子どもの心とからだの健康@
高脂血症、脂肪肝の子が増加

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 「成人病」(生活習慣病)は、高血圧性の疾患や糖尿病などさまざまですが、最近では小、中、高校生もその予備軍だと言われています。今回は品川区東大井町にある小澤医院の院長で昭和大学医学部兼任講師の、医師小澤正博さんにお話を伺いました。先生は幼少時、育たないといわれたほど身体が弱かったのですが、ご両親の頑張りで今の姿があると言われます。その原点を胸に、1日に100人の子どもたちを診ておられます。

【現状と対策】
−−子どもにみられる成人病とはどのようなことでしょう?
小澤 コレステロールがたまる高脂血症の子が増えたり、高校生で脂肪肝の子が多いことです。また、昔は痛風といえば大人か大学生でしたが、今は小学6年生から中1の子にもみられます。腎臓結石は中1位の子からいます。
−−なぜ、そのようなことがおきているのですか?
小澤 厚生省の考えでは、成人病のことを「生活習慣病といいたい」とのことですが、子どもの場合は、そう呼ぶには微妙な問題がたくさんあります。
−−それはどういうことですか?
小澤 親からの体質遺伝があることです。祖父、父、息子、また祖母、母、娘という縦系列で体質、疾患が伝わりやすいのです。例えば祖父や父が糖尿病のとき、その息子は予想以上に太りやすい。そういう子が7割はいます。太れば食べたい、食べると太る。すると動きが悪くなり、体を動かすのがおっくうになって、スポーツなどをしなくなるのです。そういう子は糖尿病になる素因を持っているということです。そのすべてが発症するわけではありませんが。
 また、コレステロールがたまる高脂血症にも家族的な特徴がみられます。コレステロールがたまるとなぜ悪いかといいますと、血管が詰まりやすくなり、心筋梗塞とか脳梗塞を起こしやすいのです。
−−その他の原因は?
小澤 戦前の日本は家父長制度の下で、お父さんだけがおいしいものを食べていた。ところが今は幼児が寿司でもイクラでも食べられる時代。コレステロールがたまりやすいし、肥満につながります。
−−コレステロールに気をつけるには?
小澤 コレステロールがたまる第1の原因は卵のとりすぎです。今の時代、卵を1個食べると、3個食べることになります。鶏肉は卵白と卵黄の成分を持っていますし、普段食べるものに卵が入っていますから、卵をとりすぎてしまうのです。こんなに食べていれば、いくら薬を飲んでもコレステロールが減るわけがないです。
−−他に体に良くない食品は何ですか?
小澤 塩分のとりすぎですね。大人の場合、塩は1日10グラム以下がいいのですが、今は20グラムどころか30〜40グラムになっているのが現状です。塩に含まれるナトリウムは血圧を上げる作用があるので、血圧の高い人は塩分を減らすように言われます。

【対策】
−−−成人病予備群にならない対策は?

小澤 体質が伝わることについては、家族の体質傾向を把握すると健康を守る上で役立ちます。私は母子手帳にその人の病歴、家族歴などを書き込むのと共に、長年、「一生一カルテ」方式をとっています。これによって体質や疾病の家族的な特徴がわかり、診察や治療に生かせます。
−−−生活についてはどうでしょう?
小澤 まとめていいますと、【親子共によく歩き、動き、楽しくバランス良く食べ、夜1度に大食せず、ワンパターンの食事でないよう気をつけ、塩分をほどほどに】などです。また、糖分もとりすぎると余分の糖は中性脂肪になり、コレステロールと一緒に脂肪肝になります。今の高校生には多いです。
−−−日常的な食事の注意はありますか?
小澤 たとえば、朝にパン、バター、チーズを食べてコーヒーや果汁をとると、発酵しやすい食品ばかりですから、おなかが張ります。ガスが抜けた後はドカ食いになりますし、おなかが張りやすい人は、朝食はパン食より、葉ものをとり入れた和食の方がいいでしょう。
 また、3食のバランスが大事で、朝食抜きは胃酸の出方を狂わせ、胃炎などの胃の痛みにつながります。朝食の量を多く、昼食は中位、運動をしない夜の食事は少なく、というのが体のためにはいいです。ところが小、中、高校生はおやつにケーキ、塾に行って帰ってくるとドカ食いになり、寝る前には果物など、食事のバランスがいいとはいえません。若いですからちょっと気を付けると検査の数字は良くなりますが、そうした生活が続くと、素因があればなおさら成人病の状態に近づくことになります。
【心身症】
−−−先生は心理学を重視した診療をなさるということですが。

小澤 私は小児神経科をやっていた時代があるのですが、「心身症」を子どもの成人病に入れたいと思います。学校でいじめがあっても告白できるのは高2以上で、学校に行きたくないのを腹痛やふさぎ込む形に変えていることもあります。私がそういう子の診断書を書く時はいじめのことは書かず、「学校生活の中で相当ストレスは感じているようですが、先生の明るい誘導で本人が元気をとりもどすことでしょう」というように、学校側が早期に是正しやすいよう、方向づけをします。また、私はアレルギーでも風邪でもストレス症の子でも、その子が兄弟の何番目かを聞きます。一般に、母親は第1子には禁止語を使って規制してしまうので、子どもは考え方に融通がきかないことが多い。第2子は規制されずに育つので、ワイルドだが、第1子のまじめさが足りない。このように、同じことを言っても兄弟の何番目かによって物事の受け取り方が違いますから、対応も変えています。人の心理には嫉妬もあれば、兄弟間の葛藤もある。人間の永遠の難しさは心理や宗教の問題だと思いますね。医学部の勉強には人間学がぜひとも必要だと思います。
 (参考著書「子どもを大病から守る本」学習研究社「大病させずに子育て上手になる本」朝日ソノラマ)
(教育家庭新聞2000年1月15日号)