教育長に聞く〜未来の学びを築く―古河市 佐川康二教育長

古河の教育をもっと面白く

タブレット端末計1421台を整備

茨城県古河市佐川康二教育長
茨城県古河市佐川康二教育長

古河市(茨城県)の「教育の情報化」が本格的なスタートを切る。平成27年度は小学校3校に「1人1台端末環境」を、それ以外の20小学校には各校40台のタブレット端末を整備。さらに教育ICT指導教員を小中学校32校で育成する。今年度整備されるタブレット端末は、予備機を含め1421台だ。「新しい古河を作っていきたい」と語る佐川康二教育長に今後の計画とその意図を聞いた。

1年半前の教育長就任当事、教育の情報化に関わる予算は経常的経費が大部分を占め、新規導入の予算は乏しかったが「やる気があれば復活する」といわれた。そこで「新しい古河の教育」を目指し、平成27年度の「1人1台のタブレット端末活用」本格実施に向けて平成26年度は、大型ディスプレイ、実物投影機などを小学校全校(各学年に1台・単学級の学校には2学年に1台)に整備して教員がICT活用に慣れる期間とした。同時に「古河市の小学校は平成27年度から画期的に変わる」と伝えていった。

通信モジュール搭載モデルを整備

平成27年度整備のポイントは、タブレット端末を無線LANモデルではなく、通信モジュール搭載モデルとしたこと。それに伴い通信環境が重要になるため、キャリア業者の選定を先行した。

また、サーバなしで活用できるクラウドサービスの支援として、授業支援アプリやモバイル端末管理サービス(MDM)、情報共有プラットフォーム、学習管理システム(LMS)、オンライン講義サービスなども活用していく。デジタル教科書も小学校国語・算数を配備する。

タブレット端末が通信モジュールを搭載していれば、学校や家庭、校外学習で自由にタブレット端末を活用でき、GPS機能で居場所も分かるようになる。古河市のネットワーク状況から試算すると、サーバ管理や無線LAN環境整備などの人的金銭的コストの削減が実現する。また、通信キャリアを選定するプロポーザルの副次的効果で、市内全体の通信環境の向上にもつながることが期待される。

いつでもどこでも活用できるので、音声による宿題も可能になる。音読や笛などの楽器練習を自宅で行い、それをタブレット端末で録画して提出するということも可能だ。これにより、自宅での取組がより熱心になることが期待できる。

1人1台環境を3校に重点整備

古河市では小学校3校を重点整備校として、教員用端末と児童用端末の1人1台環境を整備する。重点整備校での目標は、アクティブラーニングの実現による授業の質の向上だ。効果測定については、古河市独自の質問調査のほか、全国学力学習状況調査結果などを活用していく。

これ以外の20校には、グループ2〜4名が4クラス同時に活用することを想定して児童用タブレット端末40台を整備。大型ディスプレイなどの提示機器と連動して活用できるので、教員用タブレット端末としても活用できる。いずれも充電保管庫やプリンターも整備する。

さらに、「教育ICT指導教員養成用」として、10台のタブレット端末と充電保管庫、プロジェクター、プリンターをセットにし、小中学校32校から公募により選考された15名に貸与する。教育ICT指導教員は4月に公募して決めることで、積極的な取組を後押していく。これは毎年15人ずつ増やして生きたいと考えている。また、アドバイザーとして中川一史教授(放送大学)に依頼している。

これら3方向の取組により、授業、そして学びが変わり、子供が変わり、地域が変わっていく。同時に、将来的なBYOD活用の必要性を地域や保護者に訴求できるのではないかと考えている。

学校・家庭の連携で学力向上を検証

古河市、慶応義塾大学、凸版印刷との協働により学力向上についての実証研究も行う。通常整備とは別に3校の3学年計6クラスを対象に1人1台のタブレット端末(通信モジュール搭載モデル)を検証用として整備し、凸版印刷が提供する「やる気応援システム(仮称)」を活用。これは家庭学習における児童の「がんばれる力」を醸成していく仕組みづくりを想定した教材だ。タブレット端末を家庭に持ち帰り、児童が自分で学習目標を立て、学校の学習と紐付けした内容のドリルなどに取り組み、自動採点、そのつまずきに応じた教材を提供するもの。児童のがんばりを教員が把握できる学習履歴機能もあり、声がけの素材にもなる。実証研究は、3年生算数「割り算」「小数」で行う。

【2015年4月6日】

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