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特集・校内ネットワーク
群馬県・浦安市・米沢市
 職員室のサーバやインターネットの資源を校内のどの教室からも利用できる校内ネットワーク。現在学校の校内LAN構築率は4割弱と少ないが、校内外の資源を上手に学習に利用するために必須の環境だ。New Education EXPOで発表された3つのタイプの異なる活用方法−群馬県総合教育センターの校内LAN用マルチメディア資料集「G−TaK」、千葉県浦安市の学校教育支援システム、山形県米沢市立第三中学校の手作りネットワークを報告する。


良質コンテンツ導入で一気にLAN化
群馬県
 「G−TaKのおかげで、校内LANを一気に導入するという市町村が増えています。先月も沼田市が地域イントラの環境下で、市内小中学校に校内LANを入れました。良く使われているのは、クリップボードに簡単にコピーでき、動画も静止画も先生方のワークシートに貼り付けれる機能です」と語るのは群馬県総合教育センターの齊藤俊明さん。

 便利でいいコンテンツがあるので、「教室までLANを」、「大型提示装置も導入しよう」という気が高まるようだ。

 G−TaKは約3万8000のデジタルコンテンツ(動画、静止画)やリンク集を集めたマルチメディア資料集で、必ずしもコンピュータが得意ではない先生方に対し、手軽に使えるものを−とセンターの職員が知恵を出し合い考案したもの。容量は小学校版で約44GB(ギガバイト)、中学校版で40GBの容量で日々増え続けている。コンテンツは教師が使いやすいように学年別、教科別、領域別のフォルダに収められ、簡単な操作で授業で提示できるようになっている。6月末現在、県内国公立全535校中271校に導入されているという普及ぶりだ。

 G−TaKは教材コンテンツ集だが、その特徴はインターネットを介さず、校内ネットワーク内での使い勝手に的を絞った点にありそうだ。第一は、サーバの種類に依存しない、安価なネットワークハードディスクを校内LANのハブの空いているポートにケーブルで接続するだけで、LANに接続している全てのコンピュータでG−TaKが使えるようになる。

 第2は群馬県総合教育センターの指導主事がG−TaK導入校に対し、電話などで県教育情報グループに導入の申し込みがあるとインストール作業日を決めてネットワークハードディスクにG−TaKをインストール。その後、ネットワークハードディスクを持って学校に行き各クライアント機でG−TaKが使えるように設定をし校内研修の要望にも対応していること。各端末にはいずれもフリーソフトの画像提示ソフトVixと検索ソフトFilfinderがインストールされる。

 第3は各フォルダ−に学校独自のコンテンツを入れて、学校独自のG−Talkを作ることができること。

 第4はG−TaKのコンテンツは1指導主事、2研修員、3講座参加者、4G−TaK協力校の協力員、5生涯学習機関等の提供、6現場の教員、により作られ年々増加していること。

 校内LANがまだない学校でも、職員室LANに接続して、教師のコンピュータにコピーして教室でプロジェクターで投影して使ったりしている。Web上にもかなりのコンテンツが上げられ、活用実践事例集も3冊発行され、PDFで見ることができる。

http://www2.g-tak.gsn.ed.jp/



注意単語は管理者へ転送
 情報モラル指導も
浦安市
 「面倒だよ」「どうやって使うの?」「もし壊れたら…」−−そんなIT利活用の教員の不安を取り除くため、浦安市教育委員会が念頭に置いていることは「どこでも」、「手軽に」、「使いたいものを自由に使える」環境の整備だ。

 同市が市内の小中学校全22校と市のセンターサーバーを100Mbpsで接続する「浦安市学校教育支援システム」を構築したのは平成15年で、調べ学習や教科教育、学校間交流などに利用している。

 以前は郷土博物館や約1500タイトルの視聴覚ライブラリーの映像資料は、ビデオを借りて利用するという手間がかかったが、同システムにより教室からも簡単に瞬時に取り出せるようになった。また、最大5校まで同時に接続できるテレビ会議も市内全校合わせ月に20時間程度まで行うことができるようになっている。

 さらに、メールの送受信や掲示板の書き込みができるID、パスワードを教員と児童・生徒全員に配布し情報活用能力を育成している。「これからの時代、ID、パスワードは誰もが管理できないといけないと考えています。不適当な書き込みがあると、m−フィルターが立ち上がって、注意・警告をしてくれるようになっています。そうした書き込みなどがあると各学校でその都度モラルについての学習を展開していますし、ID・パスワードにより個人が特定できるので、特に問題はこれまで起こっていません」と江黒友美指導主事。

 m−フィルターはメールなどに注意単語が含まれていると、管理者である教員に自動転送され教員が許可しなければ送信されない仕組みだ。言葉に点数がついていて、点数により本人に返すといった設定など学校の環境に応じた設定もできる。有害情報を遮断するi−フィルターとセットになったコミュニケーションサーバを導入している。

 同市は庁内系のLANと学校教育用LANを分離している。つまり校内には、職員室で個人情報を管理する有線LAN(庁内LAN)と、普通教室、特別教室、職員室など校内全域をカバーする無線LAN(学校教育用LAN)の2系統のLANが敷かれている。

 コンピュータ教室には40台のパソコン、普通教室にはノートパソコンとデスクトップパソコンが各教室1台ずつ完備され、今秋には特別教室などに各校6台のデスクトップパソコンが設置されミレニアムプロジェクトの整備が達成される予定だ。また、昨年度に中学校全校に電子情報ボードとプロジェクタが3台ずつ配備され、今夏には小学校全校にそれぞれ3台ずつ整備される。

 文部科学省の教材コンテンツ配信事業にも全校が参加、各教科用のコンテンツを1校あたり年間30万円の予算で自由に選択し、ネットワークを介して教科などの教育に利用している。

予算・スキル不定 アイデアでカバー
米沢市
 「3か月かけて校内LANを先生方と完成させた。キーワードは“貧乏”です」と話すのは、山形県米沢第三中学校の金俊次先生。コンピュータ教室40台のCPUはPentium200、OSはWindows98だという。

 米沢市は校務用グループウェアCuteStaffを市内小中学校全26校に導入、教頭を対象にした研修が行われた。しかし、「絶対使わない、嫌だ」というIT嫌いの教頭先生が一人いて、現在もその先生は使っていない。

 米沢第三中学校は、無料のグループウェアソフト「こあっと」を活用、どの職員室にも置いてある行事や日々の打ち合わせ事項の連絡板を、PCに代替し、放課後ミニ講習会を教員対象に開き、活用を進めた。

 また、同校では新学習指導要領の実施にあたり教科ごと通知表に評価基準の評価表をつけることになった。しかし、その実行には膨大な手間がかかり、その労力を「ファイルサーバの活用」で削減することを進めた。

 その際、ファイルサーバの共有フォルダを、校務分掌と同じ配置にし一目で分かるようにした。また、必要なファイルが「サーバの○○フォルダの中の○○の6月のフォルダにある」と言われても初心者はすぐには理解できないところがあるので、一番上のディレクトリに「ちょうだい」フォルダを用意し、そこで欲しいファイルの交換ができるようにした。

 「校務分掌の立場で作ったファイルは必ずフォルダに入れる」「他の人が作ったファイルを活用する時は、けっして原本ファイルに上書きしない」といったことを約束事とした。

 授業の中でもネットワークやプロジェクタを使って資料投影した授業を進めている。「情報化が目的ではなく、生徒が元気の出るきっかけとして使ってもらいたい」と金俊次先生は話す。



【2005年7月9日号】


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