8自治体首長がICT宣言<ICT教育全国首長サミット>

11月11日、最先端のICT教育に取り組む市区町村の首長がつくば市に集まり、自治体と教育委員会による初のサミット「ICT教育全国首長サミット」が開催された。参加した首長は、福島県郡山市・品川萬里市長、E城県つくば市・市原健一市長、東京都荒川区・西川太一郎区長、長野県下伊那郡喬木村・市瀬直史村長、大阪府箕面市・倉田哲郎市長、佐賀県多久市・横尾俊彦市長、佐賀県武雄市・小松政市長、熊本県山江村・内山慶治村長。サミット終了後、発起人のつくば市・市原健一市長は文部科学省生涯学習政策局長の河村潤子氏に「ICT教育全国首長サミット つくば宣言」を手渡した。

ICT教育全国首長サミット開催

ICT教育全国首長サミット
河村潤子・文科省生涯学習政策局長に「ICT教育全国首長サミットつくば宣言」を手渡すつくば市・市原市長

「ICT教育全国首長サミット つくば宣言」の内容は、行政と教育委員会が連携してICT教育などの教育水準の向上と魅力あるまちづくりを目指すこと、子供たちがわくわくしながら主体的に参加できる楽しい授業が展開できるためのICT環境整備と教員のICT活用指導力の向上に努めること、情報モラルを身につけた活用を促進していくことなど。

河村潤子局長は「今日の大きな発見は、ICTを推進する首長が皆、チャーミングな方ばかりであるということ。教育の情報化を推進するための年間約1700億円の地財措置を各自治体は活用・推進し、周囲に広げてほしい」と取組を後押しした。

同サミットは、11月10日、12日の2日間にわたりつくば市で開催された、タブレット端末や電子黒板など様々な先進ICT(情報通信技術)を活用した教育をテーマとした教育研究大会において初日に実施されたもの。
この研究会はつくば市が学校ICT教育を推進してから40周年を迎えることを記念して開催。両日で2400名以上の来場者があった。

 

8自治体の首長が集結

特別支援でプレゼン授業
 福島県郡山市 品川萬里市長

今年度、新たに全小中学校に1学級分のタブレットPCを導入しており、8月から運用をスタート。教員は「授業の幅が広がり、児童がイメージをもって活動しやすくなった、児童の学習状況をすぐに把握できる」、児童からは「前よりもわかりやすい」、特別支援の担当教員からは「障害特性に合った授業を工夫しやすい」という声が届いている。特別支援では、プレゼンをお互いにカメラ機能で撮影し合い、その映像を皆で見るという形式のミニプレゼン大会を行っており、身を乗り出して友達のプレゼンを視聴している様子に、うれしくなるほど効果がある、というのが実感だ。

今後は子供の貧困対応や高齢者サポートなど、様々な活動や可能性を試していきたい。

プレゼン大会で力を育む
 茨城県つくば市 市原健一市長

40年前からICT教育に着手しているつくば市では、教育日本一を目指し、様々な活動を展開・継続中だ。電子黒板も全国に先駆けて導入。電子黒板によるプレゼンテーション大会の成果は目覚しい。小学校間での交流や小中での交流・連携などでテレビ会議も活用。

公立学校初のEラーニングシステムを導入して学校や家庭での学習連携を実現。個別学習の仕組みも充実を図り、いつでもどこでも自分の進度に合わせた学習を展開している。

日本一の教育とは「素晴らしい教育を受けた」と子供たちが実感すること。夢や感動のある楽しい学びを目指したい。

1人1台整備は日本初
 東京都荒川区 西川太一郎区長

1人1台のタブレットPC配備の実現は日本初。議会交渉が最も大変であった。教員のICT活用能力を1年間かけて取り組み、議会を説得した。現在、MITの子供向けプログラムを受けられるように準備中。

図書館の蔵書数は圧倒的な数を誇っており、全校に司書教諭を配備。調べ学習のサポートを行っている。

人口減対応でICT活用
 長野県喬木村 市瀬直史村長

小学校2校、中学校1校で文部科学省「人口減社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上事業」に取り組んでいる。

アクティブ・ラーニング教室を整備して遠隔テレビ会議システムを常時接続し、2小学校で遠隔によるグループ討論や協働学習、中学校と連携して中一ギャップを解消する。

小規模校が統合せずに教育の質の維持向上に挑むことで「教育による地方創生」と地域の魅力化に取り組む。

常時接続で海外と交流
 大阪府箕面市 倉田哲郎市長

箕面市では小中学校及び小中一貫校全20校に電子黒板を計554台、タブレットPCは中学校1校に120台、小中一貫校1校に350台を配備している。倉田市長は様々な取組から、全国に広げていきたい事例について紹介した。

第一に、小中一貫校の廊下に設置した大画面モニターを姉妹都市ニュージーランドの学校とスカイプで常時接続すること。時差がないため、朝や昼休みなど、子供同士が日常的に自由に交流しているという。

小学校1年生から学級担任により英語教育に毎日取り組んでいるが、この取組を可能にしたのは全教室への電子黒板配備だ。動画教材の活用が毎日の授業をサポートしている。

現在ドリームスクール事業で中学校に配備している生徒用タブレットPC120台は、学習塾のコンテンツを活用して放課後学習の実証研究に着手している。

また、「箕面ステップアップ調査」として毎年、学力・体力・生活状況を調査。教員の指導力を経年比較して客観的に分析することで、経験と勘による教育からの脱却による教員の指導力強化に取り組む。

市内全校を小中一貫化
 佐賀県多久市 横尾俊彦市長

平成25年から10校を3小中一貫校に統廃合して市内全校で一斉に小中一貫教育化を図り3年目。タテのつながりが生まれている。孔子の里でもあることから、論語カルタによる取り組みで小学生でも100の論語を暗唱できる。

現在、朝の10分間でタブレットPCを活用した漢字・計算の個人学習の実証実験に3校で取り組んでいる。
 「人づくりは日本の大きな課題。ICTリテラシーを持ち、学力・人間性を高める教育に取り組んでいく。新しいICTの導入時にはICT支援員は必須」と述べる。

教員の達成感が増した
 佐賀県武雄市 小松政市長

2年をかけて全市立小中学校に1人1台のタブレット端末(小学校11校3153台、中学校5校1550台)を配備。最先端のICT教育を目指して武雄式反転授業「スマイル学習」やプログラミング教育などに取り組む。

「1人ひとりの進度に合わせるためには1人1台のタブレットは必要。ICTスキルアップセミナーで教員同士の研鑽が進んでいる。実践をスタートしてから1年を過ぎて、教員の多忙感が減り、達成感が増した」と報告した。

過疎債でタブレット整備
 熊本県山江村 内山慶治村長

10年間のビジョンを持った取組を展開。児童生徒数は全380名(小学校2校、中学校1校)で、過疎債(教育施設の場合通常1/2→特例5・5/10)が発行されることもあり、整備に活用している。

電子黒板、実物投影機、無線LANは全教室に、タブレットPCは小学校低学年2〜4人に1台、小学校3年生以上と中学生に1人1台を配備。ICT支援員は村費で配備。

学力は毎年伸びており、特にB問題は全国平均よりも顕著に高い。

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1977年、つくば市立竹園東小学校で、日本初のPCを活用した学習に取り組んだ信州大学の東原義釧教授は「町起こしを目的に日本全体の先陣を切る思いで取り組んでおり、ビジョンや根拠となるデータが明確。この貴重なデータを全国で共有して日本全体を活性化していきたい」と述べた。

 

【2015年12月7日】

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