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【食育実践】
楽しく学び「残さいゼロ」

川口市立芝富士小学校

江添信城校長
江添信城校長

 平成22年度の学校給食文部科学大臣表彰の中から、埼玉県川口市立芝富士小学校(江添信城校長)における、学校給食を活用した食育の状況を取材した。川口市では一部学校を除き統一の献立が採用されており、学校の状況に応じた献立を立てることはまだできていない。また、地場産物を学校給食に取り入れることも難しい地域でもある。しかし、同校では食に関する全体指導計画の学校教育目標として「心豊かな子 よく学ぶ子 じょうぶな子」を掲げ、「食を知り、食とかかわり、食を楽しむ子」を目指して様々な食習慣を取り入れており、「残さいゼロ」を継続している。

 同校は、3年前に隣接する芝園小学校と統廃合した。それと同時に、芝園小学校から江添信城校長(当時は教頭)と学校栄養職員の内田正美先生が赴任。これが同校の変化の1つだった。

内田正美先生
内田正美先生

  統廃合までは、同校には栄養士がいなかったが、現在は、内田先生が毎日給食室前で児童が給食を受け取る様子を見守り、給食時間に全クラスを回り、声かけを行う。これまでは、給食時間に栄養士が来る習慣がなかったが、芝園小から来た約80人の児童らが内田先生を後押ししてくれた。

  給食指導は、好き嫌いがあっても少しでも食べて欲しいと、赤・黄・緑の栄養素の話から始めた。バランスの良い食事は自分にとって大事なものだとわかってもらうように努めた結果、低学年からその意識が浸透し始めている。
内田先生の思いは各クラス担任にも伝わり、「11人の担任は皆、作ってくれた調理員へ食べ残した食缶を返したくないと感謝の思いを持って、児童へ声かけをしてくれています。学校を異動しても給食指導をきちんと続けたい、と話してくれた先生がいましたが、とても嬉しく思いました」。

  その思いは江添校長も同じだ。「若い教職員が多いので、学校栄養職員・給食主任を中心に、給食指導や配膳指導を統一し、共通理解を図っています」。平成21年度には「生きる力をはぐくむ食に関する指導モデル校等支援事業」を行い、教職員が一丸となり食指導を盛り上げた。

ガーデンランチ
中庭でのガーデンランチは大好評

少しでも食材と関わる体験を

 同校での食育活動は、様々あるが、例えば、中庭にあるテーブルでの「ガーデンランチ」。学年ごとなどに、日差しを浴び心地よい風を感じながらみんなで食べる給食は大人気で、給食以外にもテーブルで絵を描いたり、児童が思い思いに楽しんでいる。

  また、少しでも食材との関わりを持ち「自分たちが食べるもの」、という意識を持って欲しいと、調理前にとうもろこしの皮むき(1年生)、そら豆の皮むき(2年生)、インゲンのすじ取り(3年生)などを体験させている。
さらに、学校ファームでナスやきゅうりを育てたり、ビオトープにあるヨモギでホットケーキを作り、夏にはゴーヤのグリーンカーテンが学校を覆う。そのゴーヤは地域の人にも配布しており、地域住民からは「ごちそうさま」「おいしかったよ」と声がかかり、地域とのつながりも徐々に感じ始めているという。

  近年「お弁当の日」を設ける自治体や学校が増えている。同校でも昨年9月、6年生が弁当箱に給食を詰め、バランス良い食事について考える機会を設けた。さらに、10月には各家庭でお弁当作りに挑戦。「お弁当を通じて保護者とコミュニケーションがとれたと喜んでいました」と内田先生は微笑む。

  この3年間、児童の変化と共に保護者も変化してきた。「夏休みの親子料理教室は40人くらいを予定していたのですが、150人以上の申込みがあり、3日間開催しました」と江添校長も嬉しい悲鳴。内容は給食のカレーレシピの伝授や、ハンバーガー作りなどだ。

学校給食
食材とかかわりもたせる工夫を

学校給食週間は給食室を学ぶ

 これから始まる学校給食週間は、26日に新メニューの「くわいごはん(埼玉県の郷土料理)」、「だご汁(川口市の郷土料理)」が提供される他、1・3・5年生は給食への感謝の作文を書き、2・4・6年生は食に関する自分の目標を立てて掲示する。給食委員会の児童は給食週間の説明のほか、今年は給食室の写真を紹介する。普段入れない給食室だから、児童は興味津々で調理の様子をのぞいているため、給食が作られる過程を見せることで改めて給食について考えて欲しいと願う。

環境教育と結びつけた食育を

 文部科学大臣賞を受賞したことで、一番喜んだのは児童たち。体育館で全校揃って行った「祝賀給食」では牛乳で乾杯した。「楽しいイベントを持ちながら食の意識付けをしていくことが大切ですね」と話す江添校長。自身が発案した「ラッキーにんじん」(星型のにんじんを給食に少しずついれ、当たった児童にシールをプレゼント)は、児童が喜ぶイベントのひとつ。

  内田先生は「給食を通じて子どもたちは食のバランスを理解し始めました。ですが、家庭での朝・夕の2食があってこそ心と体が作られます。子どもたちからも保護者に食のバランスを伝えられるようにし、家庭での2食も充実できるように努めていきたいと思います」と話す。

  また、江添校長は「食は様々な要素と絡んでいますので、家庭や地域とつながっていきたいと思います。そこで、学校経営をトータルで考える上でも、環境教育と結びつけていきたいと思っています」と今後の目標を語る。具体的には調理過程で出た野菜くずを使って堆肥を作ることなどを考えている。ビオトープがある同校ならではの、新たな食育に期待したい。

【2011年1月22日号】

教育家庭新聞