連載 教育ICTデザインに想いを込める

【第8回】ネット利用低年齢化への対応<促進協議会特別会員 桑崎剛氏>

ネット利用の低年齢化が加速
保護者にも情報モラル教育を

促進協議会特別会員 桑崎剛氏
熊本大学講師 桑崎剛氏

平成22年に登場したスマートフォン。その普及率は右肩上がりで推移し、26年度末の国内の世帯保有率は64・2%に達している。年代別に見ると、20歳代で88・9%、30歳代で79・0%、40歳代で64・6%と高い割合だ(総務省「平成26年度通信利用動向調査」より)。この世代は子育て世代の中心でもある。日常の育児や子供との関わりの中でスマートフォンを活用する機会が増えているとともに、問題点も指摘され始めている。これらの問題に詳しい安心ネットづくり促進協議会特別会員の桑崎剛氏に話を聞いた。

情報機器やネット利用の低年齢化の実態をつかむ

内閣府が毎年行っている「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、青少年のインターネット接続機器で最も多いのはスマートフォンの44・8%、次いで携帯ゲーム機43・4%だ。近年は、高校生や中学生のみならず小学生にもスマートフォンが普及してきている。この調査でいう青少年とは、調査時の満10歳から満17歳が対象。その下の年代については実態がつかめていない。

最近よく寄せられる声に「外出先で子供に自分のスマートフォンを利用させる保護者をよく見かける」「小学1・2年生でも携帯ゲーム機でネット動画を視聴をしている」「子守の道具としてスマートフォンやタブレット端末を活用している場面を目にする」というものがある。こうした実態を裏付ける低年齢の児童や幼児、その保護者を対象とした調査が少ない。予想以上に早いスピードで低年齢化しているという肌感覚をデータとしてもつかみ、対応を検討しなければならない時期にある。

有効な啓発のために

より良いインターネット利用環境の普及・促進を目指し活動している「安心ネットづくり促進協議会」では、この秋から「ネット利用の低年齢化サブワーキンググループ」が立ち上がり、こうした問題の検討に着手し始めた。

参加メンバーは、総務省等の関係省庁、携帯電話事業者、フィルタリング会社、弁護士、PTA関係者、情報モラル啓発団体、主婦の団体、スマホアプリ開発会社、幼児教育や教育心理学の有識者など多様だ。

それだけ関心が高く、問題が多岐にわたることの表れだと感じる。

そのグループリーダーとして、今年度中に調査分析を行って現状を把握していく。

有効な対策や啓発方法を検討して来年度より実行していきたい。

これからのICT環境と情報モラル教育

低年齢化の問題が指摘される背景には、保護者世代へのスマートフォンの普及が挙げられる。保護者が高校生や大学生の時代、情報モラル教育はほぼ実施されていなかった。十分な教育を受けないまま社会に出ている可能性が高い。また家庭用ゲーム機が普及したゲーム世代でもある。子供だけではなく保護者もゲームに興じるケースも少なくない。

今、国内の学校では1人1台の情報端末の整備などが進められているが、子供だけではなく保護者も共に考えるような情報モラル教育に移行していくべき時期である。生活の中で情報機器やインターネットを利用していることを踏まえ、学校だけに限定せず、多様な活動場面の中で適切な情報活用能力を育むようなICT環境の整備と活用を検討しなければならないだろう。

子供と保護者、学校や啓発団体などが一体となって考えながら、賢い利用者となる視点を持った情報機器の活用や情報モラル教育、それらを支えるICT環境整備を進めてほしい。

 

【2015年11月2日】

 

<<第7回へ 第9回へ>>

関連記事

↑pagetop