特集

学校給食衛生管理の現状

本来の機能生かせず

衛生管理に関する報告書


 平成10年度の学校給食における衛生管理の改善に関する調査報告書がとりまとめられ、先月13日に文部省から出された。同報告書を各学校の給食実施校や共同調理場に配布し、研修会を行う際には平成8・9年度に出された報告書と併せて活用し、今後一層の衛生管理の徹底を行うよう各都道府県教育委員会等に促している。

 同報告書は、昨年度より新たな衛生管理推進事業として行われた「衛生管理推進指導者派遣・巡回指導事業」の調査結果である。同調査は、昨年度食中毒が発生した調理場のうち3か所と、平成9年度に総務庁から指摘を受けた調理場6か所を含め計14か所で行われた。調査は食品の納入から調理過程、配缶、そして子どもたちの食事に至るまでその全ての流れを調査し、その都度細かな問題点を指摘、さらに細菌の拭き取り調査も行われた。
 報告書によると、文部省で勧めているドライシステムの調理場において、その意義や使用方法など十分に理解しておらずウエットシステムから脱皮できていない作業等が見られたという。また、衛生管理に配慮した施設設備に関しては、レバー式給水栓を導入したが、取り付け位置が悪く、結局は手指で操作しているという現状もあった。現場の実態に合わせた整備が行われるためにも現場の意見を十分取り入れるようにと指摘している。

 拭き取り検査の結果、調理員の鼻腔等から高い確率で黄色ぶどう菌が検出されたため、マスクをきちんと装着することや、かえって二次汚染を招く恐れのあるため、手指の消毒に洗面器を使用しないようにするといった派遣先に見られた留意点と衛生管理上の要点がまとめられている。
 調査全般を通して、ドライシステムの調理場の運用方法をはじめとしてレバー式水洗、三層シンクなど本来の機能が生かされていない事例が目立つ一方、手洗いの徹底、加熱調理の徹底、過剰な水撒きの廃止、不必要な長いホースの廃止、調理作業中における調理器具の洗浄の廃止などのこれまでの問題点は改善が図られてきている。

小さな心がけでドライを保つ

相模原市清新給食センター


 昭和48年に建てられ、今年で26年になる神奈川県相模原市の清新学校給食センターは、古いウエットシステムであるが、床が乾燥したドライ状態にうまく保っている。昨年11月に行われた文部省の衛生管理巡回指導でも高い評価を受けており、特別に指摘された点はなかったという。

 同センターは市内の6つの小学校3940食分の給食を担当しており、それぞれ3校ずつ2種類の献立を18人の調理員で作っている。施設は天井が高い吹き抜けになっており、風通しがとてもよいという印象。特別な改築はこれまでに行っておらず、非汚染区と汚染区の区別には床の線引きを行い、自動ドアの設置などを行った程度。ほぼ完璧にドライの状態を保てている理由として、二次汚染防止のための細かな調理作業の徹底がある。
 月に2回の全職員による会議と、毎朝の打ち合わせにより、調理員への指導や連絡が徹底して行われる。会議では2週間分の献立の説明や作業工程などについて確認する他、文部省や厚生省などから出された参考資料をもとに、職員全員で話し合いの場がもたれる。「それぞれ疑問や質問、意見を出し合い、無理のないよりよい改善策をその都度検討し、共通の理解を図っています。栄養士だけが理解しているだけではダメですから」と同センター学校栄養職員の加藤恵子さん。

 床をドライに保つために徹底して行っていることは、水洗いした野菜等を移動する際に、ざるの下に水受けとしてたらいや、古いパン箱のふたを置いている。また、釜に流水する際には、これまで蛇口からそのまま水を出していたが、そこから飛び散る飛沫を防ぐため、蛇口にホースを取りつけて釜づたいに水を回しながら給水している。缶詰やレトルト食品を開けるときも、水槽の中で行うことで周りへの水漏れ防止になっている。使用したしゃもじや水滴などが垂れないように専用の缶へその都度入れるなど。
 下処理室から中処理室の境は特に壁などで仕切られてはいないが、その境が多少濡れている程度であった。また、境界には消毒用のマットがしかれており、通る際は必ず長靴の裏を消毒してから移動している。

 「野菜のしずくを受けたふたの水は必ず調理場の溝に流すといった小さな心がけを大切に守っています。現状の施設を新しくすることだけでは解決できない問題はたくさんあります。やはり調理する側の意識の改善が最も重要なのではないでしょうか」と加藤さんは話す。清掃の最後の段階で必要な分量の水撒きは行うが、勢いよく水を撒き散らすということはしていない。
 現状のウエットシステムでも、調理員一人ひとりのちょっとした意識の改善で十分ドライに保つことができるということを証明している。

(99年5月15日号)