【文科省】教育の情報化に関する実態調査

デジタル教科書整備率が増

 文部科学省は、平成23年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果【速報値】を公表した。それによると、指導者用デジタル教科書の整備率が前年度から大きく上昇した。教員のICT活用指導力上位層は、愛媛県、三重県、岡山県。本調査は全国の全公立学校(小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校)を対象に、学校におけるICT環境の整備状況と教員のICT活用指導力について、平成24年3月1日現在の状況についてまとめた。

■学校ICT環境

デジタル教科書  前年度比で大きく整備率が伸びたのが、指導者用デジタル教科書だ。全体平均値13・5%から22・6%となった。整備率が高かったのは、石川県(43%)、栃木県(39・7%)、富山県(38・2%)。30%以上の学校に整備している都道府県は15府県。最も整備が進んでいないのが5・5%の北海道。

  電子黒板は全国に7万3536台整備されており、昨年度比較で1万3000台以上増えている。整備率は和歌山県(89・2%)、大阪府(87・1%)、愛知県(85・0%)の順。平均は72・5%(昨年69・3)。80%を超えているのは、秋田、富山、愛知、大阪、兵庫、和歌山、鳥取、山口、愛媛、佐賀の10府県。最低は長崎の54・6%。また、実物投影機は12万5678台が整備されており、昨年度比較で1万3000台以上増えた。

  校務支援システムのある学校の割合も調査された。それによると、67・5%の学校がなんらかの校務支援システムを導入しており、このうちクラウドシステムを活用している割合は26・5%であった。

  校務支援システム導入が80%を超えているのは12府県。導入率が高いのは大分県(100%)、山口県(99・6%)、広島県(92・2%)の順。最も整備率が低いのは奈良県の29・3%。

  教員の校務用PC整備率は102・7%(前年99・2)。最高は島根県の128・1%、最低は奈良県の65・3%。

  普通教室の校内LAN整備率は83・6%(前年82・3)。最高は岐阜県の95・6%、最低は青森県の55・3%。そのうち無線LANの整備率は23・7%(前年23・2)

■教員のICT活用力

  以下4項目について、各校種別に調査。

 A=教材研究・指導の準備・評価にICTを活用する B=授業でのICT活用指導力 C=児童のICT活用を指導する D=情報モラルなどを指導する E=校務にICTを活用する

  教員が最も苦手としていることは、全校種平均で見ると、「児童生徒がICTを活用して発表資料を作成、分かりやすく発表や効果的な表現を指導する」こと、次いで「児童生徒がわかりやすく文章にまとめたり調べたことを表やグラフにまとめることを指導する」ことであった。以下、校種別に傾向をまとめる。

【小学校】

  教材研究・指導の準備・評価に活用していると回答している学校が90%を超えているのは高知県、三重県。80%を超えているのは19府県。73・2%の教員は活用できると回答した島根県が最低であることから、教材研究や指導準備、評価などにICTを活用している教員は多い。

  岡山県(89・0%)を筆頭に、10府県では、80%以上の教員が校務にICTを活用できると回答。最低では奈良県の65・5%で、校務活用は浸透している。

 

 県によるバラつきがあるのが、授業中でのICT活用と児童・生徒のICT活用を指導する能力だ。

  授業中でのICT活用を80%以上の教員が行っているのは5県、60%以下も5県。児童・生徒のICT活用を指導する能力はさらにバラつきがある。80%以上の教員ができると答えているのが、三重県と高知県の2県のみ。60%以下は6県。

【中学校】

  授業準備や評価でICT活用できる教員が80%を超えているのは11府県。最低は奈良県の68・7%であることから、多くの教員が授業準備や評価にICTを活用している。

  中学校においては他校種と比較し、授業でのICT活用や児童生徒へのICT活用指導ができる教員の割合が少ない。80%を超える県は両項目ともない。授業でのICT活用率60%以下である県は23都府県と約半数。児童生徒へのICT活用指導力はさらに低く、29都府県にも上り、そのうち5府県(滋賀県、香川県、大阪府、神奈川県、奈良県)が50%以下と際立って低い。

  校務での活用については小学校よりも高い。80%以上の教員ができると回答したのは7県と小学校よりも少ないが、60%以下はゼロだ。

【高等学校】

  80%以上の教員が授業準備や評価にICTを活用しているのは19県と小学校同様多い。最低の宮崎も70%を超えており、小学校同様、全体として授業準備・評価にICT活用が浸透していると言える。

  授業中のICT活用指導については、7県が80%以上の教員ができると回答。しかし60%以下は14道府県と、小学校に比べてバラつきが大きい。児童生徒のICT活用指導については、5県で80%以上の教員ができると回答しているが60%以下は21都道府県。これにより、授業でのICT活用、児童生徒へのICT活用指導は高校教員が最もバラつきが大きいと言える。

【2012年8月6日】

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