで中央にソファーがあり、数台のコンピュータがあるワークスペースもある。記者の隣に座った若い数学の教師の週当たりの担当授業時間は21時間。大学では6年間学んだとのこと。

  さて歴史の授業、教卓のパソコン画面をスクリーンに投影、Googleで検索しながら、順次マリーアントワネットなど歴史上の人物を投影し、教師が説明していく。生徒はその説明を聞きながら、ノートの要点を筆記していく。

  少人数で行われていたドイツ語の授業も、OHPで本文を投影しながら、文を読み解説していく。宗教も同様で、いずれも一斉授業形式だ。

  ランシハルユ小学校と同様、保護者は自宅等からインターネットで、パスワードを入力して子どもの学習状況(成績など)を見ることができるようになっている。

【2007年9月29日号】


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