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ICT活用指導力の高い教員ほど 協働教育場面を多く実施している―東京工業大学名誉教授 清水康敬氏

清水康敬教授(東京工業大学)は、1人1台のタブレット端末を活用する総務省・フューチャースクール推進事業と文科省・学びのイノベーション事業で得られた実証効果について分析した。それによると、ICT活用指導力が高い教員のほうが協働教育の場面を多く実施している。また、タブレット端末における協働教育場面は年度を経るにつれて増えており、小学校1・2年生、小学校3〜6年生、及び中学生を対象にした調査の結果、児童生徒の学力が確実に向上した。

児童生徒の活用期間が長いほど 学び合いの質が向上する傾向

1人1台のタブレット端末活用後、2年目以降に実施率が高くなった協働教育場面は、「数名が一緒に学び合う場面」「数名で話し合う場面」「1人が発表したことについて、クラス全体で考える場面」「同じ問題について、クラス全体で話し合う場面」など。

教員のICT活用指導力に係わらずタブレット端末の活用頻度が高いのは「児童生徒が学習の理解を深める場面」だが、指導力が高い教員ほど、タブレット端末を活用した協働教育をより多く行っている。また、指導力が高い教員は、タブレット端末を「制作の手順を説明する場面」「生徒に発表させる場面」などで、より多く活用する。

では、1人1台環境における児童生徒の変容についてはどうか。

小学校低学年の3年間の変化を見ると、「進んで勉強することができた」「習ったことを覚えることができた」「友達と話し合うことができた」児童が増えている。また、活用期間が長くなるにつれ「友達と話し合うことができた」割合が増加している。

学年による違いでは、総体的に1年生のほうがタブレット端末に対して高く評価をしている。

これについて清水教授は「フューチャースクール推進事業がスタートした時点で、小学校1年生からタブレット端末を与えることについて懸念していたが、児童は素直に受け入れていることがわかる」と指摘。

また、小学校中〜高学年においては、「活用期間が長いほど『思考と表現』、『学習への意欲』『協働学習』など、学力に結びつく因子が伸びている」と分析した。

中学生において活用期間を経るごとに明らかに向上したのが、「学習への意欲」「学習の質」。また、中学校1年生のみを抽出して年度変化を見ると、年度が経つにつれて「知識・思考の画面共有」「学習への意欲」「協働学習」「学習活動の質」が向上している。これについて清水教授は「年度が経るにつれて教員の指導力向上が図られていることが関係している」と解説。

児童生徒から寄せられた「感想」に含まれたキーワードについても分析。

それによると、タブレット端末を活用した授業について、活用期間が長いほど「わかりやすい」「使いやすい」という評価が増えており、90%以上の児童がタブレット端末について肯定的である。一方、「楽しい」「面白い」といった興味関心に係わるキーワードは減少した。これについてはさらに分析。

初年度、「楽しい」と記述した生徒と記述していない生徒を比較すると、「楽しい」と記述した生徒は「学習活動の質」「協働教育」「コンピュータ活用の発表」など、すべての因子で向上。タブレットを使うことを最初に「楽しい」と感じた生徒が多いものの、その後「継続的に活用する」と「楽しいと感じる」生徒の割合が減っている。一方で、「わかりやすい」と思う生徒の方が「学習の意欲などの評価」との関係が大きくなることから、「楽しい」から「分かりやすい」へと移行するための授業が求められている。

清水教授は、これら分析結果について「さらに詳細の分析はさらに必要だが、1人1台環境の推進を後押しできる検証結果が得られた」と述べた。

【2014年7月7日】

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