全国修学旅行研究大会―全修協

安全を確保して実りある学習に

 (公財)全国修学旅行研究協会(以下、全修協)は、「感性を育む修学旅行」を大会主題に7月30日、第29回「全国修学旅行研究大会」を都内で開催。今年度の研究主題は「学びの集大成を図る修学旅行」。パネル・プロポジションでは、全修協前理事長の中西朗氏をコーディネーターに、「修学旅行の安全確保」について語られた。

修学旅行先での災害を想定  教員研修などで対応周知を

修旅中に震災発生 自由散策中の対応

教育旅行

修学旅行の安全について話し合われた

 パネリストの一人、沖縄県立糸満高等学校の垣花誠教頭は、前任の首里高校に在職中、東日本大震災が起きた昨年3月11日に、修学旅行で東京にいた。323名の生徒はグループ別の自由散策中で分散しており、引率した11名の教員は懸命に生徒の安否確認を行った。

  全員の安否確認が取れたのは、発生から2時間後。携帯電話は繋がりにくく、連絡は全て学校を経由して取ることにし、なるべく同じ場所に集まってもらい、翌日午後には全員で沖縄へ。保護者には、HPを通じて随時状況を知らせていった。

  沖縄に戻った後は「沖縄に残っていた生徒も含めて、みんなが頑張ったから無事に帰ってこられたのだと気持ちを一つにして、震災に対する生徒間の温度差を払拭しました」という。

  文部科学省 安全教育調査官の佐藤浩樹氏は、学校安全の基本的な考えを説明。文科省は今年3月に「学校防災マニュアル(地震・津波対応)作成の手引き」を全学校に配布し、防災マニュアルの作成を促している。

  「災害が起こってから防災マニュアルを見ている余裕は無いので、内容を頭の中に叩き込む必要があります。地震発生時の児童生徒の安全確保や、津波など2次災害からの避難方法まではしっかりと覚えてください。また、修学旅行においても事前に教員研修などで、災害時の対応を周知することが大切です」

施設側はマニュアルをこえた対応が重要

  また、(株)オリエンタルランドの松本浩一氏は、東日本大震災時発生時に、7万人のゲストがいた東京ディズニーリゾートの取り組みを紹介。

  「マニュアルに示されているのは最低限求められるもので、マニュアルをこえた行動を有事に起こせるかどうかが問題です。今回の震災では、ゲストの声かけや避難誘導など速やかな初動対応が取られました」

  同社では、来園時に学校団体に対して「学校登録」を行うことを勧めており、何名で来園しているか把握することで有事などにおいてスムーズな連絡が可能となる。

  続いて行われた講演では、元・文化庁長官で玉川大学教育博物館館長の玉井日出夫氏が「文化を大切にする社会の創造」をテーマに語った。玉井氏は、「これからの日本には、日本文化を世界に発信する創造的な人材の育成が求められています」と述べる。

  児童生徒の感性を育む新たな修学旅行が、新たな人材の育成に寄与する可能性もあるだろう。

【2012年9月17日号】

<<教育旅行・体験学習一覧へ戻る