全小中学校にデジタル教科書一括整備―八幡市教育委員会

電子黒板は小学校英語・中学校理科で活用が増

八幡市教育委員会
川中尚氏

 八幡市教育委員会・主幹兼指導主事の川中尚氏は「ICT機器、デジタル教科書の整備と効果的活用」について講演した。

  京都府八幡市は小学校8校、中学校4校において計約5600人の児童生徒が所属する自治体規模で、京都と大阪の中間に位置し、ベッドタウンとして発展してきた。門前町、農村部、土地開発によるニュータウンとそれぞれ抱えている教育課題が異なる傾向があるという。

  平成14年度「地域イントラネット基盤施設整備事業」(総務省)以来、国からの補助事業を積極的に活用してICTの授業活用や校務活用を進めている。平成21年度のスクール・ニューディール推進事業において校務用PC288台、教育用PCを1007台、50インチのデジタルテレビ258台、電子黒板、複合機やビデオカメラ、サーバなど周辺機器を整備した。

  大規模整備であったが、それまでの実績から、活用には自信があったという。

  校務用PCはセンターサーバ方式で、PCにはデータを残さない仕組みとした。

  1人1台の校務用PCの導入により職員会議がペーパーレスになった学校も出てきた。校務文書など過去の資料は共有フォルダからいつでも参照できるようになり、引き継ぎや文書の共有が効率的になった。

  普通教室では、デスクトップPCを常時接続した50インチのデジタルテレビを提示機器として活用。子どもたちの調べ学習などに自由に使えるノートPCも普通教室に各1台整備した。

  電子黒板は各校1台。小学校では外国語活動で、中学校では理科室で使われることが多いという。

中学校区に研究員

  ICT支援員は中学校ブロックに各1名を配備。また、各中学校ブロックに研究員を置き、市全体でICT教育を推進している。各校においてはICT研究委員会などで授業でのICT活用を中心にビデオを作成、サーバで共有して自主研修に取り組んでいる。

■デジタル教科書 全学年全教科整備

  デジタル教科書については、平成23〜24年度に市費で整備。

  指導書に添付していないものは全教科全学年導入(小学校国語、算数、理科、地図帳、書写)(中学校国語、社会、数学、理科、英語)した。

  八幡市ではどの学校がICTをどの程度使っているのかを把握できる仕組みとなっている。

  川中氏は「先生方は本当に良く使っている。デジタル教科書の活用も日常的になった。小学校では全ての学校でデジタル教科書が週1回以上は必ず使われている。これは、一度に全ての教科・学年に導入したからこその効果ではないか」と話す。

  小学校では2年生で活用実績が上がっている。また、中学校は先生によってバラつきがあるが、全体的には国語のデジタル教科書の活用効果が上がっており、特に発達障害の子どもにとってその有用性は顕著であるという。

  理科の活用にも特徴がある。「安全上なかなか実験が出来にくい学校でも、理科のデジタル教科書や教材は、活用率が高い。これは、実験が難しい学校でも映像でフォローできることが理由ではないか」と話す。デジタル教科書は学校の実態に合わせた活用がなされているようだ。

  川中氏は「今後も教室環境を活用し、より分かりやすく詳しい授業で学力を向上させ、子どもたちの情報活用能力が育まれる授業展開を期待したい」と話す。

【2012年11月5日】

関連記事

デジタル教科書