40回記念シンポジウム―第40回全日本教育工学研究協議会全国大会

40回記念シンポジウムでは、秋山演亮氏(和歌山大学宇宙教育研究所所長・特任教授)、上野耕史氏(文部科学省生涯学習政策局情報教育課教科調査官)、小林史彦氏(オムロン(株)グローバルリソースマネジメント本部人財総務センター人事部長)が登壇し、「子供が主役になる次世代の学び〜多角的見地から教育を考える〜」をテーマに、求められる人材像とその必要性の理由について討議した。コーディネータは黒上晴夫教授(関西大学)。

「主体的に学ぶ力」とは学び続ける態度である

黒上=タブレット端末の導入の勢いは強力だ。子供が主役になる学びを考えたとき、タブレット端末は、個人の学び、協同的な学び、どちらのツールにもなり得る。学びを再認識すべき理由は何か。

秋山=かつては、人を補充すれば仕事量を増やすことができた。しかし現在、それは通用しない。仕事全体の見通しを持ってそれを成し遂げるために個人の能力を発揮する必要がある。能力をどう発揮して何をすべきなのか、理解して仕事を進める必要があり、そのための学びが必要だ。

小林=人事で感じるのは、何かを成し遂げようという積極性のない学生の増加だ。失敗をしたくない気持ちが強いようだ。学校は、努力すれば何かしら報われるが、ビジネスでは、努力しても報われない場合がある。

学校に期待したいのは、自ら学ぶ力を身に付けること。グローバルでは持続的に学ぶ気持ちがないと、ついていくことができない。さらに、様々なモノを組み合わせて新しいモノを創造する力、間違いや失敗から学ぶ力、チーム作業の中で役割を果たす力などが求められている。

黒上=自己教育力の重要性は20年前から指摘されているが、教育技術や評価が浸透しておらず、改善されていない。これは大学受験の仕組みも影響している。初等中等教育の課題は、評価できるものしか学力として認められない、という面があり、自ら学ぶ機会を学校で与えきれていないことにあるのではないか。

上野=学習指導要領にある「主体的に学ぶ態度」は、授業に真面目に取り組む態度ではない。生涯にわたって学び続ける態度である。日本はOECD諸国に比べ、「自分の参加により社会が変えられる」という意識が圧倒的に低い。社会とつながる機会は増えているが、実際にはつながっていないのが現状。今後、学び方が変わっていく可能性がある。それに対応できるように、教員にも学び続ける力が必要。

秋山=地域全体でヒトを育てる教育が不可欠で、これが実現できる教員を含めたネットワークが必要。ゆとり教育は制度としては認めているが、うまく実行できない教員が多かった。

黒上=協同学習、協働学習などがあるが、初等中等教育では何を主眼にするのか。

上野=「協同」と「協働」は、次期学習指導要領で整理する。イノベーションを起こす人材、社会に参画できる人材、双方が必要である。

秋山=企業が求める人材像は、2000年からそれほど変わっていない。あらゆるジャンルにある程度秀でたT型人材である。しかし大学が育てたいのは、専門性に優れた1型人材。1%程度のトップ育成の仕組みは現在もある。その後を行く5〜10%程度のイノベーション人材こそ必要であり、その層をサポートする仕組みが少ない。チーム力を身に付け、ネットで炎上させない力を育む教育が必要だ。

小林=IT立国を支える理数脳の育成のためにも、理数系教育の強化が望まれる。

一方、小中高では偏りすぎるのも良くない。科学技術力は、世のため人のために使うものであり、それを理解して興味関心を持つ人材を育てたい。オムロンでは、企業のCSR活動として社会に関心を持ってもらう取り組みを継続して行っていく考えだ。

【2014年11月3日】

関連記事

  • ICTの授業活用
  • ↑pagetop