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【特集】学校給食・食育

栄養教諭・学校栄養職員の飛躍に期待

社団法人全国学校栄養士協議会 設立50周年

全学校に“栄養教諭”を 50年の節目で目標新たに

 「一校に一名の栄養士 身分は栄養教諭」を目標に、昭和36年11月10日に全国学校栄養士協議会として設立された現在の社団法人全国学校栄養士協議会(田中信名誉会長、市場祥子会長/以下・全学栄)の設立50周年記念式典・記念祝賀会が11月24日に都内で開催された。これまで全学栄を支援し続けた栄養教諭議員連盟、文部科学省関係者、関係団体、賛助会員、全学栄歴代役員が集まり、学校給食における長年の努力、栄養教諭創設までの長きにわたる歴史、これからの全学栄のあり方を考える盛大な式典・祝賀会となった。

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50年間の関係者が多数お祝いにかけつけた

 第159国会において、全会一致で可決・成立した「学校教育法等の一部を改正する法律」(平成16年5月21日公布)により、平成17年4月1日から施行された栄養教諭制度。

  それにより、初年度は全国4つの道府県で34名の栄養教諭が誕生し、今年度4月1日現在では、3853名と増加している。ここに至るにあたり、全学栄の田中信名誉会長をはじめ、多くの関係団体の尽力があったことは言うまでもなく、式典では、関係者があいさつとともに歴史を語った。

 

学校給食用の非常食開発へ 新たなスタート

 式典冒頭では、主催者を代表して市場祥子会長があいさつ。

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市場祥子会長

  「今年3月11日に東日本で発生しました大震災は、有史以来の大災害になりました。ライフラインが断たれ、栄養教諭や学校栄養職員が必死にがんばっても、子どもたちの食の要である学校給食はなかなか再開できませんでした。特に成長期の子どもたちは、長期に渡る偏った食事のため、心身の体調を崩しました。やがて、被災地をはじめ全国の会員から、栄養のバランスが配慮された学校給食用の非常食があったらという声が寄せられるようになりました。この声を重く受け止め、本協議会では、学校に備蓄して子どもの非常時に備える非常食を開発することにいたしました。大震災という国難を乗り越えるために、次代の人材育成は急務で、私たちの大事な使命であります。大勢の皆様に支えていただき、名誉会長とともに先輩の皆様が築いてこられた50年の歴史を重く受け止めながら、栄養教諭を中核とした51年目の新しい一歩を踏み出す証としてこのことをお伝えいたします」。

◇  ◇

  続いて、来賓を代表して、中川正春文部科学大臣、町村信孝衆議院議員、森喜朗衆議院議員が祝辞を述べ、これまで全学栄が果たしてきた学校給食の振興への労いと感謝、今後の栄養教諭のさらなる活躍を願った。

栄養教諭必置化と職務の明確化を 栄養教諭の目指す道

 最後に、全学栄の田中信名誉会長が、50年の歩みを語った。

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田中信名誉会長

  昭和39年、当時の文部省の努力により栄養士の人件費を、国庫補助から捻出してもらうことになり、その後昭和49年6月20日の新国庫負担法成立により、学校栄養職員の人件費は、義務教育費国庫負担となった。

  「この制度の実現そのものが、現在の栄養教諭の元を作ったのであります」と田中名誉会長は振り返る。

  その後、昭和59年に国庫負担除外が新聞で発表されることとなったが、文部省など様々な関係者の努力により、この事態は免れた。「これこそ、栄養教諭を作り上げていく元に、大きな力となるのでございます」。

  また、その後栄養教諭制度が創設に向け動き始め、文部省・文部科学省の関係部署の協力のもと進む。「当時の文部科学省田中壮一郎スポーツ・青少年局長、大木高仁健康教育課長は大変な努力で国会中を走り回られ寝る暇もないくらいでしたが、そういった努力が実り、平成16年5月14日に、いよいよ衆参一致で実現することになりました」。

  平成17年から配置となり4000人近い数となっているが、配置数は栄養教諭免許状取得者の3分の1程と遅々として配置が進んでいない現状もあり、各都道府県に働きかけている。

  こういった背景を受け田中名誉会長は、「これから栄養教諭が目指す道は何かと言いますと、なんとしてでも栄養教諭を必置として、また、その職務の明確化を図っていかなければなりません。50年を振り返りますと、神に導かれたような方々が献身的に私たちのためにご指導ご尽力を賜ったものであると、ここに厚く御礼を申し上げます」と力強く今後の目標と50年の御礼を述べた。

【50周年の記念事業】学校給食作文コンクール

 50周年の記念事業として「学校給食作文コンクール」を全国の小中学生と保護者に募集し、その表彰式も式典会場で行われ、1次、2次、最終審査を経て、最優秀賞3名、審査員賞1名が選ばれ、壇上で全員が朗読した。

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「学校給食作文コンクール」は3名に最優秀賞、 1名に審査員賞が贈られた

  最優秀賞・小学生の部を受賞したのは、広島県呉市立昭和中央小学校2年の小林未来さん。小林さんは、「きゅう食、楽しみ」とタイトルを付け、朝起きてから給食までの時間を楽しみに過ごしている様子が目に見えるような作文を書き、温かいものを温かいままで食べられる給食を食べることで、心も温まるとまとめた。

  最優秀賞・中学生の部は鹿児島県鹿児島市立桜丘中学校2年の新山益朗さんの「秘密のスパイス」。夏休み中の家族の昼食の会話から、学校給食がいかに豊富なメニューとバランスの良い栄養面を考えて作られた献立かがわかった様子が書かれ、さらに、嫌いな物でも給食になると味も変わって食も進む、秘密のスパイスがプラスされているみたい、そのスパイスは栄養教諭や技師さんのおかげだと感謝の思いが発表された。

  最優秀賞・保護者の部は、岩手県盛岡市立仁王小学校保護者の金田洋子さんの「落ちていたパン」が受賞。自身が小学生の時のある日、教室の床に給食で出されたパンの食べ残しが落ちていた。放課後、担任の先生が食べ物を粗末にした子がいることに対して全員に怒った。金田さんには、今でもその教えが宿っており、家庭における食育担当として、我が子に感謝の気持ちを教えていきたいという母の思いが、作品に込められていた。

  また、審査員賞は「おいしい給食は、平和と安全な証」と題した、福井大学教育地域科学部附属小学校5年の手賀健人さんの作品が受賞。好き嫌いが多く、少食の手賀さんにとって学校給食は毎日がチャレンジ。しかし、先生や友人の励ましで一口ずつ食べ、ある日完食した翌日に牛乳で乾杯した喜びを作文にした。また、東日本大震災の様子をテレビなどで見て学校給食の現状を知ったことで、当然のように食べている給食がとても貴重なもので、おいしい給食は、平和で安全な世の中のおかげだとわかった思いでまとめられている。

  同コンクールは、「学校給食に思うこと」「学校給食の思い出」などを作文にするもので、今年7月から約2か月間募集が行われ、小学生992作、中学生966作、保護者220作が集まった。

【2011年12月19日号】

教育家庭新聞