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日本の良さ 新潟で学ぶ

 これからの季節、新潟は深い雪に包まれるが、雪国ならではの自然や文化を見ることができる。そんな新潟の体験学習スポットとして、米どころで知られる南魚沼、伝統工芸が今も残る燕市からのレポートを紹介する。

南魚沼・三国街道を行く  宿場町の様子を再現

 174年前の江戸後期、越後塩沢の商人・鈴木牧之が発刊した郷里のガイドブック「北越雪譜」は、豪雪地帯の暮らしぶりを全国に広めるきっかけとなり、いまなお愛読されているロングセラーだ。美味なコシヒカリや塩沢つむぎを生み、手つかずの自然の美しさを残す新潟県旧三国街道沿い。霊峰で名高い八海山、幼少の直江兼続が修業した名刹・雲洞庵での写経と座禅など様々な体験で"こころ穏やかな旅"となった。(旅行ライター/中森康友)

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江戸期の繁栄ぶりを残そうとした
塩沢宿・牧之通り


 鈴木牧之の故郷塩沢町に江戸期の繁栄ぶりを後世に残そうと、住民運動で2年前「塩沢宿・牧之通り」が完成した。長さ約350メートルの白壁、蔵造りの商家の町並みには雪避けの雁木(がんぎ)が続く。

  お店に入ると広い土間に帳場、奥座敷とタイムスリップした風景があり、店先に展示された名産塩沢つむぎを前に観光客が感嘆の声をあげていた。「ひっそりした町をなんとかしたい、それと昔の文化を百年後まで伝えたい一心です」と語るのは、リーダー役の中島真知子さん。

  宿は奥湯沢の一軒宿、秘湯「貝掛温泉」。泉質にホウ酸を含み江戸期から眼の病に効くと評判で多くの温泉客が通った。東京のキャリアウーマンから5代目女将となった長谷川秀美さんは「受験やお仕事でパソコンを使う若い方が疲れ目を癒したいとよく来られます」と話す。

  低温38度の露天の湧き湯で目を洗い、40分間の長湯を楽しみながら満天の星に感動した。夕膳は近くの勝沢川で獲れたイワナ、キノコなど山の幸を堪能した。

食習慣の復活目指し 小中学生ぬか釜体験

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魚沼地方に伝わるぬか釜で新米を炊く

  翌日は、コシヒカリの本場・南魚沼市内で新米を美味しく炊き上げる「ぬか(籾殻)釜」の体験に挑戦。鉄板を2重にした円筒形ストーブの内側に乾燥した杉の葉、外側には籾殻を詰め発火して約40分後、お釜の中の米粒が立ち、甘い香りを漂わせた極上のご飯が出来上がる。

  農家の主婦に呼びかけ始めた阿部春子さん(上田の郷・代表)が「途絶えていた昔の食習慣を復活するため。体験学習の小中学生も興奮しながら最後まで取り組んでいます」とうれしそう。昼食後は田園風景の中、ノルディックウオーキングで汗を流した。子どもたちにとっても楽しい体験となるに違いない。

問合せ=025・283・1188(新潟県観光協会)、025・772・7171(南魚沼市観光協会)

 

 

 

ものづくりの街・燕市  受け継がれる伝統の技術

 東京駅から上越新幹線で約2時間の新潟県燕市は、江戸時代初期に農家の副業・和釘(わくぎ)づくりに始まり、銅器、鉛管(きせる)、ヤスリ、矢立(やたて)など優れた技と創造性に富んだ製品が生まれた。現在も金属洋食器や金属ハウスウエアなどの製造が行われる「ものづくりの街」。匠の技に触れ、産業の歴史を知り、現代産業の英知を見て・触れて・体験することができるだろう。(ライター/國吉圭介)

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技術を受け継ぐ玉川堂の職人たち

  まずは、金属加工の歴史と現代までの製品の変遷が展示されている「燕市産業史料館」を見学。本館では和釘から現代の製品までの展示の他、それらを造るための道具や金属を熱するための設備などが展示されている。

  新館は世界のスプーンや金属洋食器の歴史、工芸館は歴代の燕の鎚起(ついき)銅器の名品を展示。また、新館ではミニスプーンの製作も体験できる。

  続いて「鎚起銅器工房」の一つ玉川堂を訪れた。一枚の平らな銅板を職人が金づちでたたき、銅版を起こして丸め、やがてコップ、急須、やかん等の製品となる。この工程を見て初めて、産業を学習したと言えるだろう。

  工房では経験年数の違う職人がバランスよく働き、技術が脈々と若い世代に受け継がれているようだ。一方で、中小企業や個人経営が多く職人の高齢化が進んでいるため金属研磨を受け継ぐ後継者を育てようと、「磨き屋一番館」では職人希望者を募集し、"にいがた県央マイスター"と呼ばれる一流の職人が3年間技術を教え込む。

ステンレスと洋銀 異なる食感を体験

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最高の技で作られた一味違う金属洋食

  また、現代生活に欠かせない金属洋食器の製造工程を「Lucky Wood」の商標で製品を製造している小林工業(株)で見せてもらった。

  その昔、ヨーロッパの上流階級では銀の食器が用いられており、日本では1947年以降この地で一般向けに大量に作られた。今まで気にも留めていなかったが、ステンレスと洋銀では食べ物の味や口に入れたときの感触が違う。

  実際にアイスクリームを2つのスプーンで口に入れると、材質でその感触が違うのを実感することが出来た。このような体験を通じて、子どもたちはカトラリーを大切に使おうという思いが芽生えるだろう。

  最後に、金属加工製品を販売する「燕三条地場産センター」へ。6800円の爪切りには驚いたが、爪を切る際にパチンと音がせず滑らかに切れる様に、さらに驚かされた。切れが悪くなると研ぎ直してくれるので、メンテナンスも含めると、この価格にも納得。

  ものづくりの技術や職人の思い、日本の伝統を学ぶ教育旅行として、特に中高生にふさわしいエリアだろう。

  問合せ=0256・92・2111(燕市商工観光部観光振興室)

【2011年12月19日号】