子どもの虐待に歯止めが?
 児童虐待防止法11月20日に施行

 深刻化する児童虐待を解決しようと、先月20日保護者による子どもへの虐待を防ぐための「児童虐待防止法」が施行された。これまでの児童福祉法では、例えば家の中から子どもの悲鳴が聞こえて、虐待が行われていることが疑われても調査に踏み切れなかったのが実情。しかし同法では児童相談所による立入調査権が強化され、虐待の可能性があった場合に警察官が同行して家の中に入り調査できる規定が盛り込まれている。

 また児童相談所で一時保護していても、保護者が子どもを強引に引き取り、再び虐待を加える例も数多く報告されていたこともあって、保護している子どもとの面会を児童相談所の所長が制限して、民法上の「親権の一時停止」と同様の行為を行使する規定も盛り込み、児童虐待を発見しやすい立場にある学校の教職員による早期発見も求めている。
 児童相談所が受け付けた虐待の相談件数は毎年うなぎ登りの状況で、昨年度は初めて1万件を突破。この10年間で10倍以上という深刻な事態で子どもが死にいたる痛ましいケースも報告されていた。このため超党派の国会議員が前の通常国会に提案し、今年5月に衆参両院で全会一致で可決されていた。

 なお虐待の定義については18歳未満の児童に対し1身体に外傷が生じ、または生じる恐れのある暴行を加える2わいせつな行為をしたり、させたりする3心身の正常な発達を妨げるような著しい減食または長期の放置、その他の保護者としての監護を著しく怠る4著しい心理的外傷を与える言動を行う−−としている。

 今回施行された「児童虐待防止法」のポイントは次の通り。
 ▽何人も児童に対して虐待をしてはならない(虐待の禁止)▽学校の教職員や医師、弁護士らは児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、早期発見に努めなければならない。職務を通じて虐待を知り、児童相談所などに通告しても秘密漏示罪、守秘業務違反などの刑事責任を問われない(早期発見)▽都道府県知事は、家の中で虐待が行われている恐れがあるときは、児童相談所職員らを立ち入り調査させることができる。必要があれば、警察官の援助を求めることができる(立ち入り調査)▽一時保護された子どもに虐待した保護者は、児童福祉司によるカウンセリングを受けなければならない(指導を受ける業務)▽児童相談所長は、一時保護している子どもに保護者が面会したり、通信したりすることを制限することができる(面会または通信の制限)

(2000年12月9日号より)