【特集】校務の情報化(2012年10月8日号)

独自システム構築 ポイントは"人材"−大分県教育委員会

構想から2年半

 大分県では、独自システムで構築した校務支援システムを10月より全県展開する。4月よりテスト校として各校種の代表的な大規模校で試行しており、学校事情にそれほど詳しいとは言えなかった地場企業への委託であったが、順調に試行が進んでいる。教育財務課情報化推進班の岡田主幹に開発のポイントを聞いた。

  受注したのはそれほど学校事情に詳しい企業ではなかったため、学校の状況について調査、理解を図ることから開始し、独自システム構築には構想から2年半かけたという。

  全体の指揮を取る教育委員会の人材は、事務職でなく、最近まで現場に勤務し、教務等を担当していた人物だ。各校種の学校からシステムや教務の仕事に詳しい教員を委嘱してワーキンググループを構成。全学校に対して、要望や不安を含め、きめ細かにヒアリングし、業者に対して要望をあげる役割とした。これにより、各学校現場の状況が直に伝わり、業者もかなりの知識を蓄えることができたという。

  設計段階で、これら要望のシステム化が可能かどうかを判断。教育委員会担当者と業者との協議を週2回以上実施して、具体的な設計に入った。進捗状況の管理は、月1回以上のワーキンググループと企業で開催する開発会議で行った。

  岡田氏は、「企業との信頼関係を築き、開発途中でも大胆な修正や後戻りが可能な状態にすること。開発途中でもモデル校を決めて試行し、試行しながら修正や開発を続行すること」が重要であると話す。そのために、開発方式はアジャイル型(※)で行った。

  各モデル校には負担を強いるが、事前に各学校に出向き、職員会議で事情とメリットを説明して了承を得た。校長会や事務長会でも同様に、校務支援システムのメリットについて訴求。これは2年半で5回ほど実施したという。

  「成功の秘訣は、人材に尽きる。システムに詳しい人材と学校の制度に詳しい人材を活用すること。私自身も以前、県の情報政策課でシステム開発についてかなりの勉強をしてきた。利用しやすいシステムとなるよう学校教員が構築に深く係ることについて業者を納得させることが重要」と述べる。※アジャイル型=開発プロジェクトの期間を短期間(1〜6週間)に区切り、「部分的に機能を完成」を繰り返すことによって、段階的にシステム全体を仕上る手法。要件の変化が多く、決定が難しいシステムに対し有効な開発手法とされる。独立行政法人情報処理推進機構では、アジャイル型開発に適したモデル契約書案を提供。http://www.ipa.go.jp/about/press/20110407.html

 

【2012年10月8日】

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