総務省フューチャースクール仕分けで「廃止」4人 その理由

 総務省は6月13日、有識者を交えて「行政事業レビュー」を行った。フューチャースクール推進事業については、京都市の教育委員会指導主事や実証研究校担当教諭が会議に参加、その有用性を主張したが、仕分人6人のうち「廃止」4「見直し」2の廃止判定となった。

 廃止理由は「実証事業以前に社会的文化的比較を先行すべき」「総務省文科省によるハードソフトモデルの導入は一応達成された。あとは自治体の意欲に任せるべき」「教育はコンテンツや教育方法の検証やクラス管理が第一。情報通信環境は二次的なものが明らかになってから」「ICTの利用が拡大している。総務省は支援する立場から抑制の効いた役割分担に移行すべき」というもので、本事業関係諸氏から見ればいずれも決定的な理由にはなり得ないもの。

  現時点で「導入モデルは一応達成された」という判断は、「有識者」としては乱暴すぎる。

  「実証事業以前に取り組むべきことがある」等「そもそも論」発言をした2者については、「教育の情報化ビジョン」について最初からレビューする必要がありそうだ。

  会議の中では「情報通信技術を使って協働教育を達成できたかどうかが政策目的。海外においても、通信技術は、単純なものであっても非常に効果的。導入前後でどのような協働が生まれているのか。目的達成についてもっと明確に」という意見が出た。

  また、「見直し」2件の理由は「文科省と総務省の役割を一層明確に」「文科省と十分にパートナーシップを」というもの。「学校を視察したが総務省は来ていたが文科省は来ていなかった」という指摘もあり、実施ついての否定ではなく、「進行方法を随時見直していくべき」という常識的なものであり、概ね賛成と判断できるものであった。なお「文科省と総務省の連携」については担当者も「連携」の内容を再三説明しており報告書にもまとめられている。

  にも関わらず、結果廃止判定となったのは、仕分人らは「本事業における文科省の予算は2億、総務省の予算は11億」という数字から、「総務省が主導を握っている」「文科省の関与が少ない」という印象を強く受けたことが今回の判定につながってしまったように見えた。

 森田政務官はこの結果を受け、「数次にわたり閣議決定された事業であり予算審議も経過していることから、政府として一丸として達成するという課題に向け、教育についての議論、実際に取り組んでいる学校の状況などを踏まえ総合的に文科省と政府で十分に議論していく」とまとめ、廃止判定イコール即事業廃止ではないことを婉曲に示唆した。

FS仕分会議=http://ch.nicovideo.jp/channel/sasshin-review

FSスクール仕分け 外部有識者6名

<総務省の会計課による選定>
有川 博 日本大学総合科学研究所教授
鬼木 甫 (株)情報経済研究所代表取締役所長
北大路 信郷 明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授

<行政刷新会議事務局による推薦>
楠 茂樹 上智大学法学部准教授
伊永 隆史 千葉科学大学副学長/危機管理学部教授
南 学 神奈川大学人間科学部特任教授

 フューチャースクール対象事業に対するパブリックコメントは7月中旬まで募集中。

 過去の仕分けでは、スパコンの廃止判定に15万通のパブリックコメントが届いており、パブコメを洗い出して事業内容を改変、次年度のスパコン「京」が世界一となった経緯がある(なお本年は2位)。

http://www.soumu.go.jp/menu_yosan/jigyou.html#h24

【2012年6月15日】

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