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全普通教室にデジタルテレビ 約半数の学校が整備済み =JAPET調査中間報告

スクール・ニューディール政策以降の学校環境を調査

 平成22年度に実施された大型補正予算「スクールニューディール政策」により、学校の教育環境はどう変わったのか。社団法人日本教育工学振興会(以下、JAPET)は、全国の公立小中学校と市町村教育委員会を対象に、スクールニューディール政策以降の学校におけるコンピュータ等ICT機器の整備・活用状況を把握するため、第8回教育用コンピュータ等に関するアンケート調査を8月から10月にかけて実施。1月25日の中間報告によると、スクールニューディール政策以降、デジタル教科書・教材やデジタルテレビ、電子黒板等提示機器などICTの授業活用を積極的に考えている管理職が増えている。授業での活用率も増え、PC室整備や校務用途とされる教員用PCの整備率が進んでいる。また、普通教室に整備されたデジタルテレビを授業で活用するには、周辺機器やデジタル教科書・教材の整備、ICT支援員の整備などを望んでおり、教育の情報化については今後、普通教室の情報化が必要であると考えている教育委員会が全体で5割を超えている。

■デジタルテレビやPC室更新が進む

電子黒板
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 JAPETでは同調査を政令指定都市とそれ以外の小中規模市町村のサンプリングを対象に平成8年より隔年で実施している。今回の調査では、東日本大震災による被災地区を除く全国の市町村学校と教育委員会を対象とした。最終的に得られた回答数は2998公立小中学校、183市区町村教育委員会で、回答率は約11%。調査項目は、ハードウェア、デジタル教材や校務支援などのソフトウェア、校内LANの整備状況と活用状況、管理職の意識、サポート体制の整備、自治体予算など。

  平成22年秋からの地デジ移行とそれに伴う文部科学省の指針の影響により、教室の地上デジタル放送対応についての整備が進んだ。

  最も整備率が高いのが50インチ以上の可搬型デジタルテレビで、政令指定都市73・7%と市町村41%強が整備している。固定型や50インチ未満のデジタルテレビ整備と合わせると、全体では76%の自治体がデジタルテレビを整備した。また、全普通教室以上に整備されている比率も48・1%にまで増えた。

  これらデジタルテレビの活用のためには、実物投影機やコンピュータ(教育用)、後付け電子黒板の整備が必要だと考えている教育委員会が多い。なお政令指定都市の教育委員会の約9割が実物投影機は有効であると考えている。

  また、学校を対象にしたアンケートによると、約7割の学校が50インチ以上のデジタルテレビを普通教室や特別教室に整備しており、全普通教室に整備している学校は27・6%にまで増加している。50インチ未満のデジタルテレビとあわせると、45・6%。2校に1校の学校には全普通教室にデジタルテレビが導入されていることになる。電子黒板については、1台以上整備している学校が74%と増加している。

拡がるICTの授業活用 管理職に必要性認識進む

 PC室における1人1台整備は前回調査の61・6%から73・6%と大幅増となった。整備済のPCのうち20・4%が平成22年度更新のもので、同年実施されたスクールニューディール効果の影響が大きいことがわかる。しかし平成15年以前のPCを使っている学校が27・6%と、いまだに8年以上前のPCを使用している学校もあり、PC室更新の予算を確保しきれていない自治体があるということがわかる。

  普通教室へのPC整備(児童用・教師用各1台)は、全教室に整備済または整備途中の学校が37・3%と前回調査結果と比較しても大きな進は見られず、スクールニューディール効果がそれほど見られなかった項目と言える。

  文部科学省が普通教室に2台PC配備を基準とした理由は、1台は、デジタルテレビやプロジェクターなどと接続するための教師用、もう1台は、児童生徒が自由に使うためのPCであり、教師用PCと児童用PCはセキュリティ上別にすべきであるということからなのだが、普通教室へのPC2台整備の意義が浸透していないことも理由の1つとしてありそうだ。

■教材・周辺機器予算 100万以上は10%

  実物投影機(書画カメラ)やデジタルカメラ、プリンターなどの周辺機器における学校予算について、68・7%の学校が、何らかの形で予算があると回答しており、100万円以上の予算額がある学校は、10・2%。しかし41・4%の学校が10万円未満だ。また、学校予算はないものの教育委員会から周辺機器が配備される学校は12・7%ある。周辺機器については、学校予算で導入する場合と教育委員会から配備される場合がある。教育委員会で導入しようとしたが議会に通らず、各学校単位の予算で配備するという場合もあるようだ。

■整備率が高いほど授業活用が進んでいる

  整備されたこれらICT機器は、授業でどれくらい活用されているのか。

  ほとんど活用されていない(活用率0〜10%)学校は、前回調査34・9%から13%と大幅減となった。また、整備状況が高いほど活用率は高い。整備が活用を後押ししていることが明らかになったと言える。

■教員用PC配備 進の影響は大

  PC室の更新は5年ごとに行うのが望ましいと8割弱の教育委員会が考えているにもかかわらず、更新は7年以上経てからであると回答した教育委員会は38・3%と前回調査より増えている。政令指定都市よりも町村など自治体規模が小さくなるほどその傾向は顕著となっている。

  PC室の周辺機器や装置については、大判プリンター、カラープリンター、実物投影機、電子黒板などの整備が増加した。プロジェクター整備については前回調査より若干減。プロジェクターが組み込まれたタイプの電子黒板など、プロジェクター単体での設置が減っていると考えられる。

  クラス全員分の学習者用PC整備については、78%が整備予定なし。普通教室で児童生徒が全員でPCを使う活動が日常化するのは当面先送りか。

  校務に活用することを主な目的とした教員用PC整備については、前回調査の36・1%(うちシンクライアントによる整備は10・4%)から70・5%と文部科学省の悉皆調査による数字よりも若干低いものの、大幅増。シンクライアントによる整備も増えた。しかし、政令指定都市・中核市・特別区では、整備予定なしが26・3%ある。学校規模の小さい自治体については、校務のための教員用PCに対するニーズは低い傾向があるようだ。

  教員用PCの整備は私物PCの持ち込みにも大きな影響を与えた。持ち込みPC率ゼロは前回の30・9%から60・3%と大幅増となっており、整備率の進展が私物PCの持ち込み削減に直結している。私物PCの持ち込み率の減少は、情報漏えいリスクの低減につながり、歓迎すべき傾向だ。

■ICTの授業活用に 前向きな管理職増える

  各校の情報化の推進役を担う立場である学校管理職に対しても調査。それによると、校内の情報化の推進役は各校の情報担当者で行っている学校が45・1%。学校管理職と情報担当教員両者で行っている学校が46・6%であった。学校管理職自ら推進役であると答えた学校は4・9%と少ないものの、管理職の関わりは増えている。

  これは、普通教室に電子黒板を導入すべきであると考えている学校管理職は8割を超えており、小学校では約9割の88・1%が必要であると考えていることからも明らかだ。なお中学校では2割がそれほど電子黒板が必要であるとは思っておらず、小学校と中学校での認識に若干違いがある。

  活用についても中学校よりも小学校のほうが進んでいる。小学校では40・1%の教員が普通教室やコンピュータ室でICTを活用した授業を行っているが、中学校では17・5%に過ぎない。また、58・0%の中学校では、一部の教員がICTを活用していると応えており、全員がすべきことであるという認識を持たない管理職もいる。

  学校管理職は、学校におけるICT活用についてどこまで把握しているのか。

  デジタル教材や動画を授業で活用する時間が増えたと感じている管理職は75・3%。また、電子黒板やデジタル教材・教科書の導入により、よりわかる授業が実践できるようになったと考えている管理職は、小学校で74・6%、中学校で56・9%だ。中学校では若干低いものの、授業でのICT活用については肯定的な見解が増えており、授業はICTを使うべきではない、と考えている管理職は全体で4・3%と少ない。また、全体で73・7%が、管理職向けのICT研修が必要であると考えている。

  教科教育用デジタル教材やデジタル教科書の予算を増額すべきであると考えているのは全体で90・4%。ICT支援員の配置を望む声は84・1%と、教材費及びICT支援員の配置は学校管理職にも強く望まれている。

  これらアンケートの結果から、指導者用デジタル教科書やデジタル教材と電子黒板などのICT活用によって、よりわかりやすい授業になったものの、その活用方法についてはさらに研鑽が必要であり、教材研究や教材の確保、ICT活用の支援体制などが必要であると考えていると分析できる。

■サポート体制が強く望まれている

  各学校にICT支援員を配置している自治体が増えているものの、最も多いのが政令指定都市以外の市で、13・0%。その一方、かつては国の緊急雇用対策などで配置していたが現在では配置していない自治体は、政令指定都市で約31・6%と多い。ヘルプデスクの設置率は政令指定都市で63・2%。

  ICT支援員について独自に予算を計上しているのは政令指定都市で最も高く、36・8%。国の補助金活用率は15・8%。

  政令指定都市外の市で独自に予算を計上しているのは26・1%。国の補助金活用率は最も高く、20・7%。

  無償ボランティアの率は、政令指定都市及び市では5%強程度であるが、町村では12・5%と比較的多くなっている。
自治体規模が大きいほど独自予算で運営せざるを得ない状況が反映されているといえる。

  ※校務の情報化やネットワーク整備についての調査結果は3月号に掲載を予定。

【2012年2月6日号】


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