デジタル教科書・教材をもっと活用する−”授業の流れ””児童の活動内容”が変わる

タブレット端末とデジタル教科書の効果的な活用<一般社団法人日本教育情報化振興会>

指導者用・学習社用デジタル教科書で新たな授業デザイン

デジタル教科書によって子供の学びはどう変容するのか‐‐12月6日、「タブレット端末とデジタル教科書の効果的な活用を体験するセミナー2014」が東京都内で開催され、来年度から発売される指導者用デジタル教科書や学習者用デジタル教科書を活用したワークショップとデジタル教科書を導入した自治体の成功事例が発表された。主催は一般社団法人日本教育情報化振興会。

学習者用 ワークシートを各自で作成する

デジタル教科書
各自で撮影した写真をデジタル教科書上に貼
り、対応する説明の文章を考える

青山由紀教諭(筑波大学附属小学校)は、タブレット端末と学習者用デジタル教科書を使った新たな学びを提案した。「教科書紙面を加工し、一人ひとりが独自のワークシートを作成する活動」と「読んで理解したことを表現活動につなげる活動」で、教材は説明文「アップとルーズで伝える」(4年国語光村図書)。

参加者は「アップ」、「ルーズ」それぞれの説明内容や表現、文章構造について学んだ後、「アップ」の写真、「ルーズ」の写真を各自のタブレット端末で撮影した。学習者用デジタル教科書の機能で、撮った写真は、教科書紙面に直接貼り込まれる。参加者は自分たちが撮った写真について、学んだ内容に則して「説明」をする。

その事前準備として各自、教科書本文をその説明として使える箇所は残し、使えないところはマーカーで消す。これで個別の「説明用ワークシート」の完成だ。白マーカーで本文を見えないように消す参加者、透明マーカーで本文を見えるようにマークする参加者がいる。その中で「元の文章が見えると、それを参照できるので、文章作りが苦手な児童でも説明の文章を考えやすい」など、児童の発達段階に合わせる工夫を凝らす参加者もいた。

指導者用 文章構造から要旨を読み取る

双括型の構造を理解する
第一段落と第六段落を並べて表示
「双括型」の構造を理解する
文章構造の見える化を図る
文章構造の「見える化」を図る

野村真一教諭(関西学院初等部)は、「文章構成とその階層性を捉えることができれば、筆者の主張を読み解くことは難しくない」と話す。

ワークショップでは、指導者用デジタル教科書を活用した「論理的な文章を俯瞰して構造から要旨を読み取る」手法を提案した。教材は「見立てる」(5年国語光村図書)。「あやとり」を例に「見立てる」ことについて述べる内容の教材文だ。

野村教諭は「マップツール」を使って「見立てる」例を複数の参加者に出させていく。「あやとり」は、教材文「見立てる」において「具体例」であり「置き換え可能な素材」であることの理解につなげるためだ。

次に「文章構成画面」(「参考ワークシート」に収録)を提示。「具体例」が書かれている段落を下げ、文章構造の「見える化」を図った。これにより、段落間の主従関係が視覚的に理解しやすい。さらにデジタル教科書の「二画面表示」機能で、段落が下げられずに残った第1段落と第6段落(最終段落)の本文を並べて「結論で始まり結論で終わる」双括型について学んでいく。要約については「第1段落と第6段落の内容が重ならないように」「具体例から顕著なもの」をピックアップする方法を示した。

休み時間も活用<山江村>

山江村教委大平教育長
山江村教委 大平教育長
港区教委井上文敏氏
港区教委 井上文敏氏
徳島市教委三木崇生氏
徳島市教委 三木崇生氏

デジタル教科書で変容した子供の姿について、大平和明教育長(熊本県・山江村教育委員会)、三木崇生指導主事(徳島県・徳島市教育委員会)、井上文敏氏(東京都・港区教育委員会指導室)が報告した。

大平教育長はデジタル教科書について「一斉授業における課題提示や振り返りに有効。さらに少人数・複式学級における一人学びにも効果があった。漢字の筆順アニメーションを印刷して教室に掲示したり、休み時間に自分たちで筆順練習に取り組んだりする様子も見られた」と述べ「学力調査の結果も良好で、子供たちの自信につながっている。保護者の理解もあり、村を挙げて学びの環境づくりに取り組んでいる」と報告した。

研究活動を支援<港区>

港区の井上氏(情報教育担当専門官)は「小学校の普通教室に電子黒板と実物投影機が整備されてから、導入済みのデジタル教科書(国語、社会、地図、算数、理科)の活用機会が増え、授業の工夫も進んでいる。児童の発表や話し合い、思考を促す場面が増えた」と成果を報告。早期に成果を上げたポイントとして「機能説明ではなく、授業改善に即した活用研修」「各学校への活用事例集の配布」「個人研究・グループ研究の奨励」を挙げた。港区では、研究活動には予算をつけ、3月に発表会で成果を披露する取り組みを実施している。井上氏は「小学校段階から集団で学ぶための学習力を身に付ける必要がある」と、今後の期待を述べた。

徳島市では現在、全ての小学校に国語・社会・算数・理科・地図、全ての中学校に国語・社会・地図・数学・理科・英語のデジタル教科書を整備している。本年10月、指導者用デジタル教科書について調査したところ、8割の教員が「よくわかる授業づくりにつながる」、7割の教員が「授業への関心・意欲・態度」及び「学習内容の理解」について子供たちに変化が見られたと回答しているという。三木指導主事は「『活用しやすい環境整備』『リーダー研修』『活用研修会』の取り組みが有効であった」と報告した。

【2015年1月1日】

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