昼休みにPC室を開放<丸亀市立郡家小学校>

自由な活用で自律を支援

丸亀市立郡家小学校(高橋佳生校長・香川県)では、昼休みにPC室を開放しており、毎日のように児童が集う。PC室の自由な活用が、授業にも良い影響を与えているという。同校のPC室にはタブレットPC40台とキーボードが設置されており、タブレットPCの普通教室での活用も始まっている。

丸亀市立郡家小学校
昼休みの自由な活動が学校全体のタブレットPC活用を後押し

情報の分類から”考える力”育む

昼休みのベルが鳴ると、PC室に児童が集まってきた。机に座ってキーボードを使う児童、中央のじゅうたんスペースに輪になってタブレットとして活用している児童と様々で、漢字ドリルや迷路などに取り組んでいる。紙を取り出して「ひみつのあんごう」を入力している児童が取り組んでいるのは、昨年末から同校で活用を始めた教材アプリ「ポケタッチ」だ。これは、キーボードやマウス、タブレット活用のトレーニング、アルファベット学習、ローマ字入力のほか、700種類以上あるポケットモンスターの性質を表やベン図を使って分類することで自然に「情報の分類」を学べるアプリだ。児童は、ポケモンの性質を参照しながらマトリクスやベン図に分けていく。すばやく分類している児童、間違えないようにじっくりと分類している児童もいる。PC室にあるタブレットが足りず、何人かで順番に取り組んでいる児童もいる。

PC室の開放を進めているのが、同校の増井泰弘教諭だ。

タブレットPCで分類する子供たち
楽しみながら分類・整理する力を育む

ICTを活用したアクティブ・ラーニングが求められているが、「児童にタブレットPCを自由に活用させることに、抵抗感や不安を抱く教員も多い。PC室の開放は児童の自由な活用につながり、児童が楽しく活用する様子を日常的に目にすることで、タブレットPCが学校に道具として馴染み、教員は安心して活用を進めやすくなる」と語る。

同校は児童数が多い。そこでPC室が混雑しすぎないように様子を見ながら、昨年は学級ごと、学年ごとに使用できる曜日を決めていた。今年は自由に開放しており、各クラスに持ち込んでの活用も進んでいるという。

自ら学ぶ授業を短時間で展開
 6年社会科

児童は、ベン図やマトリクスなどによる「情報の分類」を「初めてのPC室」という授業や昼休みなどで「ポケタッチ」などの活用を通して経験している。「情報の分類」に親しむことは、通常の授業にどのような影響を与えているのか。

図屏風校
図屏風を手分けして観察・分類・整理
内容を整理
発見した内容を整理してまとめる

6年3組の社会科では現在、江戸時代の学習に取り組んでいる。この日は県立ミュージアムから借りてきた「高松城下図屏風」のレプリカをグループに配布して、武士や町人、町の様子を観察して分類、発表した。

児童はグループごとに屏風絵を観察。KJ法で気づいたことを付箋に記し、「まなボード」に並べ、分類・整理していく。あるグループは、3分類から次第にマトリクスとして整理が進んでいた。

社会科の授業を担当する増井教諭は「今トライしていることは、テーマを与え、教科書や資料集、資料などを使い、調べて発見・整理・分類・まとめて発表していく流れを短時間で行うこと。自ら発見してそれを伝え合う授業展開が常態化することで、アクティブ・ラーニングにつながっていく」と話す。「ベン図やマトリクスを使うことで、児童自らが答えを導きやすくなる点が面白い。ポケタッチなどの経験から情報を分類・整理し、ベン図やマトリクスでより見やすく伝えやすいまとめができることにも気づき始めているようだ」
まだ活用は始まったばかりだが「ポケタッチなどの情報を整理するソフトを使いこむことで情報の分類が身近になり、見通しをもった迅速な分類・まとめやそれに伴う発見が可能になるはず。児童の今後の成長が楽しみ」と述べた。

マトリクスで話し合いを活性化
 4年学級活動

「友達の意見に感想を言うことは、たまにできているけど、あまり言えません。恥ずかしいからです」「すぐにありがとうはいえないけれど、少したつと言いやすくなり、言うと心がすっきりします」‐‐「いいたいことがある人」が一斉に立ち上がり、進行役なしで順番を譲り合いながら途切れなく発表が続いていく。

郡家小学校 学級活動
学級活動でも表整理を活用

4年2組の学級活動では、「生活を振り返ってもっとよい学級にしよう」をテーマに話し合いが進んでいる。
児童は「1日の始まりにあいさつをする」「相手の話を真剣に聞いて質問や感想を伝える」「友達のよいところを見つけてありがとうと伝える」の3つについて、「やったほうがよい」「よくない」「できている」「できていない」の表から自分が位置する場所を選び、その理由を書く。次にグループ内でその表を交換して、質問や意見を付箋に書く。児童は友達の質問に回答することで、自分の考えを明確にしていった。

担任で授業者の川田剛教諭は、授業の一部で何度か「ポケタッチ」に取り組んでいる。ベン図やマトリクスの理解があいまいであった児童も体験により、定着が進んだという。

「思考ツールの中でもベン図やマトリクスは使いやすい。話し合いを可視化して伝えやすくなるので、問題点を明確にして解決に向かうために活用している」と話す。

同校では、児童が楽しみながらアクティブ・ラーニングへつなげる仕組みが定着し始めており、ICTはそれを下支えしているようだ。

JAET大会で発表

同校での実践を踏まえ、増井教諭はJAET富山大会で「ポケタッチ導入によるTPCの基本的操作の習得と情報を正しく分類する力の育成」をテーマに研究発表を予定している。

( 2015 Pok mon. 1995‐2015Nintendo/CreaturesInc/GAME FREAK inc.)

 

【2015年10月5日】

関連記事

 

↑pagetop