【タイの教育旅行】国をあげた外国語教育交流 学校間交流にも期待

 昨今の教育旅行は体験活動を重視したものが多く、海外では特に、「語学教育」や「国際理解教育」を組み込む学校が多いようだ。様々な国際情勢のなか、今後注目されると考えられるのが比較的治安も安定しているタイ王国だ。歴史・文化、生活様式・自然環境などの学習素材が豊富で、平和学習やボランティア体験などの教育旅行素材も用意されている。今後学校間交流が期待される日本語教育を行う4校を中心に取材した。タイの歴史や文化を体験できる観光スポットとあわせて紹介する。(ライター/國吉圭介)

大学進学は約100% 5か国語の選択―サーティット・パトゥムワン中高等学校

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バンコク市内にある校舎

 タイの教育制度は、日本と同じ小学校6年、中学校3年、高校3年。取材した4校はいずれも、国際化を目指し早くから外国語の習得に力を入れている。まずは、バンコク市内のスィーナカリンウィロート大学付属学校サーティット・パトゥムワン中高等学校とヨーティンブーラナ校を訪問。

 サーティット・パトゥムワン中高等学校は、国立大学の付属校で1954年の創立。

  大学進学率は毎年ほぼ100%。外国語教育は、英語の他に仏語、独語、中国語、日本語の選択科目がある。

  日本語コースは1994年から始まり、現在は中学で週2時間、高校で週6時間ほど授業が組まれている。時期や内容などを相談した上で、日本の学校との交流も望んでいる。

語学と文化を学習 渡日旅行も実施―ヨーティンブーラナ校

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生徒が浴衣姿で視察団を歓迎

 1917年に創立された歴史あるヨーティンブーラナ校は、中高が設置された公立校。高校は文系と理系に分かれ、文系は英語、仏語、中国語、日本語専攻があり、文化も含め学習する。英語には特に力を入れ、全ての授業を英語のみで行うコースも設けている。

  訪問当日は、日本語専攻の生徒が日本の浴衣を着て、日本の魅力を紹介。生徒による学校紹介も日本語で発表し、さらに、札幌雪まつり、富士山、浅草寺など、文化研修旅行として渡日したときの思い出を校長先生が説明してくれた。

  続いて、バンコク市内を離れ、東北地方のピマーイ・ウィッタヤー校と南東部のカセサート大学附属学校マルチリンガルプログラムを訪れた。

 

 

生徒が日本語で歴史公園を案内―ピマーイ・ウィッタヤー校

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生徒のガイドは観光客にも好評

 ピマーイ・ウィッタヤー校は、ラーマ五世が1948年に創設した中高を併設した公立校。生徒数は約3700人が在籍し、知識だけでなく道徳心を大切にし、教育省から地域のリーダー校として指定されている。

  また、「地域社会の一翼を担う」という方針の下、土日には学校に隣接するピマーイ歴史公園の日本語・英語ガイドを生徒が行う。生徒のガイドは注目を浴び大好評で、タイ国内に広げたいと考えている。

 

 

タイ初のプログラム 外国語教育に重点―カセサート大学附属学校 マルチリンガルプログラム

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外国語教育に重点を置いた授業

  2001年に設立されたカセサート大学附属学校は、バンコクの南東の工業団地に建っている小中高の併設校。小1から英語を学び、小4から英語に加えて中国語、日本語を選択、高校ではタイの一般高校と同じレギュラープログラム、全て英語で行われるインターナショナルプログラム、そして、外国語教育に重点を置いたタイで初のマルチリンガルプログラム(日本語教育含む)の3つがある。

  この日は翌日の文化祭に向けて、日本を紹介する準備をしていた。日本の高校・大学との交流実績があり、ホームステイを行う学校もあるそうだ。

  基本の語学は英語だが、工業団地のニーズに応えて中国語、日本語を特別カリキュラムとして行う。卒業後の進路は、ほぼ100%が大学進学で経営者の子どもが多い。

  4校では総じて「話せる言語」を中心にした教育方針のもと、それを実践するように務めており、語学の担当者はネイティブで話せる教員を配置。タイでは、国をあげて語学教育に熱心になっているようだ。

  現地の文化や歴史を学びながら、タイの学校と交流する修学旅行は、日本の子どもたちの異文化理解促進につながることが期待される。

(取材協力:タイ国政府観光庁大阪事務所)
http://www.thailandtravel.or.jp/


 

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 タイの観光スポット

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 バンコクの「アジアティーク・ザ・リバーフロント」(右上)は、観光客向けに雑貨やお土産が売られている人気のマーケット。「ワット・アルン」(左上)は三島由紀夫の小説「暁の寺」に描かれた寺院として知られている。ナコーン・パトムの「サンプラン リバーサイド」(旧ローズガーデン リバーサイド)は、ターチン川畔の広大なレジャーランドで、文化体験施設(右下)では、花飾りやタイシルクなどの製作が体験できる。また、園内の「エレファント・ビレッジ」(左下)では、象の曲芸や象乗りも楽しめる。

【2013年2月18日号】

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