教育委員会対象セミナー・東京 ICT機器の整備計画/校務の情報化

クラウド化で災害対策 管理負担の軽減を図る―鎌倉市教育委員会 川合良宏氏

新指導要領の切替時に導入

教育委員会対象セミナー
鎌倉市教育委員会
川合良宏氏

鎌倉市教育委員会では校務支援システムを小中学校(小学校16校・中学校9校)に導入して本年で2年目を迎える。教育委員会教育指導課の川合良宏課長は、導入の経緯と整備について報告した。

各校では校務用PCの普及により、資料のデータ化やデータの共有化など、独自の工夫で事務処理時間の縮減を図っていた。しかし基本データの入力など作業の重複が多く、統一化が求められていた。また、文部科学省は平成22年11月、「ICT活用によって指導要録等に係わる事務の改善を検討することも重要である」旨を通知。鎌倉市ではそれを受け、平成23年度から各種帳票や指導要録の電子化を図る校務の情報化に取り組んだ。

育委員会では校長会や教頭会と協議して各校ニーズをヒアリング。学校業務の流れを整理し、校務支援システムの必要要件を明確にしていった。

各種帳票等電子化を図る際には、様式の統一が必要になる。それについては、校長会に提案、教頭会での検討を経て進めた。最初に着手したのが通知表の様式統一だ。当初、各校独自様式の変更について抵抗もあったが、現状あるシステムに近づけていくというアプローチを基本方針として理解を得ていった。続けて、テスト処理や保健管理等、各種証明書の統一を図った。

学期末はヘルプデスクを延長

中学校では新学習指導要領に切り替わるタイミングであったことから、校務用PCの1人1台を実現し、グループウェア、学籍・成績管理システム、保健情報管理システムを導入。試験運用を経、平成24年度から本格運用をスタート。小学校では校務用PCが2・5人に1台であったことから、グループウェアのみとした。操作上の問い合わせ対応として、ヘルプデスクを開設。平日は9〜17時だが、学期末1週間程度は時間を延長して対応。導入後、初の定期テストや通知表の入力時にはサポートデスクがフル稼働したものの、次学期になると問合せは激減したという。

クラウド化を実現

鎌倉市の導入におけるもう一つの大きな特徴が、クラウド化の実現だ。海に近く津波など災害の可能性もある地域性から、安全面や管理の負担軽減を考慮してデータ管理の保守・運用を市外のサーバセンターに委託。同市が導入した校務支援システム「RYOBI‐校支援」(両備システムイノベーションズ)は、センターサーバ型とクラウド型、各校導入型いずれにも対応する。外部サーバの導入は、いざというときのリスクマネジメントにもなる。

校務支援システム導入により教員の日々の業務はどう変わったのか。

基本情報のデータ入力作業が激減し、当初の目的であった「重複作業の軽減化」が図られた。市内小中学校の教職員間でメールをやりとりできるようになった。鎌倉市教育ネット上において学校間、各研究部会や教育委員会間のデータ共有も進み、事務作業も効率化した。

各校では、校務支援システムのトップページにある掲示板や行事予定を毎朝確認することが習慣化。掲示板の活用がスムーズになるにつれ、朝の連絡事項が減っているという報告もあるという。
保健管理は養護教諭が名簿を作成、データ管理を行う。活用が進むにつれて使い勝手に新たな要望が生まれており、現在、部会で要望をまとめ、リニューアルを進めている。

スムーズな運用の理由について、学校ニーズに対応しつつ活用しながら改善できる柔軟性を持つシステムであること、中学校では学習指導要領の改訂に合わせたことを理由に挙げた。今後は小学校における校務用PC1人1台配備と学籍・成績管理システム等の導入、管理職研修などに取り組む。(講師=鎌倉市教育委員会教育指導課長 川合良宏氏)

【教育委員会対象セミナー・東京:2014年7月2日】

【2014年8月4日】

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