教育委員会対象セミナー・札幌 ICT機器の整備計画/校務の情報化

11月10日、札幌コンベンションセンターで第35回教育委員会対象セミナーを開催した。北海道での開催は初めてであったが、51市町から124名が参集した。次回以降の教育委員会対象セミナーは、12月7日に東京・KFCホール、1月25日に福岡・天神クリスタルビルで開催する。
セミナー日程は教育家庭新聞Web (www.kknews.co.jp)へ

次期学習指導要領とICT環境整備 東北大学大学院・堀田龍也教授

新しい学びの実現で学習規律が一層重要に

【講師】東北大学大学院・堀田龍也教授
東北大学大学院
堀田龍也教授

現在、文部科学省「学校におけるICT環境整備の在り方に関する有識者会議」ほかの座長を務める堀田教授は、次の学習指導要領を踏まえながら今の学習指導要領で何に取り組むべきかについて講演した。

ICT活用は拡大提示から

ICT活用はかつて、得意な人が特別な教室でチャレンジするものであった。それが今や、すべての教員に求められる「素養」になった。これは、「すべての教員が実践できるICT活用」が求められているということであると語る。

「すべての教員が実践できるICT活用」の1つが実物投影機の活用である。これを使えない教員は見たことがない。ICTを活用したことがなくても研修がほぼ不要で活用できる。ということは、「大きく映す」ICT活用をすべての教員ができるか否かは、設置者の環境整備次第であるということ。黒板の設置同様、実物投影機の設置は学校の設置者(小・中学校の場合,その多くは区市町村)の仕事である。

臨機応変に「大きく見せる」機能を授業に導入することで、学校が大きく変わった事例は数多い。これまで点数が取れなかった子供が理解しやすくなる、発表しやすくなることで、教室に落ち着きが生まれる。低位が伸びると平均点はすぐに上がる。導入の第一歩として説明責任を果たしやすい。

より効果的に活用するためには、何を映して次に何をするのか。ICTのメリットを上手く取り入れることができる授業力が必要だ。大きく見せて疑問を投げかける、一部だけを隠して興味関心を持たせる、実験などをやって見せて考えさせるなどの展開が考えられる。

普段から学習している子ほど、ICTを活用すると学力が伸び、普段の授業構成がしっかりしている教員ほど、ICTを活用するとより良い授業になる、というのが「ICT活用の大前提」。ICT活用で成功している学校の共通点は、学習規律を徹底していること。ICT「だけ」で学力が向上するのではない。ICT「も」うまく使うことができて、より一層の学力向上につながる。

反転学習も同様で、自宅での学習習慣がないと効果を得にくい。今まで以上に学習習慣の確立や学習規律の徹底が必要な学びが、今後一層求められているということだ。

学力とは積み上げモデルである。知識・技能などを活用して思考力・判断力・表現力を育む活用が求められているが、まずは知識・技能の習得が重要。ドリルなどの個別学習や実物投影機は、この基礎力の習得に効果を発揮する。

次の学習指導要領については中教審が現在諮問中で、近日中に答申が出る予定である。さらに3月頃には次の学習指導要領が公開される。

ICTで追究や共有を円滑に

審議中に最も頻繁に出てきたキーワードは「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」。身に付けた知識をどう活用していくのか。一方通行ではなく多様な学び方をしていくことで何ができるようになるのか。そこで出てきた手法の1つがアクティブ・ラーニングだ。追究型の学習や議論を通した対話的な学びにより、より主体的な学びを実現していく。追究や共有を円滑にするためのICT活用であり、アクティブ・ラーニングを実現しやすくするツールとして学習者用情報端末が必要とされる。次の学習指導要領は、ICT整備を前提とした内容になるということだ。

整備状況は自治体により大きな差がある。導入の指針を策定するため、11月にICT整備指針を考えるための「学校におけるICT環境整備の在り方に関する有識者会議」が開始した。求める学びのスタイルによってどんな整備が必要かを具体的に示す。

校務の情報化で新しい学びに備える

校務の情報化は、一元化して合理化、円滑に事務を進めることで評価の質を上げていくことがポイントである。

基礎基本を習得しながら学習内容を深く理解して活用する、という学びを展開し、1人ひとりを把握するには、カリキュラムマネジメントを見直さなければ実現は難しい。そのための校務支援システム活用が求められる。

教員の業務は標準化されておらず、今後一層、様々な専門家と共に取り組むことになるが、現在の体制では業務は増えるばかりである。学校経営のインフラとして校務の情報化を考え、自動化やチーム化を図り、上手く使って学校経営を進める、という共通理解が求められる。

では校務支援システムで何が自動化できるのか。

例えば子供の名簿を年度初めに入力すると、兄弟かどうかが自動的にチェックされる。連続欠席すると、アラートが出る。若手や中堅、管理職や養護教諭それぞれが持つ情報を共有することで迅速な対応が可能になる。校務支援システムの質や機能はとても重要である。道では、全国的に導入されている定評のある校務支援システムに変更する方針で進んでいる。

【講師】東北大学大学院・堀田龍也教授

 

【第35回教育委員会対象セミナー・札幌:2016年11月10日

【2016年12月5日】

1、北海道教育委員会・工藤雅人主査2、札幌市教育委員会・情報化推進担当・伊藤彰英係長
3、東北大学大学院・堀田龍也教授/4、千歳市立勇舞中学校・大西智彦主幹教諭
5、千歳市立信濃小学校・林克哉教諭

 

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