教育委員会対象セミナー・名古屋 ICT機器の整備計画/校務の情報化

教員事務の効率化 9割が効果実感 南足柄市教育研究所 加藤徹副主幹兼指導主事

南足柄市教育研究所・加藤徹副主幹兼指導主事
南足柄市教育研究所
加藤徹副主幹
兼指導主事

パブリッククラウドで校務情報化

神奈川県西部に位置する南足柄市。同教育委員会は平成25年度から、校務の負担を軽減し、教員が児童生徒と向き合う時間を増やすため、校務支援システムを導入した。現在、教育委員会と市内9校の小中学校は、校務系ネットワーク、PC教室系ネットワーク、内部情報系ネットワークの3つのネットワークでつながっている。校務系ネットワークのサーバーは市役所のサーバ室に設置し、教員が職員室で作成した校務文書などはネットワークを通じてサーバーに保存。校務系ネットワークと同時に導入した校務支援システム・グループウェアはデータセンターに置かれ、日本初のパブリッククラウドとして稼動している。

通知表の誤記入防止に

平成23年11月、市内の学校において通知表の誤記入が発生した。その後、各学校は誤記入を防ぐため、今まで以上に多くの時間を通知表の内容確認に費やすこととなった。同時期、各学校に設置したサーバーをセンター化する計画が市の企画課で進んでいた。この計画にあわせ、誤記入対策として校務支援システムの導入を決定。

評価の客観性を高められる機能を備えた、クラウド型の校務支援システム「ティーチャーナビ」を採用。導入に向けて25年1月から12回にわたり各学校で研修会を実施し、同年4月から運用を開始した。

成績などをデータ化

教員の新たな負担にならないよう、前年度までの成績はデータ化せず紙ベースのままで残し、25年度の成績からデータ化。指導要録様式1(学籍に関する記録)はデータ化への対応が難しいケースがあるため、入学時に印刷して紙ベースで運用。指導要録様式2(指導に関する記録)と健康診断票は全てデータ化している。出席簿も一部データ化が難しいケースがあり、データ化したものを印刷し、必要に応じて直書きで追記しながら書面で保存している。

小学校の成績は素点入力ではなく成績一覧表からの対応とし、中学校は素点入力からの対応とした。小学校の通知表は近隣1市5町で統一形式を用いていたことから、その様式に従って対応。中学校の通知表は市内3校で異なる様式が用いられていたが、システム導入の際、学校の要望により共通化を図り、統一形式とした。さらに小学校のスポーツテスト6年間の記録や中学校のテスト結果通知表、進路指導関連資料などにも対応している。

指紋認証USBで自宅で安全に作業

全ての校務を学校で処理することは難しい。そこで、教員が自宅で作業が行えるシステムとしてテレワークを整備。自宅で作業を行う際のセキュリティ強化に指紋認証専用USBキーを学級担任と教科担任に配布した。USBキーを教員が自宅のPCにつなぎ指紋認証を行うと市役所のサーバーに接続される。USB本体やCD‐ROMなどへのデータ保存や印刷は行えないように制限。自宅のPCのウイルス対策が最新の状態かどうかも、USBを挿した時にチェックされ、問題がある場合は警告が表示される。

9割が事務の効率化を実現

小規模自治体であることから教員との連携が密である。教育研究所の元小学校の指導主事と、元中学校の教育指導員を中心に、市内の小学校や中学校の教員と協力しながらシステムを作り上げ、教育現場で活用されるシステムを実現した。校務支援システム導入1年後に実施したアンケートでは、89%の教員が「事務を効率化できた」と回答。しかし、「授業準備・教材研究の時間を増やすことができた」(47%)、「子供とふれあう時間を増やすことができた」(48%)など、児童生徒と向き合う時間の確保という導入の目的は未達成である。依然として教員の負担感はあり、その課題を解決すべく「成績処理機能の充実」や「進路関係機能の整備」を実現するなど、引き続き事務の効率化を進めている。(講師=南足柄市教育研究所・加藤徹副主幹兼指導主事)

【第22回教育委員会対象セミナー・名古屋:2015年2月13日】

【2015年3月2日】

 

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