教育委員会対象セミナー・東京 ICT機器の整備計画/校務の情報化

12月9日、東京都内で「第20回教育委員会対象セミナー」が開催され、全国から教育関係者が参集した。この日の講演内容を抄録する。次回の教育委員会セミナーは1月29日福岡で開催される。詳細=http://www.kknews.co.jp/semi/150129.html

指導要録を電子化 校務の負担を軽減 深谷市教育委員会 兵頭一樹氏

深谷市教育委員会 兵頭一樹氏
深谷市教育委員会 
兵頭一樹氏

兵頭一樹氏(深谷市教育委員会)は、深谷市の学校ICT環境と校務支援システム導入の経緯と効果について報告した。

時代の変化を読み取りリードする教育に

■指導要録を電子化

深谷市(小学校19校、中学校10校)では、平成25・26年深谷市「教育の情報化」推進計画を策定した。教育内容の多様化や保護者からの多様な要望による教員の多忙化を解決し、子供と向き合う時間を確保することが目的だ。計画には、授業改善のためのICT環境の整備、教員の負担軽減のための校務支援システムの導入、災害・危機管理対策としての緊急連絡サイトの構築や学校HPでの情報発信などを盛り込んだ。これを市の地域情報計画にも反映。予算を確保するために、子供と向き合う時間を確保するためのツールとして「総合的校務支援システム」の必要性を訴求した。予算確保のためには丁寧な説明が必要だ。

指導要録の電子化等に平成24年から着手。「学校教育振興懇談会」による電子化等の要望を受け、「教育の情報化」推進委員会下の「校務の情報化部会」でガイドラインと仕様を検討。校長会議や情報主任会・進路担当者対象の研修会等で指導要録等の電子化について学校への周知を図った。

ガイドラインに則り、職員室のPC入れ替えや校務支援システムを更新。平成25年度は中学校10校・小学校7校計540台、平成26年度は残りの12校計358台の職員用PCを入れ替え、新しいシステムの運用をスタート。これまでの校務支援システムをバージョンアップした「総合的校務支援システム」の活用が始まっている。

■子供と向き合う時間を創出する

新しい「総合的校務支援システム」で何が変わったのか。
これまでは校務支援システムで、名簿情報管理、出欠情報管理、成績処理、通知表作成などを行っていたが、新たに指導要録・抄本や調査書も電子化。一元化されたデータを帳票に活用でき、年度初めの処理も効率化。負担感が軽減された。

養護教諭が出欠管理に係わっている学校もあり、インフルエンザ等による学校の欠席状況も保健室で記入され、集計結果は校長室でもすぐに把握できる。

テストや補助簿などの得点も自動集計でき、重み付けや評価基準も設定できる。通知表は、出欠席情報や成績処理情報と連携できる。

掲示板やアンケート機能、メッセージ機能などのコミュニケーションツールの活用で、会議や打ち合わせの時間も短縮。学校自己評価なども行いやすくなった。

危機管理対策としては、情報のやりとりを双方向で行える緊急連絡用Webサイトを開設。学校HPの情報発信も強化した。

新しい校務支援システムについて教員は9割以上が「良かった」、そのうち5割以上が「大変良かった」と回答している。指導要録の電子化については、約7割の教員が、事務負担が大いに軽減したと回答。通知表作成にかかる時間は小学校で、年間1人あたり24・2時間、指導要録作成にかかる時間は20・1時間削減。中学校では、調査書作成にかかる時間が14・8時間、抄本作成にかかる時間が5・8時間削減。小中学校の年間平均で43・4時間が創出された計算だ。追加のアンケートは平成27年3月に行う。

教育の情報化に関する実態調査(文部科学省)によると、同市教員の「校務にICTを活用する力」は90・2%と全国平均77・5%を大きく上回っており、このほかの項目も全て全国平均を上回っている。

■県内トップのICT環境を整備

深谷市では、県内40市トップのICT環境を整備して活用し、授業改善につなげている。

ネットワークは教育用と校務用の2系統。現在、全普通教室に大型モニターと実物投影機、教員用タブレットPCを配備しており、小学校・中学校とも、平均で2時間に1回はICTを活用して授業を行っている。なおコンピュータ室のPCは今後、ハイブリッド型PCに入れ替えていく考えだ。プロジェクターやコンピュータ室の入れ替え、教員研修の充実、中学校特別支援学級を支援する「ふっかちゃんiサポート」にも取り組む。職員室にも大型モニターを配備して監視カメラの映像を確認することができる。

これからの教育の情報化は、教育の基礎・基本を踏まえつつ、時代の変化への対応が求められている。

子供たちに夢を与えるためには、時代の変化を読み取り、リードしていくことができる教員の存在が必要だ。そのためにも、校務の情報化を進めて効率化を図る。校務支援システムには適時・適切な支援のための指導カルテとしての役割が求められている。また、最先端の技術を活用した教育・授業の展開で、面白い、分かったという感動を与えられる授業を目指すことが、学力の向上にもつながる。(講師=深谷市教育委員会学校教育課・兵頭一樹氏)

【第20回教育委員会対象セミナー・東京:2014年12月9日】

【2015年1月1日】

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