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第3回ITセミナー開催報告
 

教科「情報」大学入試を終えて

 

 

 


 教育家庭新聞社では第3回IT活用セミナーを6月24日に開催。

第1部「IT活用で学力向上」、第2部「教科『情報』大学入試を終えて」の2部構成で、第1部では大阪教育大学の田中博之助教授が国内外の事例を紹介。

第2部では、東京農工大、愛知教育大が平成18年度の入試結果を報告した。

 平成18年度の大学入試で、普通教科「情報」を大学入試に加えた大学の中から、東京農工大学と愛知教育大学に「教科『情報』大学入試を終えて―入試結果と今後―」をテーマに報告された。

 東京農工大学は工学部情報コミュニケーション工学科の前期日程個別学力検査で「理科」と「情報」から1科目選択の形で出題。愛知教育大学は情報教育課程の後期日程A選択個別学力検査で、「情報」と「総合問題」を必修の形で出題した。

 東京農工大学で情報の選択受験者は少なかったが、愛知教育大学ではA選択を105名が受験した。

◇ ◇ ◇

情報科学の専門人材を
  
東京農工大学 辰巳丈夫助教授

  東京農工大学総合情報メディアセンターの辰己丈夫助教授は、同大学の工学部情報工学科の入試問題を概説しながら、情報科学・情報工学の専門家を目指す学生のための入試と、そうではない学生のための入試は内容が異なり、「授業で勉強しただけで解ける問題は、専門家を目指さない学生向けの入試である」と強調した。東京農工大が求めているのは、情報科学・情報工学に興味を持ち、4年間積極的に学習を継続できる学生であることを説明した。

 そのようなポリシーに合わせ、東京農工大学工学部情報工学科の「情報」の入試問題は、コンピュータを用いた問題解決のための基礎能力を測る観点で出題されていると述べた。つまり、アルゴリズムや問題解決の手順を理解したり述べる能力を測る、問題を論理的に把握したり数式によってモデル化する能力を測る、技術やそれを求める社会の動向に対して継続的に関心を払い、情報化社会に参画する能力を測る、という視点が重視されていると述べている。

 「情報」を入試に出題する意図については「情報科学・情報工学に適性を持つ学生を選抜する」「情報科学・情報工学はどんな学問であるかを入試を通じて社会に情報発信する」「『情報』の良問を入試に出題することで、高校生に「情報」の学習目標の一つの姿を与えること」などであると辰己氏は分析した。

 また、「『情報』の学力はコンピュータの操作能力ではない。思い切って、コンピュータを用いない『手順的な自動処理』を考えさせるのも有益だ」と振り返る。

 その後、平成18年度の各大学の「情報」入試全体について述べ、今後の希望として、「『情報』と名前がつくすべての学科、学部、大学は『情報』を入試科目とすること」と述べた。

 最後に辰己氏は、高校教諭に対して、「生徒が『専門家になり得る/なりたいか、そうでないか』を教師と生徒が相談・判断して、適切な進路指導をお願いしたい」と結んだ。

 平成19年度の大学入試では、新たに武蔵工業大学知識工学部、神奈川大学理学部が「情報」を入試に加えることが、現時点で判明している。

問題解決力・論理力を
  愛知教育大学 竹田尚彦教授

 「実施の決定にも作問作業にも困難があったが、情報の試験を実施して良かった」と愛知教育大学情報教育講座の竹田尚彦教授。

 愛知教育大学教育学部情報教育課程では、平成18年度の大学入試の後期日程A選択(主に情報科の免許取得を志す学生向け)で、「情報」と「総合問題」を出題し受験生の学力を検査した。

配点は「情報」が200点、「総合問題」が100点で結果、A選択を105名が受験し16名が合格した。(B選択は数学の免許取得を目指す学生向け)。

 問題内容は「総合問題」の中にも情報に関わる内容を盛り込み、論理的思考力、アルゴリズム、文章力を計った。

 同大の「情報」の出題範囲は、情報A、情報B、情報Cの各科目に共通する内容だ。第1問は基礎的な理論、第2問は情報に関する基礎的な語句や知識、第3問は石田晴久氏「インターネット活用術」からの引用文を読ませ、セキュリティ等に関する知識と文章力を試した。

 問題4と問題5は、どちらか1問を選択する方式でほぼ半数ずつ選択された。

 試験を終えて受験生の全体的な印象について、
 1、問題文をよく読んでいない
 2、TCP/IPやURLといった基本的な用語を正確に把握していない
 3、まともな日本語が書けない
といった傾向が見られると竹田尚彦氏は振り返る。

 竹田氏は、高校の普通教科「情報」に望むことについて、1)「情報」の授業は単なる実技・実習の時間ではなく、「情報」の授業の目的を明確に認識し、生徒に問題解決力・論理的思考力を育成する、2)重要なキーワードを正確に理解させる、3)情報の基礎理論もある程度扱う、4)日本語文章の読解力も向上させる、と4点を指摘した。

 今後の方向性として、愛知教育大は来年も情報を試験科目に加えるが、高校で必修履修されている教科「情報」は他の大学でも試験科目に加えられるべき、と強調した。

 愛知教育大の情報教育課程は現在、1年次で情報教育の基礎的を学び、2年次から情報教育履修モデル、メディアコミュニケーション履修モデル、情報数学履修モデル、に分かれる。必要科目を習得すると情報教育、メディアコミュニケーションの両履修モデルでは高校情報、情報数学履修モデルでは中学校数学、高校数学の1種教員免許を取得できる。

【2006年7月8日号】

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 ●平成18年度大学入試問題抜粋<上>

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