【フューチャースクール推進事業】一斉授業から協働学習へ

【小学校】徳島県東みよし町立足代小学校

【中学校】横浜国立大学教育人間科学部附属横浜中学校


 

【中学校】横浜国立大学教育人間科学部附属横浜中学校

電子黒板(IWB)
電子黒板(IWB)

電子黒板は補足資料の提示(写真上)や生徒の
説明(写真下)など日常的に使用されている

 横浜国立大学教育人間科学部附属横浜中学校(神奈川県・蝶間林利男校長)には、全普通教室に電子黒板(IWB)と教員用PC、書画カメラ、学習者用端末46台(生徒用45台、教師用1台)とその保管庫、アクセスポイント(2か所)が整備された。電子黒板は77インチの大型で、黒板上をレールで動かすことができるように設置。常駐しているICT支援員は各授業で必要な場合「予約」するが、電子黒板の活用であれば支援なしで授業を進めることが多いという。10月31日、通常の授業を見学した。

情報配信型授業から より高次の知的活動へ

電子黒板の活用 各教科で展開

  10月18日に総務省で行われた「フューチャースクール推進会議」で各構成員は異口同音に「電子黒板は非常によく使われている」と報告したが、同校でも電子黒板を使っている様子が多く見られた。

  英語では、授業の流れに沿って教師の自作教材を電子黒板に提示していた。社会科では、資料集の一部を提示して「太平洋戦争」勃発の流れの説明や、当時の写真やポスター、子どもの絵や遊び用具など様々な写真や資料を提示しながら、当時の日本についてイメージがわくように説明していた。

  数学では、ワークシートの問題提示や答え合わせ、生徒の解答を記入したワークシートを電子黒板に提示しながら本人が考え方を説明する様子が見られた。このほか、学級活動などでも電子黒板や書画カメラは日常的に活用されているという。

調べ学習や 個人研究で

  学習者用端末については、国語の「徒然草」の調べ学習で使用されていた。教科書に掲載されている「徒然草」の全段を書籍やインターネットで読み、自分のお気に入りの段を見つけ、それにキャッチコピーをつけて紹介し合うという活動だ。

電子黒板(IWB)

学習者用端末は調べ学習で
活用していた

  国語の時間にはこのほか、端末の動画撮影機能を使って、発表しているときの表情などを自分で確認したという。国語科の千葉教諭は「自分の発表の様子を自分で確認できるため、改善すべき課題が分かりやすく、話し方を磨くことができる」とメリットを述べる。

  同校では全学年を通して総合的な学習の時間に、個人研究「TOFY(=Time Of Fuzoku Yokohama)」を行っており、毎年発表会も全校的に開催される。「TOFY」では、学習者用端末や電子黒板の導入により、調べ学習を普通教室で行い、発表用資料作りも教室で行えるようになった。また、発表用資料は模造紙や画用紙だけではなくプレゼンソフトを組み合わせ、効果的な見せ方を考えたものが増えているという。

  音楽科の岩屋教諭は、学習者用端末を曲の調べ学習に活用する予定だ。なお「電子黒板は、様々な資料を提示できる。スコアを提示して譜面の読み方やブレスの位置を確認するなどの活動に役立つ」と考えているが、今回、音楽室には電子黒板は設置されていない。

英語圏への 発信を視野に

大音師右至副校長  大音師右至副校長は、「フューチャースクールの学習環境は、今まさに社会で必要とされる力を育成するための環境となる可能性を秘めている」と話す。「これまでの学習は、教師がいないと成立しない情報配信型の授業。しかし一般社会では、自分から情報を収集していかなければならない場面が多い。学習者端末の活用により、自分で情報を取捨選択、発信するなど学習者中心で進めることで、あふれる情報から何を取捨選択して発信していくかについて鍛えることができる。情報化、国際化に対応すべく、今後は英語圏への情報発信を視野に、ICTをワールドワイドな発信のきっかけにしてほしい」。

  さらに、「子どもたちの学習活動をワールドワイドな発信に展開していくためには教える側の授業イメージの改革も重要。教師もフューチャー発想になれば授業は劇的に変わるはず」と話す。

  もうひとつ重要な点は、同校が教員養成の役割を担う責務がある点だ。「年間約120名の教育実習生が4週間にわたりこのような環境を体験できる点も大きなメリット。最初から学校にある環境として体験できることは、学生にとってもプラス、大学にも貢献できる」。

  実習生のICT活用は、段階的に進むという。最初は電子黒板や書画カメラを使って、教材やワークシート、資料、動画などを提示、説明したり、説明の補足をしたりする際に使う。次に、生徒に電子黒板を使って発表させる活動が始まる。学習者用端末から電子黒板に転送させる方法を試す学生もおり、これらを実習期間中に全てトライする学生もいる。

  電子黒板と学習者用端末については、「電子黒板はこれまでの学習スタイルに馴染みやすく、多くの教員がすぐに使い始める。学習者用端末の活用度は、現状では電子黒板の半分以下。重要性と使用頻度は比例しないものの、授業スタイルが変わるに連れてこの率は変わっていく可能性がある」と指摘。ICT支援員については、「ICT支援員は欠かせない。事務職員同様に学校のデジタル環境を支える職員は必要」と述べた。

より高次の 知的活動に

  附属横浜中の取材を通して、中学校では小学校よりも一斉指導が多く、電子黒板が授業に馴染み比較的すぐに使われること、学習者用端末については、調べ学習の際によく使っていることが分かった。

  学習者用端末の環境を活用した幅広い情報交換や交流により、より高次の知的活動に結び付けていくということが、本事業における学習者用端末活用の重要な目的のひとつ。それには授業スタイルを変更していく必要もあり、今後のさらなる検証が期待される。

【2012年12月3日】

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