多様な修学旅行に 「九州7県合同」修学旅行説明会―東京・名古屋・大阪で開催

 交通網の発達で、隣県と組み合わせた修学旅行が人気の九州。8月には、東京・名古屋・大阪で「平成24年度"九州7県合同"修学旅行説明会、相談会」が開催され(主催/九州観光推進機構、九州7県観光課・各県観光連盟)、20日の東京会場では、事例発表や学習素材が紹介された。また、会場に設置されたブースでは、九州観光推進機構、九州7県のブースで、相談会が行われ、担当者は学校関係者からの修学旅行に関する相談にあたった。

教育旅行 「九州は一つ」という理念のもと、平成17年に九州観光推進機構が発足して8年。昨年3月の九州新幹線全線開通を機に、九州の観光は大きく前進している。

  そんな中開催された今回の修学旅行説明会。主催者を代表して九州観光推進機構の高橋誠事業本部長は、「昨年度、九州の修学旅行は12%増となりました。これまで進めてきた観光プロモーションや緊急時の迅速な対応などが、成果となって表れたのではないでしょうか。九州は平和学習、環境教育、農業・漁業の体験学習など素材の宝庫。生徒に感動してもらえる修学旅行のお手伝いができたらと思います」とあいさつした。

  続いて、来賓の(財)日本修学旅行協会・河上一雄理事長と、(公財)全国修学旅行研究協会・岩P正司理事長があいさつ。

教育旅行

九州観光推進機構
高橋誠事業本部長

  河上氏は新幹線の開通による便利さ、また、昨今の日本を取り巻く東アジアの厳しい情勢にも触れ「今年は日本と韓国の間で修学旅行が始まって40周年の記念すべき年。九州には大きな気持ちで海外の修学旅行誘致にも臨んでいただきたい」と展望を述べた。

  岩P氏は、修学旅行の事前学習の確保の困難さ、また、多忙化で教員同士の意見交換が減少していることにも触れ、「修学旅行がマンネリ化することなく、生徒に大きな喜びを感じさせる修学旅行であり続けることを願います」と述べた。

  また、九州観光推進機構 国内誘致推進部の原田弘司部長は「九州修学旅行素材集」と「九州教育旅行ネット」を紹介。

  素材集には、7県から集めた131点の素材を収録。体験学習施設の概要や交通アクセス、連絡先などが記載されている。

  今年1月には「九州教育旅行ネット」(http://kyoiku.welcomekyushu.jp/)が開設され、「体験」「エコ・環境」「民泊」「産業」「自然」「歴史・文化」「平和」の7つのカテゴリーで検索できるほか、九州教育旅行のモデルコースも紹介。

 

7県の修旅 最新情報

教育旅行

各県のブースで相談会

  九州7県の担当者からは修学旅行に関連した各県の最新情報が紹介された。

  アクセスの良さが魅力の福岡県。福岡市からは県内各所に1時間から1時間半で着く。「大刀洗平和記念館」では長崎とは違った角度での平和学習、「九州国立博物館」ではアジアの交流を重点にした学習ができる。

  佐賀県では有明海の干潟体験、ミニ・ガタリンピックが人気。武雄市にある佐賀県立宇宙科学館「ゆめぎんが」での事前学習は、環境等の学習効果を狙うことができる。

  長崎県は、平和学習の素材「長崎アーカイブ」に、新たにiPhone / iPadアプリが登場し、実際に現場でシンクロした画面が見られる。また、Twitterを利用した非常時の連絡網を整備した。

  熊本県では昨年3月に熊本城の近隣地に「桜の馬場 城彩苑」がオープン。歴史・文化を体感する「湧々座」と食文化を楽しむ「桜の小路」で構成されており、おすすめ。

  大分県では県在住の留学生と平和について考え、現代社会の平和についてまとめるプログラムや、福祉施設「太陽の家」で行う福祉活動の体験を通じて福祉と地域社会の連携を学習できる。

  宮崎県は宮崎大学で太陽光発電に関する学習と併せて、大学について知る絶好の機会を提供。都井岬で野生の馬、幸島で猿に出会え、豊かな自然を体験できる。

  鹿児島県の垂水市では、養殖魚への餌やり、カンパチを捌いて試食する体験ができる。また、日本最初の国立公園・霧島、世界自然遺産の屋久島、活火山の桜島など自然と人の共存について学べる。

 

【中学の事例】発表者 東京都板橋区立高島第一中学校・岡村克也校長

9時には九州の地を踏み 有効な3日間の修旅に

教育旅行

板橋区立高島第一中学校
岡村克也校長

 東京都板橋区では、今年度2校が航空機を利用した修学旅行を実施している。

  東京都板橋区立高島第一中学校の岡村克也校長は、今年5月30日から6月1日の2泊3日の日程で3年生が実施した佐賀・福岡・長崎の修学旅行について発表した。同校の航空機利用は今年度が初の試みだ。

中1時にアンケート 親子共に九州が人気

  現3年生が1年生の時点で候補地をあげてアンケートをとったところ、生徒からは「九州は行ったことがないので行ってみたい」「歴史だけでなく平和や災害など幅広く学べる」など、保護者からは「戦争の恐ろしさを感じてほしい」「飛行機に乗る良い機会」など、九州の人気が最も高く実施が決定した。

  修学旅行1日目は、羽田空港7時20分発の有明佐賀空港行きに搭乗するため、学校集合は5時15分。一部の教員は、直接羽田空港で合流することとした。

  9時10分に有明佐賀空港に到着し、まずは吉野ヶ里遺跡へ。その後、福岡県の太宰府天満宮で高校受験の合格を祈願し、再び佐賀県に戻って有田焼の絵付けを体験し、嬉野温泉に宿泊した。

  2日目は長崎県島原市の雲仙岳災害記念館「がまだすドーム」での防災学習から始まった。その後は、長崎市内の平和公園で千羽鶴と平和宣言を献納し周辺を見学。長崎市内の宿泊先では平和講演会を行い、14歳で原爆の被害に遭った深堀譲治さんから当時の様子を聞いた。

  最終日は長崎市内で班別にグラバー園、オランダ坂、大浦天主堂などを見学しグループで昼食後、15時05分に長崎空港を出発。17時前には到着し、空港内で解散式を行い各自帰路へ。

予算内で実施の鍵は 有明佐賀空港の補助金

  「バスでの移動距離が長いことや、九州に行ったことがある教員が少ないなどの不安はありましたが、1日目の朝9時に九州に着いたおかげで、時間を有効に使えるなど、多くの利点がありました」

  費用面においても、有明佐賀空港修学旅行推進事業補助金を活用し、往路に有明佐賀空港を利用したことで板橋区の上限である6万1000円以内で実施することができた。

  生徒からは「実際に九州を訪れてみると歴史に残るものが多く、とても楽しかったです。九州の人は優しく、居心地の良いところです」などの感想が聞かれ、実りある修学旅行となった。

 

【高校の事例】発表者 東京都立上水高等学校・伊藤京子主幹教諭

進路探索研修旅行で7年連続の国際交流

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上水高校
伊藤京子主幹教諭

 東京都立上水高校の伊藤京子主幹教諭は、大分県別府市にある立命館アジア太平洋大学(APU)の留学生との交流活動を中心とした、2年生の進路探索研修旅行(修学旅行)について発表。

  同校は創立9年目の新しい学校で、教科に「表現」を取り入れるなどの特徴がある。国際理解教育に力を入れ、その一環として、大分県での進路探索研修旅行を7年間継続。

  1年次には国内でアメリカの学生と交流する「アメリカンサマーキャンプ」が行われ、それを「進路探索研修旅行」へとつなげていく。

APUの留学生から学ぶ 高く明確な目的意識

  「APUの留学生は、明確な目的意識を持って日本に学びに来ています。受験を間近に控えた高2の段階で、高い意欲で学んでいる留学生から話を聞き、自分の進路について考えてもらうこともねらいの一つです」

  平成23年度は今年1月17日から20日までの3泊4日で実施。1日目は羽田空港から福岡空港へ飛び、太宰府天満宮と九州国立博物館を見学して、福岡市内に宿泊。夕食後には福岡タワーからの夜景や、市内散策も楽しんだ。

  2日目と3日目は大分県別府市のホテルに宿泊し、APUの学生をホテルに招く形で広間での研修だ。最初にAPUの学生が自己紹介を兼ねて、日本に学びに来た目的や日本の良いところを英語と日本語を交えながら説明し、上水高校の生徒は自分の夢を英語で語るなどして、コミュニケーションを図っていく。

  「生徒にとって楽しみなのがグローバル・タレントショーです。ダンスの発表や弾き語りなどを行い、APUの学生もアフリカの踊りなどを披露してくれます。こうした屋内の活動だけでなく、APUリーダーと一緒に別府の地獄巡りなども行います」

  最終日は、大分県の湯布院と福岡市の天神から選択する班別行動の時間があり、お楽しみと学習の時間が明確になっている。

98%が「充実」と満足 異文化に触れて学ぶ旅

  実施後のアンケートで「進路研修旅行は充実していたか」聞いたところ、「そう思う」(69・4%)、「ややそう思う」(28・9%)で、ほとんどの生徒が満足する結果となった。良かったと思うことでは「様々な国の文化に触れ、学ぶことができた」が圧倒的に多く、4日間を通して楽しかったことでも「APUリーダーと交流ができたこと」を多くの生徒があげている。

【2012年9月17日号】

 

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