教育改革国際シンポジウム<国立教育政策研究所>

"グローバル"を意識した
小学校英語教育を行う

吉田研作教授
上智大学言語教育
研究センター長
吉田研作教授

平成27年度教育改革国際シンポジウム「初等教育段階における英語教育を考える〜グローバル人材の育成に向けて〜」が1月19日、文部科学省で開催された。主催は国立教育政策研究所。当日は、台湾、タイ、フィンランド及び日本におけるグローバル人材育成と小学校における英語教育について報告した。

"ノンネイティブ英語"で
"言葉の壁"を取り払う

上智大学言語教育研究センター長の吉田研作教授は「初等教育段階における英語教育」について、「小学校の先にある中学校や高校との接続を考慮して考えるべき」と指摘。高校生や社会人における英語の意識調査の結果を示し、「日本人の内向き思考と英語を使うことへの自信のなさ」の克服を小学校から着手しなければならないと述べた。

高校生の3か月以上の留学数が過去最も多かったのは、平成8年の2707校・4481人だ。平成20年度・約1643校・計3208人の過去最低記録を境にこの数は若干上向いており、平成25年度時点は1879校・3897人。私立学校の生徒留学数は平成8年当時を超えた。しかし平成8年当時公立学校の留学生徒数は2000人を超えていたにも関わらず、現在は半数程度と、公立学校の留学の激減ぶりが目立つ。

日本の高校生が「留学したくない」、社会人が「海外赴任したくない」ことの理由の最も大きな壁が「言葉の壁」だ。吉田教授は、言葉の壁を打破するヒントの1つが「ノンネイティブの英語」であるとする。

日本人の多くは「ネイティブ」のような完璧な英語を目指す。「ノンネイティブ」の発音を聞く機会は少ない。しかし「ノンネイティブ」に触れたことがある人は英会話にポジティブな考え方を持っていると語る。

この傾向は英語教員も同様だ。教員研修旅行では、英語教員でない人ほど英会話を積極的に行い、英語教員は自身が英語教員であることを隠すほど「完璧な英語を話せなければいけない」という気持ちが大きいという。

一般に英語音声教材はネイティブの音声を録音したものだが、あえてノンネイティブスピーカーが録音したものを授業で使ったところ生徒は日本人として英語を話すことに自信を持ち、英語によるコミュニケーションも増えた。相手に通じることが大切であり、「自分の英語に自信を持つことが日本人の内向き思考を直し、留学者を増やすためには重要」と指摘した。

 

【2016年4月11日】

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