平和学習のターニングポイント 「沖縄修学旅行フェア2014」を現地で開催

沖縄県と(一財)沖縄観光コンベンションビューローは、8月5日に「沖縄修学旅行フェア2014」を県内で開催。学校関係者、旅行会社など沖縄県外から約60名が参加し、夏休み中ということもあり教員の参加も見られた。前日の4日にはエクスカーションが行われ、戦中戦後を通して「平和学習」を学ぶコースと、赤土流出の観点から考える「自然環境学習」の2コースで学習素材の確認や新規学習素材が紹介された。

次世代の平和学習は学生と”共に考える”

沖縄修学旅行フェア
現地での開催に教員、旅行会社などから参加
沖縄修学旅行フェア
次代の平和学習を考えるセミナー

5日に行われた沖縄修学旅行フェアでは、各市町村の観光協会や観光・体験施設、宿泊施設など約40の出展が集まり、にぎわいを見せた。

出展の他に、平和学習及び自然環境学習に関するセミナーを開催。

平和学習のセミナーでは、戦後69年を経て当時の様子を語る人が少なくなっている中、次世代へ当時を伝える手法が紹介された。

元・ひめゆり学徒隊の体験談は今年度で終了

沖縄での地上戦では、10万人近い住民が亡くなり、多くの子供達も巻き込まれた。その中でもよく知られているのが「ひめゆり学徒隊」だ。現在は、学徒隊に所属していた人達が体験者として、ひめゆり平和祈念資料館内で、当時の様子を話してくれているが、体験者の高齢化に伴い、今年度をもって体験者による説明は終了する。

同館の学芸課説明員の仲田晃子氏は「体験者ではない人が伝えられるのかと質問を受けることもある。もちろん体験者と同じようにとはいかないが、体験者の思いを受け継いで伝えていきたい。そして学生のみなさんと一緒に考えていきたい」と今後について語った。

また、平和学習の要望で多いのがガマ(壕)と呼ばれる洞窟の見学。戦時中は住民が避難したり、軍の病院として使われた。多くの命を救ったガマもあれば、命を落とすことになったガマもある。修学旅行ではそこを訪れ、平和について考える学校が多い。

読谷村で地域ガイドを行っている「よみたんガイド風の会」に所属する比嘉涼子氏も、ガマで平和学習を行う一人。もちろん戦争の体験者ではない。比嘉氏は多くの人が集団自決で亡くなった「チビチリガマ」で平和学習を行っている。

一時ガマが荒らされ平和学習もシャットアウトした時期があったが、学習という観点で許されたという歴史もある。

過去・現在の延長線にある沖縄を考える

「過去、現在の延長線上にある沖縄を見てほしい。平和学習は事後学習が大切で、帰ってからも沖縄に目を向けてほしい。戦争の生存者が少なくなってきている中、我々はその話を受け継いできた最後の世代。今、平和学習はターニングポイントにある」と話す。

赤土から学ぶ 自然との共生 新たな学習素材

沖縄修学旅行フェア
「沈砂池」(中央)に水を溜め、海(左奥)へ流すことで赤土の流出を防ぐ

4日のエクスカーションの自然環境学習コースでは、沖縄国際大学経済学部地域環境政策学科の名城敏教授の案内を受け、那覇空港から北上し、赤土流出の防止状況を屋嘉、宜野座、名護などを視察。

東洋のガラパゴスと呼ばれる沖縄県。エクアドルのガラパゴスは陸地と一度もつながったことがないが、沖縄は台湾を通してつながっていたという過去がある。ただし、九州にはトカラ海峡があり分断され、以北の生物は存在しなかった。それが、修学旅行で訪れた際に誰もが驚く自然環境につながっているのだ。

沖縄の代表的な土壌は北部に見られる国頭マージ、南部に見られる島尻マージとジャーガル、河口に見られる沖積土壌の4つ。今回の視察は北部に多い酸性の土壌「国頭マージ」が主となる。

沖縄でよく見られるパイナップルは酸性土壌を好むので、南部ではほとんど作られておらず、南部はジャーガル土壌を中心にした野菜類が育てられている。

国頭マージはいわゆる赤土だ。海沿いの畑では降雨によりこの赤土が海に流出し、サンゴに影響を与えてしまう。平成6年には「沖縄県赤土等流出防止条例」が公布された。流れる水の速度を遅くする流出防止の階段や、一旦赤土を貯めてきれいな水だけを流す「沈砂池」などで対策。

一方で、公布以前の畑には適用されないということもあり、流出が防ぎきれていない場所も多い。「赤土が悪いことではない。陸地では農業に重要な役割を果たす。海に流さない工夫をすることが大事」と名城教授は話す。

自然環境学習は、自分事と置き換えて考えるきっかけとして、また、グスクと呼ばれる沖縄の城は地層などを考慮して建てられていることから、グスクと結び付けた学びも今後考えられる。

【2014年9月15日号】

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