『ゆとり教育と学力を考える」

第1回 「心の成長と教科の学習の関係」

by 学習塾「学舎」教師 吉田 直弘

【著者プロフィール】 吉田 直弘
  早稲田大学大学院理工学研究科修了。三菱化学開発研究所勤務。退職して東京都世田谷区に学習塾「学舎」を設立。小学生から大学受験生まで理数系教科を指導。

 
 毎日の出来事、例えば学校での部活動、教科の勉強、友人との人間関係、家庭での会話、その他ひとつひとつの出来事が経験となり、その経験で自分自身が何を感じ、どう考えたかを積み重ねていくことで心は成長していきます。そして、それはあらかじめ用意されたプログラムどおりに進んでいくものではありません。ひとりひとりその変化の内容も、スピードも全て異なります。

  毎日の一つひとつの出来事は、子ども一人ひとりの心の成長のツールにすぎません。そのツールをどう成長につなげていくかは、子ども本人の心の力とそれを支えるまわりの大人(スタッフ)たちにかかっているのです。
  以前はこれらのツールを使って、さまざまな場面で競争が盛んに行われましたがそのことによる弊害が唱えられて、原因を明確に分析することなく、性急に競争が削除される傾向にあります。
  原因は競争にあるのではなく、ツールの使い方にあったのではないでしょうか。ツールを子どもの成長に役立てていくにはスタッフであるおとなたちのアドバイスがとても重要なことだと思うのです。

  学校での学習内容の削減、週5日制、少子化による部活動の縮小など、学校でのツールが弱体化することにどう対応するのか。そのツールを他の方法で補うのか、全く別のツールを見出すのか、どのように対応するにしろ、ひとりひとりの子どもの状況によって、常に考え続けなければならない責務が、そのこどものスタッフにはあるのだと思います。



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