国際バカロレア教育の特徴は

教科間連携 社会とつながり 多文化理解 双方向型授業

 グローバル化に対応する学びの方法は?‐‐目白大学外国語学部主催のシンポジウムで、東京学芸大学附属国際中等教育学校の星野あゆみ教諭(MYPコーディネーター)が「グローバル人材の育成に向けて‐IB(インターナショナルバカロレア)」をテーマに、国際バカロレア教育の特徴、授業設計の方法などについて話した。

東京学芸大学附属中等教育学 MYPコーディネーター星野あゆみ

一条校 国内では3校目

  東京学芸大学附属国際中等教育学校は2007年に開校、帰国子女を多く受け入れていた附属中学校と附属高校大泉校舎が統合された学校で、新入生(中学1年生)の中には、国際バカロレア校から入学してくる生徒もいる。当初から国際バカロレアの教育を目指し、2010年に国際バカロレアの中等課程プログラム(MYP)校に認定された。一条校(欄外参照)としては加藤学園暁秀中学校・高等学校(2000年)、玉川学園中等部・高等部(2009年)に次いで3校目。日本の学習指導要領に準じ、国際バカロレアプログラムを取り入れている。

ほとんどの内容を 日本語で指導する

  国際バカロレア機構は、ディプロマプログラム(DP=16〜19歳)、中等課程プログラム(MYP=11〜16歳)、初等課程プログラム(PYP=3〜12歳)の3つのプログラムを提供、最初にDPが作られ、その後DPへと続く早期教育が求められ、MYP、PYPが作られた。

  国際バカロレアの3つのプログラムは様々な面で一貫性を持つが、プログラムによって相違がある。DPには修了試験があるが、MYPにはない。指導言語もDPは英語かフランス語、スペイン語と規定されているが、MYPは言語の規定はなく、本校では英語や一部の教科内容を除き、ほとんどの内容を日本語で指導している。

  MYPでは次の3つの概念、教科間の連携・実社会とのつながりを重視した「ホリスティックな学び」、多様な価値観やものの考え方の理解を深める「多文化理解」、知識の伝授ではない双方向型授業で伝える力や議論する力を伸ばす「コミュニケーション」を重視する。理科で学んだことを数学でも話し合い、発表を行うなど関連させて各教科で学ぶ。

学ぶ目的を提供する

  中学、高校時代、「なぜ、これを学ばなければならないのか」とよく思ったものだが、MYPではそうした疑問を抱かせないような学びを推奨している。単元の冒頭で、例えば「コミュニティと奉仕」に焦点をあてている等、この内容がどのように社会とつながっているのかについて生徒に示す。生徒はそれをヒントに、自分で知識の意味づけをして学びを構成していく。

  「知識ではなく、概念を教える」という考えに基づき「持続可能な発展」「創造」「効果」「共生」といった重要概念を学習項目として設定。例えば恐竜を扱う場合は、「絶滅」という概念を学ばせ、制度や製品の終焉などにも敷衍させる。概念の学びは知識のように陳腐化しないからだ。

  重要概念の学びは他教科と連携する。本校では年度当初にクロスカリキュラム表を用意し、同じ重要概念を持つ教員同士で話し合う時間を設定している。

  単元の冒頭には「変化をもたらす要因は何か?」「目に見えないものを見えるようにするには」といった単元クエスチョンを生徒に示し、学びのゴールを伝える。

評価方法も授業で明示

  日本の学習評価法と異なりMYPでは教科によって観点数、内容が異なる。例えば、数学の評価規準は、1知識と理解(8)、2パターンの探究(8)、3数学におけるコミュニケーション(6)、4数学における振り返り(6)。ス内は観点ごとの満点。教育の理念、重要なことが観点に落し込まれていて、数学でも様々な事項についてディスカッションをしなければ評価できない。この評価規準も学習の冒頭で生徒に説明している。

英語教育は他教科と連携

  国際バカロレアにおける付加言語(英語)学習の特徴として、他教科との連携、実用的な題材を重視、訳読よりコミュニケーション、評価課題は初見のものを使用、学校の理念に即した教科教育といったことがある。

  写真、図形、映画などのVisual interpretationで扱う題材も設定している。

  「学校の理念に即した教科教育」では、コミュニカティブなことが好きな教員、文法を重視する教員など、指導者によって生徒の能力の育成が制限されないように、教科内での教員間のディスカッションも頻繁に行っている。

■国際バカロレア校=グローバル化に対応した教育の充実策として、2011年に政府の報告書に国際バカロレア認定校を増やすことが明記され、現在文部科学省は2018年までに200校への増加を目指している。国際バカロレア機構は1968年にスイス・ジュネーブに設立。146か国、3661校の認定校があり年々増加している。日本の認定校数は26校だが、ほとんどはインターナショナルスクールで、一条校(学校教育法第一条に規定されている学校)は6校。

【2013年11月4日】

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