ICT活用に9割の教員が前向き―ベネッセ教育総合研究所

"話す・聞く""協働"で活用したい

 ICTの授業活用が着々と身近なものになりつつある。小中学校教員の9割が、今後授業でICTを活用したいと回答していることが、ベネッセ教育総合研究所の調査から明らかになった。これは、同研究所が全国の公立小中学校教員(有効回答1608名/一般校と先進的な学校を比較)を対象に「ICTを活用した学びのあり方に関する調査」を実施した結果だ。

ICT活用“不安感”が減 サポート“有無”が左右

■小学校の整備率 実物投影機は88%

ICTの授業活用
ICTの授業活用

  ICT活用の実態については、普通教室でのICT機器の整備状況を調査。普通教室で常に使える・共有で使えるICT機器としては「実物投影機」の整備率が高く、小学校では88・1%、中学校では73・8%。

  整備状況が低いICT機器は「児童生徒用のタブレット端末」で、小学校7・7%、中学校6・0%だ。

  ICTを活用した授業の取り組み年数は、「5年以上取り組んでいる」と回答した小学校が28・5%と、3割超えが目前である一方、中学校では15・8%に留まっており、「まだ取り組んでいない」と回答した割合が38・4%となっている。

  しかし、取り組みへの意欲は高い。

  今後ICTを活用したいと考える教員は小学校で95・6%、中学校で87・8%だ。現在のICT活用状況は、教材の収集・提示が多いが、取り組みたい内容については、教材の収集・提示や情報教育の項目に加えて、「プレゼンテーション用のソフトを使って子供が共同で資料をまとめる」が小学校54・6%、中学校64・3%と半数を超えており、テレビ会議などで遠隔地や海外との交流など「協慟的学び」に対する意欲・関心が特に高い。さらに子供の学習記録を使った個別対応や個別の振り返りなど、主体的な学びの実現にも興味を持つ教員が増えつつある。

  ICTの効果・目的に対する意識について、今後、子供たちのどのような力を育成する授業を増やしたいかも質問。現状で日常的に実施している項目は「基礎的・基本的な知識・技能の習得」が小中学校共に最も高いが、今後は「自分の意見を伝える力の育成」、「友達と協働する力の育成」について取り組みたいという意向が強い。

■ICT機器活用 不安感は減少傾向に

  ICT機器の活用に関する不安は、「不安ではない」という回答が小学校47・2%、中学校47%で、「とても不安」に思う教員の割合は小学校12・7%、中学校10・8%に留まった。

  ICT機器の活用に関する不安感は、徐々にではあるが着実に軽減しているようだ。

  今後の課題については「授業の準備に時間がかかる」、「自分のICTスキルが不足している」、「授業の計画をたてるのが難しい」、「授業中の機器操作が大変」、「インターネットの子供への影響が心配」の5つが5割以上となっている。これら懸念材料を解決の方向に導くことができれば、授業でのICT活用に前向きに取り組む教員の一層の増加が予想される。

■「高活用」「低活用」 教員の違いも分析

  ICT機器を授業で活用している教員、活用していない教員の違いについても分析。

  ICT「高活用」教員と「低活用」教員で大きく差(約20ポイント以上)のある項目として、「ICTを活用した授業例などの授業案を知ることができたから」、「学校で研究として進めていたから」、「機器操作のサポートをICT支援員に行ってもらったから」があがっている。調査により、授業事例の共有や研修、ICT支援員等サポートの仕組みづくりの重要性が改めて明らかになった。

【2014年4月7日】

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