新課程で変わる授業―ベネッセ教育開発センター

理科「実験」社会「話し合い」が増

 ベネッセ教育研究開発センター(新井健一所長)は、主幹教諭・教務主任、理科教員、社会科教員を対象に実施した中学校の学習指導に関する実態報告書2012を公表した(調査期間2012年4月〜7月)。それによると、新標準授業時数を超えて実施している学校が約2割あることがわかった。また、新教育課程の本格実施に伴い「教員の多忙感の加速」を9割以上の教員が感じている一方で、理科では「観察・実験」にかける時間が増えていること、社会科では「話し合い活動」「グループ学習」にかける時間が増えていることがわかった。

授業時数増で 8割が多忙感

  新課程による最も大きな変化は授業時数の増加だ。旧時数980から新時数1015となっている。調査によると78〜80%の学校が本授業時数を行っており、残りはそれを超えた授業数を行っている。中には1121時間以上実施している学校もある。

  特に私学での授業時数増が目立つ。年間1121時間以上実施している学校は58〜60%と多く、週6日制が定着しつつあるようだ。

  新課程による内容の質・量の増加に伴い「教員の多忙化の加速」を感じている教員は87・4%と多い。これについて教育創造研究センターの高階玲治所長は報告書の中で「年間授業時数の改訂はスムーズな移行がなされているとは言えない」と分析している。

  また、生徒間の学力格差が拡大するのではないかと不安を感じている教員は、昨年度63・1%から今年度は78・5%と大幅に増加した。

  教師の指導力については、「各教科における言語活動の充実方法」について課題を感じている教員が80・6%と多い。また、新学習指導要領の全面実施後、約半数の学校が「言語活動の充実に資する全校的な取り組み」について増やす予定であると回答している。

中学校理科 実験時間が増

  3年間の移行措置を経、全面実施となった理科については、2008年度調査と比較すると、「実験」「観察」の時間が増加した。実験は8・5ポイント増の61・2%が年間16時間以上行っている。観察も4・6ポイント増で33・2%が行っており、実験、観察の充実に向けた取り組みが増している。観察や実験の結果を考察してまとめる「レポート」も3・8ポイントであるが増加している。

  課題は言語活動に関連する項目だ。「自分の意見の発表」「グループでの活動」の割合は2008年度とほとんど変化が見られない。レポートをまとめる時間も、増加傾向ではあるが実験観察の増加ほどではないことから、指導時間の確保に課題があることがわかる。

中学校社会科 多様な学習活動

  社会科では、社会的事象や事項の背景を考察する学習活動や、主体的な探求学習への取り組みに関する記述が加わっており、調べ学習や話し合い学習など多様な学習活動が必要とされている。それを受け、社会科では2008年度と比較して「グループでの話し合い」活動が増加している。「図表の読み取り」「地図帳の活用」「自分の意見の発表」も増えており、その分小テストの実施率が若干減った。

  また、社会科教員の88・8%が「指導の準備にかけられる時間が不足」、81%が「『活用』を中心とした学習時間がとれない」と感じている。

  理科教員、社会科教員ともに「準備時間不足」を感じているとはいえ、社会では「話し合い活動」、理科では「観察・実験」にかける時間を増やしていることがわかる。

電子黒板の使用率は2割

  見えない事象を扱う理科ではICTとの親和性が他教科より高いと指摘されている。それについても調査したところ、電子黒板の使用率22・3%、指導者用デジタル教科書使用率17・7%、指導者用デジタル教材使用率35・9%、学習者用タブレット使用率4・8%であった。なお、社会科の電子黒板使用率は20・3%、指導者用デジタル教科書使用率8・1%、学習者用端末の活用は4・5%。電子黒板の使用率は理科とほぼ同様だが、指導者用デジタル教科書の使用率は理科より低い。

  デジタル教科書の整備について、中学校については今年度に増加していることが予測されていることから、来年度以降の数字の進捗が注目される。

【2012年12月3日】

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