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スクールニューディールとICT予算

─事業費総額 5億4千万─
整備目標を補正予算で達成

鈴木さよ子氏
豊島区教委学校運営課長
鈴木さよ子氏

 「国の整備目標が非常に明確であったため自治体としても目標を立てやすく、内部的にも、議会に対しても説明がしやすかった。現在豊島区では達成目標は1つも達成できていない。これを機に一気に整備をすることは豊島区の情報教育環境に必ずやプラスになると信じて進めた」と話す。

 「今年度限りの補助金である」点も説得材料とし、「今回申請しなければ、すべて一般財源になる。来年度以降には伸ばせない」という危機感を財政当局と共有した。

 「スケジュールが非常にタイト」である点については、「迷っている暇はなかった。教育委員会の方針は、教育長と10分程度で概要を決定。財政当局との話も教育長、教育総務部長、政策経営部長と同時に行った」

 短時間に様々な人に理解してもらうためには、「複雑な話はできるだけ表に出さない配慮が必要」と言う。説明にはすべて文部科学省の資料の数値を使い、「国の目標を達成するために不足する機器の整備をする」点を一貫して主張。区議会の一般質問で出た今回の補助金事業に関する質問に対して教育長は「日本の公立学校の情報環境を明確な目標を持って底上げするものであり、自治体の厳しい財政状況の中で、学校のICT環境整備を強く後押しする非常に意義のあるものと高く評価している」と答弁した。

説得が難しかったのは
電子黒板の整備理由


 一方で難しかったのが、電子黒板の整備だ。「国は力を入れているようだが、電子黒板は本当に必要なのか」という大方の反応に対しては、 「文部科学省の資料を読み込み、いかに授業改善に結びつくかを説明した。実物を用意できていたらもっと簡単に納得していただけたのでは。豊島区の教育長は校長の経験から電子黒板を推奨していることが幸いした。金額が大きいこともあり、トップの理解が得られなければ進めにくい」と述べる。

 豊島区では、全小中学校計31校のうち、電子黒板は原則1校1台、モデル校として小学校6校、中学校1校に複数台の整備をする。モデル校は、小規模小学校5校、そのほかの小学校1校、中学校1校の計7校。

 モデル校への配置は、普通教室に各1台、理科室など特別教室に1校あたり3台、その他特別支援教室に1台。モデル校での検証、その後順次、全校のデジタルテレビに電子黒板機能をつけていきたい考えだ。

説明会翌日に意思決定
概算算出で2案を用意


 補正予算について関東甲信越地区説明会が開催されたのは5月13日。その翌日、豊島区教育委員会の基本的な方針を教育長の意向として決定、積算作業に入った。週明けの5月18日に政策経営部と打ち合わせ、概算を算出。業者の見積もりが間に合わなかったため、政策経営部には、2案を提示した。第1案は電子黒板を整備、PCなどの積算単価も余裕を持たせ、総額7億2千百万円。第2案は文部科学省の単価を使い、電子黒板は未整備とした最小の3億8千5百万円。

 国の目標を達成すること、電子黒板のモデル校導入の了承を得、2日ほどかけて詳細な金額を積み上げ、事業費総額は5億4千4百万円と確定。1校あたり平均1755万円となった。

 第2回定例会において補正予算は無事成立。財源内訳は、事業費総額のうち2分の1が学校ICT補助金2億7200万円、補助裏の地域活性化交付金の全割当分6200万円。残る2億1000万円が一般財源。補助裏について政策経営部は「ICT整備にすべてを使う」と一貫して庁内の他の課を説得した。

教育用PC568台
校務用PC721台


 豊島区では今後、全体を3グループに分けて、契約を進めていく。「電子黒板・デジタルテレビ・周辺機器である実物投影機」を整備する第1グループは、今年の12月を納期として進める。電子黒板は合計112台、デジタルテレビは全普通教室各1台のほか特別教室等に各校3台で、合計348台。実物投影機は各学年1台、合計162台。なお機器については、補助金の仕組みから今回はすべて購入。「教育用PCと校務用PC」を整備する第2グループは、小学校各16台、中学校各25台、合計568台。校務用PCは全小中学校分721台を予定。校内LAN整備を行う第3グループは、現在豊島区の31校中、未整備校が13校。予算執行の繰り越しが可能なので、期限は平成22年8月。主に来年の夏休みに工事を行う。

保守契約の予算化は
来年度 一般財源で


 今後解決すべき課題のについては3つあげた。

 1つは、保守経費の予算化だ。補助金では保守経費は認められず、来年度以降は一般財源で予算化していかなければならない。「購入すれば保守は当然発生するが、まだ確約を得ていない」という。

 2つ目は、普通教室への電子黒板機能整備の方針と財源確保。3つ目は、ICT活用のためのICT支援員の活用。今後はICT活用に向けて、「学校ICT環境整備検討部会」を立ち上げ、機器やソフトウェアの選定など活用方針について検討していく。

関連情報リンク
→平成21年度補正予算 スクール・ニューディール構想(ICT編)(0900716)
→スクールニューディール構想(ICT編) 教育委員会の「誤解」「誤認」も明らかに(090703)
→【特集】「教育の情報化の手引」で実現する学校環境(090608)

【2009年09月05日号】

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