教育家庭新聞・健康号
TOP健康ニュース   バックナンバー

食材特集 ニジマスを学校給食に

子ども家庭へ〜魚料理の啓発に−荒川区立 ひぐらし小学校

 昨今、和食を中心とした日本人本来の食生活に注目が集まっている。その際活躍するのは、魚料理だろう。今、川魚(主に養殖)の中でも淡泊で臭みがなくヘルシーな「ニジマス」が注目を浴びている。全国養鱒振興協会では、そのおいしさを子どもたちにも知ってもらいたいと、東京都荒川区立ひぐらし小学校(校長・春原勝次.)の学校給食に、新鮮な「ニジマス」を提供した。子どもたちの中には、「ニジマス」を知らない子も多く、さまざまな表情が見られた。その様子を紹介する。

 9月15日、この日の給食は、焼きたてココアパン、牛乳、フレンチポテトと野菜のみそドレサラダ、フレッシュプルーン、そしてニジマスの塩焼き。このニジマスは、富士山の湧水が流れる場所から届いた新鮮なニジマス。給食時間になると、この日ランチルームを使用する60人あまりの3年生の笑顔が飛び込む。

 「ひぐらしの給食でニジマスは初めて登場します」と学校栄養職員の宮島先生が話を始めると、子どもたちは一斉に前を向く。釣りに行ったことがある子も何人かいるようで、明日箱根にニジマスを釣りに行くよという4年生もいたという。レシピを考えるにあたり、さまざまな調理方法を考えたそうだが、担任の先生方と相談し、シンプルに塩焼きで食べるのが一番と決まった。

 「ニジマスの皮見た?」と宮島先生が子どもたちに聞くと、「虹色!おいしい!」と歓声があがる。「皮は虹色で、身はサーモンピンク。みんなは英語を勉強しているよね。じゃあサーモンは日本語で?」と虹色とピンクで作った掲示物をホワイトボードに貼ると、「サケ!」とあちらこちらから声があがる。「そう、サケとニジマスは近い間柄なんですよ。ほかには、ヤマメやイワナも仲間ですよ」と話すと、子どもたちは驚きの表情を見せる。

おいしい水の中で健康なニジマスに

 給食前、「ニジマスは川魚なので、養殖場では自然の状態にするため水車で川の流れを作り、水の中に酸素を送っています。子どもたちには、そんな豊かな自然の中でおいしく健康なニジマスが育てられることを伝えたいです」と話していた宮島先生は、どんなにおいしい水が使われているか映像を見せた。

 それを見ながら「水の中に何が見える?」と水草を示し、「この水草を育てるためには太陽の光が必要です。水が濁っていたら?」「太陽の光が届かない」と子どもたちとのやり取りが続く。そして、「この水は、山の雪解け水が土の中にしみこみ、小石や砂でどんどんきれいになって、湧水となって流れ出てきたんだよ」と、ニジマスはきれいな水があることで育つことを教えていく。

 さらに宮島先生は、この日同協会から給食以外に教材として提供された約40センチのニジマスと、約25センチのニジマスを手にとって見せる。「わぁ!大きい!」と子どもたちは大興奮。それもそのはず、子どもたちが知っているニジマスはキャンプなどで釣る約25センチのものだ。同校の先生方も、約40センチの大きなニジマスを切り身で提供することを聞き、驚いていたそうだ。

人間の健康も食べ物で決まる

 当日は、同協会の会長理事・小堀彰彦氏も子どもたちと給食の時間を過ごした。小堀氏は「水を管理することや薬を使用せずに病気が出ないようにすることなど、育てるためには大変な苦労があります。毎日24時間私たちの仲間がニジマスを育てています。今日食べたニジマスを忘れずにいてくださいね」と育てる側の気持ちを語った。

 子どもたちが給食を完食しそうな頃、宮島先生は「そうだ!みんなに一つこのお話をしましょう」と、なぜニジマスの身がピンク色をしているかを説明し始めた。「実は、エビや小さなカニを食べているからなんです。それに含まれている抗酸化物質アスタキサンチンという色素があるからです。これと同じことが言えるのはフラミンゴ。エビやカニを食べないとフラミンゴは鶴のように白いままなのよ」と話すと、子どもたちも担任の先生も目を丸くしていた。

 この話には「ニジマスがエビやカニを食べてピンク色なように、人間もどういうものを食べるかで健康を左右するということを伝えたい」という宮島先生の強い思いが込められている。

 最後に子どもたちから「ニジマスは1回でどれだけの卵を産むのか」など鋭い質問が多数あがり、その一つひとつに丁寧に小堀氏が回答。子どもたちの探究心に感心の様子を見せた。

子どもの反応調理共に良好
学校栄養職員宮島則子先生
 学校給食に川魚を初めて使用した宮島先生は、「子どもたちの反応、調理の扱い共に大変良好でした。川魚をメニューに加えたことにより、献立の多様化が図られただけでなく、子どもや家庭に魚を食べて健康づくり≠フ啓発ができました。どういった形で提供しようか迷いましたが、塩焼きというシンプルな献立にしたことが逆に良かったのではと思います。今後も川魚を利用したいですね」と、学校給食に川魚を用いることの可能性を語った。



【2006年10月14日号】


新聞購読のご案内