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2校が参考となる事例を紹介
意義と問題点を探る
埼玉県修学旅行研究発表会

 ただ観光施設を見て回るだけでなく、体験学習に結び付くような、新しい修学旅行のあり方が求められている。そこで、修学旅行の意義と問題点を研究し、改善や向上することを目的に、12月7日、(財)日本修学旅行協会主催による「平成16年度埼玉県修学旅行研究発表会」が、浦和の埼玉会館で行われた。



 当日、研究発表を行ったのは、吹上町立吹上北中学校と埼玉県立松山高等学校の2校。発表に先立ち、日本修学旅行協会の剣持文雄理事は、「修学旅行が多様化している中、学校では修学旅行の情報を求めている。そのことからも今日の研究発表には期待している」とあいさつを行った。

 吹上北中学校のテーマは「生徒の自主的、主体的な活動を高める旅行的行事」で、発表を行ったのは秋池功校長と新井龍也先生。同校の平成15年度の修学旅行は、4月22日から24日の2泊3日で、行き先は京都・奈良。学年が上がってすぐの修学旅行だったこともあり、その準備も大変だったという。

 あくまでも生徒の主体性を生かした修学旅行にしようということで、吹上駅から東京駅までの移動も班行動を取らせていった。この修学旅行に至るまで、2年生の時点で、それぞれの生徒から個人プランを提出させて、生徒から選ばれた実行委員が指導、さらに先生がチェックした上で、その個人プランをもとに班行動が決められていった。

 2日目の京都見学は、「念仏寺」、「源光庵・金閣」、「大原・銀閣」、「平等院」の4つのコースを設定。生徒はそれぞれのコースに分かれて班別行動をとった。こうした班別行動を中心としたのは、生徒の意欲を高めるためで、宿舎に自分の足で戻るのことは京都の位置関係を知ることにつながり、お決まりの班行動ルートの改善にもなる。

 そして、修学旅行の意義を深めるために、総合的な学習の時間との連携も行われた。2年生の時の総合的な学習の時間では、「日本の伝統文化を学ぶ」をテーマに、ビデオを鑑賞したり、校長先生自らが2回に渡り講演を行ったという。

 松山高等学校の研究発表テーマは「震災学習を盛り込んだ修学旅行」で、発表を行ったのは、水野潔校長と黒田勇輝先生。まず同校の映像制作部が手がけたドキュメンタリー「何処へ行く?修学旅行」が上映された。この作品は埼玉県放送コンテストで2位を受賞しており、全国の高校に修学旅行についてアンケートを実施したり、様々な人にインタビューを行った様子が撮られている。

 そんな松山高校が平成15年度の修学旅行において取り入れたテーマが震災学習。修学旅行の行き先が神戸を含む関西方面に決定したことを受けて、阪神淡路大震災について学ぶこととなった。学習係により綿密な学習指導計画が立てられ、修学旅行に行く前に、震災に関するビデオ視聴や全体講義などが行われた。

 そして、修学旅行先では、北淡町震災記念公園・野島断層保存館を見学したほか、被災者による講話として弘瀬泰敏先生から震災の体験談を聞いていった。こうして震災のすさまじさを体験することによって、生徒の心に残る修学旅行になったという。

【2004年12月18日号】

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